特殊製塩法
特殊製塩法とは、塩事業法にある法律用語の特殊製法塩を製造するための製塩法を指している。日本の
製塩法の主流はイオン交換膜製塩法と溶解再製製塩法である。イオン交換膜電気透析で海水を濃縮し、
得られたかん水を真空式せんごう法で煮詰めるか、輸入天日塩を溶解して得られたかん水を真空式せんご
う法で煮詰めて塩を生産している。しかし、塩の生産法にはこれ以外にいろいろな方法があり、それらを総称
して特殊製塩法と称した。いわゆる自然塩と言われている塩もこの範疇に入るが、消費者に誤解を与える
優良誤認表示として公正取引委員会からの指導もあり、業界が結成した食用塩公正取引委員会で検討され、
食用塩の表示に関する公正競争規約を制定し、自然塩という表示が出来なくなった。
海水を濃縮するには、天日利用やイオン交換膜利用の他に膜法では逆浸透膜を使用する方法、蒸発法で
は瞬間蒸発法がある。かん水を濃縮するには平釜法がある。逆浸透膜により海水を2倍濃度程度まで予備
濃縮して得られたかん水を平釜でさらに濃縮して製塩する方法は平釜製塩法と言われる。海水直煮法よりは
海水濃縮にエネルギー費が掛からないだけ有利であるが、海水成分の組成は変わらないので、スケールな
どの問題は海水直煮法と同じである。
海水または逆浸透法で得られたかん水を噴霧乾燥法あるいはドラム乾燥法などで瞬間的に蒸発させて、海
水中の溶存成分を総て固体にする方法である。海水中に溶けている総ての塩類が製品の中に含まれた塩で
ある。(溶存塩類中に塩化ナトリウムが占める割合は78%である。)
市販されている特殊製法塩には製品の優位性を訴える様々なキャッチフレーズが記載されている。しかし、
その
正当性は疑わしい。特殊製法塩を製造する会社関係では優位性を訴えるためにイオン交換膜製塩法の
塩を
根拠もなく誹謗することもある。前述した噴霧乾燥やドラム乾燥で製造された塩は前述したように海水中に
含まれている塩類が全て含まれているので塩化ナトリウム以外のミネラルが体に良いとされているが、人体が
一日に必要とする摂取量から考えると
体に良いと言われるほどの量ではない。つまり、塩からの
ミネラル摂取は
期待できない。もともと海水中の濃度が薄いことと、
塩摂取量が1日当たり10 g程度と少ないからである。この
塩は不純物が多いため特殊な味を示すが、
味よりもムードが先行している。一般的に
味に関する評価は個人
的な差が大きく難しい。海水乾燥塩ほど不純物が多くなくても
イオン交換膜製塩法による塩よりも美味しいと
表示されたり、
ミネラルが多いので体に良いと表示されたことがあったが、これも
公正競争規約により、その
ような表現が出来なくなった。塩の
不純物が及ぼす塩味への影響は人間の味覚では判定できない。
特殊製法塩の品質と安全性についても留意しておかなければならない。それらを保証する機関がないから
である。塩は高血圧には悪いが、塩味は欲しいということで
食塩代替物が市販されている。その大部分は塩化
ナトリウムの代わりに
塩化カリウムを半分混合した塩である。しかし、
この塩の安全性については懸念がある。
これらの塩はかつては厚生労働省大臣が許可した
特別用途食品の低ナトリウム食品に指定されていたが、
現在では外されている。
イオン交換膜製塩法による塩は真空式蒸発缶で作られているので形状が立方体であるが、
他の製法による
塩の形状は様々である。市販されている塩の形状は無定形、
フレーク状、整形加工したタブレットやペレット状
などである。その他にも
いろいろな違いがある。
製造法によって塩の成分も変わる。
製塩の副産物であるにがり
の成分も変わる。様々な添加物を加えた塩もある。日本の気象条件では
塩が固まり易いが、
それを避けるため
の添加物を
加えることもある。
焼塩にして塩が固まることを防ぐことも出来る。人体に
必須な栄養素を塩に添加
して
塩を運び役として使ったり、
香辛料、調味料を加える
場合もある。商品には成分表示がされているが、有機
物を加えてない無機物の塩に
炭水化物やエネルギーの表示がされていることがある。これは塩の分析に適用
する分析法が間違っているためである。