たばこ塩産業 塩事業版 2005.10.28
塩・話・解・題 7
東海大学海洋学部非常勤講師
橋本壽夫
香辛調味料入りの塩について
〜「食品開発展2005」より〜
海外では多数の香辛料が入った塩が販売されている。塩が専売制であった時代には香辛調味料入りの塩として、ごま、胡椒、にんにく等が入った塩がある程度であった。制度廃止後には、さまざまな香辛料や天然物が入った塩が開発され、販売されるようになってきた。先般、食品開発展がビッグサイトで開催されたので、行ってみると塩展示ブースもいくつかあった。開発展ということから新しく開発された商品の展示が中心となる。ある製塩会社は香辛料入りの塩を多数開発し、近く販売することで展示していた。このような商品が投入されることは食生活を豊にする上で好ましいことであり、参考までに海外の商品も併せて紹介しよう。
多様な「ふり塩」「つけ塩」日本の商品も外国並みに
食品開発展だからであろうか、新商品を開発していない会社は出展を遠慮したのか、一頃に比べると随分、出展ブースが減ってきた。その中で新商品として目立ったのは、写真に示す香辛調味料入りの塩をふり塩6点、つけ塩5点として計11点を展示していたコーナーであった。クッキング用のふり塩でイタリアンにはバジル、中華には八角、桂皮、茴香、丁子、花椒を合わせたミックススパイス、プロバンスにはエストラゴンなど数種のハーブ、うま塩には酵母エキスが入っている。
これまでこのような商品を生産販売している会社はあったが商品数としては少なかった。この度、さまざまな香辛調味料入りで付加価値の高い商品をこれだけ品揃えをして販売され始めたのを見て、日本の塩商品も外国並みになったかと、一入の感慨を覚えた。というのも、専売制が廃止されると、日本でもハーブ入りの塩が商品開発されてくることは当然考えられた。
その時の参考に海外の製品を買い集めて、15年前に「世界の塩U」としてラベルに記載されている表示も含めて商品紹介をした冊子を塩専売事業本部から出版したからである。
日本の食文化に合わせてさらに豊かな商品開発へ
その冊子から表に示す商品を選び出した。冊子にはもっと多くの商品が記載されている。どのような香辛調味料が使われているか。どのような用途に使われるか。どこの国から出されているか。といった観点から選び出した。
単一の香辛料だけが使われている商品は少なく、非常に数多くの香辛料が使われているものが多い。このような製品では香辛料の特徴がどう出るのであろうか。混合比率によって異なってくるのであろうが、その比率までは表示されていない。
用途は何にでも使えるように記載されている商品が多い。しかし、添加されている香辛料の違いからであろうが、用途に違いが示されているものがある。例えば、肉用とか魚用といった大雑把に示している場合とか、単一の料理に使用を特化した記載をしている物もある。香辛料を入れると同時に、塩化ナトリウムを少なくするために塩化カリウムを加えた食塩代替物としてダイエットに良いことを謳っている商品もある。また、香辛料ではないが、肉を軟らかくするために酵素のパパインを添加している商品もある。これなどはこれから日本でも商品化されそうである。
香辛調味料入りの塩はドイツで数多く出されており、1社が品揃えで多くの製品を出している。アメリカにはヨーロッパからこれらの塩が輸出されている。アメリカにも生産者がいると思われるが、アメリカの店では入手できなかった。このことは、アメリカの食生活では繊細な味付けが行われないことを表しているのであろうか。
日本の食文化に合った商品がこれからますます開発されてこよう。塩を付けて天ぷらや寿司を食べる時代になってきたが、醤油や香辛料の成分をカプセルに閉じ込める技術との組合せでワサビ、ショウガ入り塩なども商品化され、サラサラとマグロの刺身や鰹のたたきに振り掛けて食べる時代が来るかもしれない。
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