たばこ産業 塩専売版 1993.07.25
「塩と健康の科学」シリーズ
日本たばこ産業株式会社海水総合研究所所長
橋本壽夫
介入試験(2)
正常血圧者の減塩効果
年齢が高くなると血圧が上昇し高血圧になることがあるため、今のところ血圧が正常でも、できるだけ減塩をして将来、高血圧になることを予防しておこうという考え方がある。そのため正常血圧者成人や子供が減塩した時、血圧にどのような反応があるかを調べた報告を紹介する。
正常血圧者の減塩効果
インディアナ大学のミラーらは家族単位で健康な正常血圧成人の食塩摂取量を減らして血圧に及ぼす効果を調べた。
82人(男子36人、女子46人)を対象として12週間にわたって食塩摂取量を9.2グラムから4.0グラムに減塩した結果、全体的には食塩制限期に平均動脈血圧がわずかながら有意に低下した。また、血圧の変化は年齢と有意に相関していた。
対象者の年齢を40歳以上と以下に分けると、食塩制限期に血圧が低下する可能性は40歳以上の人々の方が高く、40歳以下の人々では集団としての血庄変化はなかった。しかし、個別にみると血圧の変化はまちまちで、図1に示すように血圧が逆に上昇した人も何人かいた。この図は以前にも示したが、右端の数字は人数を示しており、かなりの人が減塩で血圧が上昇することを示していることから、減塩の危険性を示すのによく引用される。

図1 正常血圧成人の塩摂取量制限による平均動脈圧の変化
子供の減塩効果
ミラーは子供でも減塩効果を調べている。健康で正常な血圧の子供(4.2〜17.8歳、平均10.6歳男子64人、2.6〜19.8歳、平均9.7歳女子85人)149人を男子で食塩摂取量6.6グラムから3.1グラムへ、女子で5.3グラムから2.4グラムへ12週間減塩させた。
その結果、年齢と身体の大きさによって血圧を補正すると、収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、平均動脈血圧がわずかではあるが有意に低下した。しかし、個別にみると、この場合でも血圧変化はまちまちで、図2に示すように何人かの子供の血圧は減塩によって上昇しており、食塩制限すると必ず血圧が下がるとは限らないことを示している。この上昇が食塩制限によるのか、成長期の子供の正常な生理的変化によるものか、ミラーはこのデータでは何ともいえないとしている。

図2 正常血圧児童のナトリウム摂取量制限に対する血圧応答
また、このような試験を行っても、生涯にわたる減塩がどのような効果をもたらすかを直接示す証拠は得られないとしながらも、彼は次のようなことを明らかにしている。@子供では、身体の大きさと発育速度が血圧を決定する主な因子らしいA食塩摂取量の多い人が少ない人に比べてよりより減塩に反応するとは考えられない B減塩に対する血圧応答の指標となるような食事特性は簡単にはみつからない。として、最近の調査によると、高血圧症の親から生まれた子供のための高血圧予防策として、医師の25%は減塩を勧めている、と述べている。
乳幼児の減塩効果
減塩をさらに早くから行わせようと、新生児、乳幼児で減塩を試みた報告もある。
27人の新生児を生後8ヶ月間、食塩を添加したグループと添加しなかったグループに分けた試験では、血圧に差はなかった。ホフマンらはもっと多くの新生児(476人)の低食塩グループと普通食塩グループとの試験により、6ヶ月齢で血圧に有意差を認めた。
このグループ間の差は試験の進行につれて拡大した。しかし、6ヶ月齢の収縮期血圧の差は2.1 mmHgにすぎなかった、と報告している。
以上、血圧の正常な大人や子供、乳幼児までも含めて、減塩した時の血圧の変化を調べた結果を紹介したが、被験者数が少ないにもかかわらず変化は一定しておらず、減塩の効果がある場合、ない場合、逆の効果を示す場合といったように、評価が定まっていない。
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