たばこ産業 塩専売版  1995.06.25

「塩と健康の科学」シリーズ

(財)ソルト・サイエンス研究財団研究参与

橋本壽夫


その後の食塩摂取量と疾患死亡率および受療率との関係(4)

脳血管疾患死亡率の内訳

 これまでに食塩摂取量と疾患死亡率あるいは疾患受療率との関係を述べ、その過程で脳血管疾患、脳出血、高血圧について触れてきたが、同じ疾患名で疾患死亡率と疾患受療率を比較したために分かりにくい点があった。そこで今回は補足として脳血管疾患の内訳を述べる。

疾患死亡率と疾患受療率
 これまで述べてきた疾患死亡率の中で、高血庄性疾患による死亡率には高血圧性心疾患の死亡率が含まれている。脳血管疾患による死亡率には脳出血、脳梗塞、くも膜下出血、その他の脳血管疾患の死亡率が含まれており、それぞれの死亡率が発表されている。
  一方、疾患受療率の方には高血圧性疾患と脳血管疾患だけのデータしかなく、その内訳データは発表されていない。したがって、死亡診断と受療診断の比較では高血圧性疾患と脳血管疾患を取り上げた次第である。
 疾患死亡率の中では一般的に食塩摂取量と脳出血との関係に関心が高いので、脳出血について詳しく述べた。しかし、脳血管疾患は右上がりの急な勾配であるのに、脳出血では非常に緩やかな勾配になった。

脳血管疾患死亡率の内訳
 そこで、脳血管疾患死亡率の内訳を検討し、脳血管疾患の急な勾配に寄与している疾患は何であるのかを図1で明らかにした。脳血管疾患の急な勾配に大きく寄与しているのは脳梗塞であることが分かる。三回の調査で脳血管疾患、脳梗塞、脳出血の各年齢調整死亡率は5年毎に大きく低下しているが、それらの勾配はいずれも類似の傾向を示しており、再現性がよいことから、結果には信頼性がある。
脳血管疾患死亡率の内訳
            図1 脳血管疾患死亡率内訳

 脳血管疾患、脳梗塞は食塩摂取量と相関がありそうにみえるが、相関係数を求めるとほとんどゼロに近く、相関はなかった。

5歳刻みの年齢で整理した時の食塩摂取量と脳梗塞死亡率との関係
 5歳刻みの脳出血死亡率については4月号に掲載したので、ここでは脳梗塞死亡率について図2に示した。縦軸の目盛りは対数であるが、いずれの年齢も少し右上がりの傾向にある。しかし、前述したように食塩摂取量との相関はない。
食塩摂取量と脳梗塞死亡率との関係

        図2 食塩摂取量と脳梗塞死亡率との関係

 高齢になると脳梗塞による死亡率が1%以上になり、血管を柔軟にし、コレステロールをためないで血液の粘度を低くして、さらさらと流れるように血管、血液を上手に管理する食生活が大切である。