イオン交換膜製塩法

 現在のイオン交換膜製塩法が開発されるまでに、品質の良い塩を経済的に製造して塩の需給安定を図り、
国民経済の安定に資するために塩専売制度の中で製塩技術の開発が行われてきた。

 塩を安く作る工夫がいろいろと開発されてきた中で、海水を濃縮する方法に
イオン交換膜を使用してかん水
(濃い塩水)を製造し、そのかん水を蒸発缶で濃縮採塩する製塩法である。採かん工程に塩田の代わりに

イオン交換膜電気透析槽
を使用する製塩法で、採塩するせんごう工程を必要とする。

 イオン交換膜製塩法の原理はイオン交換膜電気透槽(電槽と略称する)を理解することで分る。それは陽
イオンを通す陽イオン交換膜と陰イオンを通す陰イオン交換膜を交互に数多く並べて、両端の電極から直流
を流して海水を濃縮する装置である。電槽に直流を流すと、海水中の陽イオンは陰極に向かって移動する。
その時、陽イオン交換膜を通ることは出来るが、次の陰イオン交換膜を通ることはできない。一方、陰イオンは
陽極に向かって移動する。その時、陰イオン交換膜を通ることは出来ますが、次の陽イオン交換膜を通ること
は出来ない。このことにより、海水から陽イオンと陰イオンが少なくなって、その分、陽イオンと陰イオンが多い
室ができる。ここで、室とは陽イオン交換膜と陰イオン交換膜で囲まれて出来る空間のことを言う。

 海水中のイオンが少なくなる室(脱塩室と称する)とイオンが多く集まってくる室(濃縮室)が交互に出来る。
濃縮室には18から20%のかん水が出来、海水は20から30%脱塩される。イオン交換膜製塩法により
経済的
に製塩
ができるようになった。化石燃料の熱利用効率を図る上で自家発電装置を持ち、発電に利用した廃
蒸気を真空式蒸発装置に利用してかん水を煮詰めて製塩するコゼネレーション方式を採用している。コゼネ
レーションの熱利用効率は火力発電所の効率よりも何倍も高い。このことは製塩で海水を蒸発させるための
エネルギーが少なくて済むことを意味し、それだけ炭酸ガスの放出量も少なくなるので環境にやさしい製塩法
であると言える。但し、太陽熱と風の乾燥度(相対湿度100%との相対湿度差)を利用する天日製塩法では採塩
器機の燃料以外に炭酸ガスが出ることはない。なにしろ海水の90%を蒸発させて初めて塩が出始め、97%を
蒸発させるまでに析出した塩を採塩するのが海水蒸発製塩法であるからだ。

 しかし、イオン交換膜製塩法によって製造された塩は純度が高く、薬品のような塩でナトリウム以外のミネ
ラルが少なく、化学塩と称して体に悪いと特殊製法塩業界やマスコミから科学的根拠に基づかないで誹謗
されている
。しかし、環境汚染が進んできた現在では、イオン交換膜製塩法で作られた塩は人体に安全で
やさしい塩
と言える。特殊製法塩は食用塩ではあるが、塩の安全性は必ずしも保証されているとは限らない
一方、イオン交換膜製塩法による塩は食用塩の規格で安全性が保証されている。