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たばこ塩産業 塩事業版  2012.8.25

塩・話・解・題 89 

東海大学海洋学部 元非常勤講師

橋本壽夫

 

ホームページへのアクセス数から分析

関心の高い「塩の話題」とは?

 

 読者はどんな塩の記事に関心を持っているのだろうか?その点から昨年、筆者のホームページで1か月間に関心を持たれていた記事について紹介した。6月末で1年間を経過したのでまとめると、いくつか特徴があった。今月はそれらを紹介し、今後の話題提供に生かしたい。

 

全記事の閲覧回数は約2万回

「融氷雪剤」にもっとも関心

 1年間に閲覧されたホームページの記事を月別に集計し、新聞記事だけの累積回数とその比率の多かった順に表に示した。閲覧回数は昨年の7月初めから今年の6月末までの1年間で約19,400回であり、記事の件数としては380件で、表1にはその58%が掲載されている。アクセスの多い月は78月と12月で、それぞれ2,000回前後だった。夏休み・冬休みと重なっているから、自由研究の課題でも探したのであろうか。

 年間を通して一番多く見られた記事は「塩が融氷雪剤に利用される理由は?!」だった。どうして塩で雪や氷が溶けるのか、不思議に思えるからであろう。時期的には降雪や凍結で災害が起こる冬場に多く見られている。塩の性質を利用する同じ理由で、暑い夏に塩を使ってアイスキャンデーを作り食べてみよう、といった記事にも関心が持たれるかもしれない。

 次に多かったのは「渇きに苦しむときなぜ海水を飲んではいけないのか」であった。喉が渇いて水が飲みたい時に、海水となるとどうして飲んではいけないのか、これも不思議に思えるからであろう。あるいは海で泳いでいるとき、口に入ってくる塩辛い海水を思わず飲んでしまうことがあるが、どうしてそれがいけないのか、といった疑問から見ているのかもしれない。素朴な疑問に関心が集まるようだ。

表1 2011年7月から2012年6月までに高い関心を持って閲覧された記事
記  事  表  題 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 累積回数
塩が融氷雪剤に利用される理由は?! 67 139 49 32 41 105 551 400 100 27 27 36 1574 8.10
渇きに苦しむときなぜ海水を飲んではいけないのか 147 97 106 74 52 56 58 73 59 71 65 68 926 4.76
見直されつつある「味噌汁」の効能 55 61 56 56 86 43 52 76 62 57 62 62 728 3.75
塩の対比効果と抑制効果 90 64 46 75 96 32 52 38 18 40 90 52 693 3.57
腎臓のナトリウム排泄 47 29 22 38 49 55 58 38 22 25 34 18 435 2.24
食塩の薬利効果 26 36 22 27 17 20 27 72 32 35 21 16 351 1.81
塩の浸透圧が果たす役割 40 51 26 31 26 28 25 24 16 27 26 21 341 1.75
特別用途食品について −塩化カリウム添加食塩の問題点− 37 19 24 27 19 32 36 32 22 32 22 34 336 1.73
「塩の部屋」ってなに? 塩の用途開発から生まれた新商品 3 2 1 2 1 1 172 57 30 21 17 307 1.58
塩水の不思議 (1) 特徴を実験で確認 20 53 31 18 32 22 34 22 12 16 19 17 296 1.52
食塩摂取目標量30年ぶりに低減 46 18 16 28 8 7 41 36 27 19 17 22 285 1.47
塩の固結について 27 50 28 32 25 15 21 10 22 16 14 22 282 1.45
様々な形に変化する塩の結晶 17 63 12 12 26 31 46 30 14 4 18 8 281 1.45
身体の中の塩の働き (1) 27 25 24 10 18 11 17 9 27 16 28 21 233 1.20
汗と塩分補給 63 34 24 9 13 5 12 4 9 12 19 27 231 1.19
塩と食中毒菌 27 28 14 24 27 13 12 20 18 8 21 11 223 1.15
「麺の腰を強くする」塩の役割 24 15 8 23 28 16 22 16 14 14 22 3 205 1.05
動物飼育と塩の役割 9 18 25 12 13 14 16 21 23 13 18 10 192 0.99
塩と人 生命維持のメカニズム 15 25 15 18 14 5 6 16 14 13 14 26 181 0.93
耐塩・好塩微生物の性質と応用 −食生活を豊にする微生物たち− 18 7 17 22 17 15 23 22 5 10 13 9 178 0.92
リンゲル液に塩が使われている理由 19 22 10 16 11 5 12 23 8 16 13 14 169 0.87
旨味を引き出す塩の役割 19 13 9 21 7 16 8 17 4 14 17 21 166 0.85
塩水の不思議 (2) 25 25 15 21 9 6 8 16 8 8 17 8 166 0.85
食塩摂取量と胃癌の関係 − 疫学・生物学の見地から 2 1 1 1 25 21 17 13 24 49 154 0.79
焼塩 その特徴と利用法 14 15 26 8 22 9 6 14 9 9 10 9 151 0.78
ナトリウムが悪けりゃカリウムがあるさ? 15 9 12 8 7 8 14 16 11 21 18 10 149 0.77
特有の作用を及ぼす塩とタンパク質生体機能でも重要な関係 12 12 6 10 25 18 11 15 2 7 10 20 148 0.76
味付け以外の塩の役割は?! 18 14 9 17 19 15 6 10 5 2 11 4 130 0.67
身体の中の塩の働き (2) 13 19 16 7 10 14 9 2 8 6 16 9 129 0.66
塩分50%をカットした塩? 17 15 15 17 11 10 9 11 12 4 3 5 129 0.66
食塩嗜好の変化・その2 成人から老人になるにつれて 12 6 9 3 6 8 15 12 20 17 12 120 0.62
ナトリウムとカリウム 働きと血圧に及ぼす影響 10 6 6 9 6 6 3 4 13 16 13 27 119 0.61
スポーツ栄養と塩 14 14 13 6 9 3 13 10 5 3 11 14 115 0.59
食塩嗜好の変化・その1 乳幼児から成人にかけて 16 8 13 13 4 12 14 6 7 8 5 9 115 0.59
自然塩とミネラルについて 17 10 12 8 9 6 4 14 12 9 9 5 115 0.59
身体の中の塩の働き (3) 19 12 6 5 16 20 4 6 5 3 11 7 114 0.59
近頃気になるカリウム入りの塩 15 12 15 9 9 10 6 14 9 3 7 4 113 0.58
欧米で普及するハロセラピー 塩の粒子で治療効果を発揮 2 2 3 4 1 49 17 10 18 7 113 0.58
高血圧の遺伝性 (1) アメリカの黒人が高血圧になりやすい理由 10 6 13 18 11 5 9 7 7 6 13 8 113 0.58
日本は世界一の“塩輸入大国” 14 18 13 13 12 4 7 9 5 4 7 5 111 0.57
介入試験 (2) 正常血圧者の減塩効果 17 21 10 6 8 7 7 6 5 4 5 9 105 0.54
日本人の栄養所要量と国民栄養調査から見た食塩摂取量 15 14 17 13 11 8 12 3 2 2 1 1 99 0.51
食塩嗜好の変化・その3 老人の塩味覚感度と食塩嗜好 17 10 5 5 3 4 8 16 5 4 13 4 94 0.48

 

医学的な内容にも注目集まる

「味噌汁の効能」も好評

 「見直されつつある『味噌汁』の効能」は年間を通して高い関心を持って見られている。なぜ関心が高いのか理由が分らない。塩が悪者にされ始めた当初、真っ先に減塩の対象となった食べ物は味噌汁であった。それを反映して全国味噌工業協同組合連合会のホームページに掲載されている味噌関連統計によると、1人・1年当り平均供給数量は1969年では7.7 kgであったが、10年後の食塩の目標摂取量が設定された1979年には6.0 kgまで減り、2007年には3.8 kgと半減している。この統計値で興味深いのは農家が自給していた生産量の変化で、かつては19万トン近くあった数値が、統計値がなくなっている今では1万トンを切るくらいになっているのではないかと推定される。

食塩の目標摂取量が設定されるまでの10万トン強の低下原因は減塩運動によるものと考えられるが、1990年代からの低下は市場における調味料の多様化によるものと思われる。

 やや医学的に専門的な記事である「腎臓のナトリウム排泄」や「塩の薬利効果」といった記事も一定して関心を持たれていた。「特定用途食品について −塩化カリウム添加食塩の問題点−」もこの範疇に入る。現在では低ナトリウム食品としての塩化カリウム入りの塩が特定用途食品から外されているが、商品は販売されているので問題点がなくなったわけではない。

 「身体の中の塩の働き」についても年間を通して閲覧されている。(1),(2),(3)3回に分けて掲載したが表題だけでは具体的な内容が分らず、それぞれについて「浸透圧と水分調整」、「酸・塩基平衡の維持」、「栄養素の消化・吸収と刺激伝達」とでも副題を付けるべきであった。閲覧回数は最初の(1)が多く、(2),(3)と下がっているのは、次の話題を見ようとしたことの表れであろう。

 このようなシリーズ物の「塩水の不思議」でも同様の傾向であり、具体的な副題が必要であった。

 

「自然塩」「食塩摂取量」など

低アクセスの記事も

ちまたでは話題となり、ミネラルの多い塩に関心があると思っていたが、「自然塩とミネラルについて」は意外に関心が低かった。また、塩が悪者にされている中でも、塩味への嗜好は断ち切れない人達が多いだろうし、食塩代替物であるカリウム入りの塩に関心が高いかと思いきやあまり関心を持たれておらず、前述した「塩化カリウム添加食塩の問題点」を除き、「ナトリウムが悪けりゃカリウムがあるさ?」、「塩分50%をカットした塩?」、「ナトリウムとカリウム 働きと血圧に及ぼす影響」、「近頃気になるカリウム入りの塩」などへの関心は低かった。しかし、後者4件の%を合計すると2.62%にもなるので、関心度はかなり高いともいえる。

 厚生労働省の減塩政策が30年以上も続いている中で、食塩摂取量についての関心は高いと思われる。その表れで「食塩摂取目標量30年ぶりに低減」については1.47%とかなり関心が高かった。しかし、「食塩摂取量と胃癌の関係 疫学・生物学の見地から」となると関心が薄らぎ、「日本人の栄養所要量と国民栄養調査から見た食塩摂取量」のページ閲覧数はさらに少なくなった。実は食塩摂取量関係のページは表2に示すように多数あるにもかかわらず閲覧回数は非常に少なく、25件を合計しても3.18%にしかならなかったことから、食塩摂取量についてはあまり関心がないように思える。

表2 食塩摂取量に関する記事の閲覧率
表              題
食塩摂取量と死亡率、罹患率との関係 0.44
食塩摂取量1日10グラム以下とした背景 0.43
日本と世界各国の食塩摂取量を比較 0.39
海外の食塩摂取量と保健政策 0.38
食塩摂取量と高血圧の因果関係をめぐって 0.25
厚生省「健康日本21」における「食塩摂取量」について 0.23
日本人の栄養所要量について ─ 食塩を中心に 0.18
食塩摂取量と平均寿命 0.11
食塩摂取量と胃がんとの関係 0.10
食塩摂取量と高血圧性疾患その他死亡率や受療率との関係(1) 0.08
その後の食塩摂取量と疾患死亡率および受療率との関係(2)─ 脳出血による年齢別死亡率 0.08
その後の食塩摂取量と疾患死亡率および受療率との関係(4)─ 脳血管疾患死亡率の内訳 0.08
世界各国の食塩摂取量 0.07
食塩摂取量の変遷 0.07
食塩摂取量の変遷 その2 0.06
食塩摂取量と腎不全の関係は? 0.05
インターソルト・スタディの結果から(1)文明社会では食塩摂取量と高血圧発症は関係なし 0.05
各種国民調査に基づく食塩摂取量と高血圧、脳血管疾患、心疾患との関係についての統計的評価 ─ 第七回国際塩シンポジウム講演から ─ 0.04
食塩摂取量と脳血管疾患患者数 0.04
食塩摂取量は脳血管疾患とは関係なさそう 0.04
高血圧治療のために食塩摂取量6 g/日未満は達成できるか? 0.03
国民栄養の現状調査 ─ 食塩を中心に 0.02
直近の疾患死亡率・受療率データを整理 「高血圧」や「胃癌」−食塩摂取量との関係は希薄 0.02
食塩摂取量と高血圧性疾患その他死亡率や受療率との関係(2) 0.02
その後の食塩摂取量と疾患死亡率および受療率との関係(1)─ 疾患別年齢調整死亡率 0.02
合           計 3.18

 

国内での普及はまだだが…

「塩の部屋」話題に?

 2月、3月に一時的に高い関心を持たれた記事があった。『塩の部屋』ってなに? 塩の用途開発から生まれた新商品」と「欧米で普及するハロセラピー 塩の粒子で治療効果を発揮」のページであった。塩の微粒子がある環境下で喘息や気管支炎などの呼吸器系疾患を治療するのだが、日本ではまだ取り入れられていない方法だ。これについてこの時期に国内で何か話題になるようなことがあったのだろうか?

この治療法の導入については筆者に2,3相談を持ちかけられたことがあった。しかし、治療機器の輸入については難しいことがあるようで、未だ実現されていないと思っている。

                   □

 以上は筆者のホームページという限られたサイト内の塩に関する記事への関心度を解析したもので、ネットの塩記事全体の中で何に関心があるのかを示したものではない。基本的にはホームページへのアクセス件数を如何にして高めるかを考えて話題を選び、検索で高位にヒットされるように作業して行かなければならない。