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2017.04.01

 

海外マスメディアの塩論争報道  新聞編

 

 減塩で血圧が下がるのは塩感受性の人達だけであり、その人達の比率は30%程度とか、高血圧者でも50%以下と言われることから減塩による血圧の低下効果はそれほど大きくはなく、その上、減塩が危険となる場合があることが分かって来るにつれて、全ての人々に減塩を勧める保健政策の是非について専門誌で塩論争が掲載され、それを受けて一般のマスメディアでも一律の減塩政策に対して専門家達による寄稿の掲載やジャーナリストの記事が掲載されている。それらの記事を読んで、国民は塩摂取量、減塩に対してどう考えておけばよいのかを判断する。アメリカでは減塩政策に対してあまり関心を持っていない。その結果、50年間も塩摂取量は変わらないことに反映されているように思える。

 日本では塩を悪者とし減塩推進に関する記事は掲載されても、減塩に疑問を呈する記事は掲載されない。いわんや塩論争に関する記事が新聞に掲載されたことはない。国民には減塩を勧める一方的な記事だけが報道されるので、減塩をしなければと不安に思いながら食生活を送っている人達もいるのではなかろうか。一方、蒸し暑い夏になれば発汗による塩分損失からくる熱中症を予防するために塩分を補給するようにも報道され、国民は塩摂取量に対してどう考えておけば良いのか分からず、判断できなくて戸惑ってしまうのではなかろうか。

 海外でも減塩推進記事の報道が圧倒的に多いが、減塩政策に対する疑問や、学者が行っている塩論争の様子を伝える記事もしばしば掲載される。英文記事だけについてその記事の表題だけを紹介する。内容はリンク先のサイトでお読み頂きたい。

 

アメリカの新聞

〇 ニューヨーク・タイムズ

 他の新聞に比べて古くから塩に関する記事を一番多く掲載しているようだ。どのような見出しの記事が掲載されてきたかを現時点から途中までであるが遡ってみよう。最近は減塩政策に疑問や反対を表明する記事はない。

2016526日 ほとんど何も知らないで減塩勧告を受け入れ

        Aaron E. Carroll著 インディアナ大学医学部小児科教授 

2016525低塩食は心臓に悪いかもしれない

           Nicholas Bakalar  健康関係コラムニスト

2014823日 社説:塩辛い食品に関する論争、継続中  論説委員著

2014年4月22日 疾患と塩を関係付ける研究は研究者達に疑いを持たせる

Nicholas Bakalar著   健康関係コラムニスト

2013514日 社説:減塩についての疑い  論説委員著

2013514日 食事中の塩に関する厳しい制限には利益がない

       Gina Kolata著  ジャーナリスト

201263日  塩、我々は皆さんを誤らせた

       Gary Taubes著  ジャーナリスト 

201153日  減塩食は無効と研究で判明 多くの矛盾

          Gina Kolata著  ジャーナリスト

2010年2月22日 塩の問題に取組む時、正しいか、間違っているかはまだ分からない

           John Tierney著  ジャーナリスト

2010222日 塩戦争  John Tierney著  ジャーナリスト

200925  科学の危機  Michael Alderman著  アメリカ高血圧学会元会長

〇 ワシントン・ポスト

 ワシントン・ポストの記者ピーター・ウォリスキーの記事が多い。

2015年4月6日 科学的難問:どうして食事研究では確実性がそんなに曖昧なのか

           Peter Whoriskey著

2015年4月6日 アメリカ人の食事は塩辛すぎるか?科学者達は長年にわたる政府の警告に挑戦

        Peter Whoriskey著  ワシントン・ポスト記者

2011年7月6日   塩と心疾患の関係は疑問     Rob Stein著  科学記者

〇 シカゴ・トリビューン

2016年6月6日  常識を求めて:塩摂取量、心臓の健康と死亡

        Faye Flam著  ジャーナリスト

2013年5月14日 研究はナトリウムについての結果を疑う

       Geoffrey Mohan著  ジャーナリスト

〇 ロサンジェルス・タイムズ

2013年5月14日 塩摂取量についてのいくつかの結果に研究は疑義を呈する

       Geoffrey Mohan著  ジャーナリスト

 

カナダの新聞

〇 グローブ・アンド・メイル

2016530日 減塩食は健康のためにならない?塩を巡る激しい論争を詳しく見る

        Carly Weeks著  ジャーナリスト

2014228日 食卓に塩振出器を戻す時かもしれない

        John Sloan    ブリティッシュ・コロンビア大学教授

〇 ナショナル・ポスト

2014年8月14日 塩について考えていることを整理しよう:新しい研究は減塩のし過ぎは有害であることを示唆

                      Sheryl Ubelacker    ジャーナリスト

 

イギリスの新聞

〇 デイリーメール

 120年の歴史を持つ新聞社であり、インターネットでメールオンラインとして多くの記事を提供している。

2016年5月21日   あまりにも少ない塩摂取量は心臓発作や脳卒中の危険率を増加させるかもしれない、と論争になりそうな新しい研究は主張

                     Lizzie Parry著  ジャーナリスト

201547日  新しい研究は政府の塩ガイドラインに疑いを投げかけ、現在の推奨限界値の2倍を人々は摂取できる、と主張  デイリーメール記者

2015年1月20日 70歳代の塩摂取量と死亡率は無関係であることを研究で明らかに

            Jenny Hope著  ジャーナリスト

2014年9月11日 塩は高血圧を発症させないと新しい研究は発表

        Lizzie Parry著  ジャーナリスト

2012年7月16日 減塩は健康に悪いか  Pat Hagan    ジャーナリスト


2011年11月9日

減塩は有益よりも有害ではないか?減塩はコレステロールを上昇させ

ることを専門家達は発見

         Sadie Whitelocks著  ジャーナリスト

〇 ガーディアン

2015年3月15日 塩:健康にとって大したことはない

        David Kohn著  

 

オーストラリアの新聞

〇 シドニー・モーニング・ヘラルド

2016417日 食品産業界は塩含有量を巡る長期間の論争でたばこと酒造業界を比較

        Harriet Alexander著  ジャーナリスト

2012123日 塩戦争  Mark Whittaker著  ジャーナリスト

 

 これらの記事は社説であることもあり、記者、各種メディアに寄稿するジャーナリスト、専門の学者によっても書かれている。日本では醤油、味噌、漬物など塩を使った伝統的な食品を食べる食生活を送ってきた。WHOの世界保健統計2016年版では世界一の長寿国でありながら、塩と健康問題で減塩政策に疑問を持ち論文を読み、情報を伝える記者やジャーナリスト・学者が日本にはいないとは、考えられないことだ。