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科学の危機

A Pinch of Science

By Michael Aldermankiki

Published: February, 5 2009  The New York TimesOpinion

 

 公衆衛生を促進させるリーダーであるニューヨーク市の保健精神衛生部はこれからの10年間で加工食品の塩含有量を40%以上減らすように加工食品製造者に勧める運動に着手した。脳卒中と心臓発作を予防するためで、目標は立派である。前提は論理的で、減塩すれば血圧が下がるだろうし、より良い心臓血管衛生に寄与する。

 しかし、そのような大きな減塩が実際に達成されれば、他の最も発展している諸国の人々が減塩しているよりも少ない塩をニューヨーク人は摂取することになるだろう。食事の中で一つの成分にそのような大きな変化があることは意図しない有害な結果を招くかもしれない可能性がある。そのような行動は安全であると言う強い証拠によって論理や良い概念は支持されるように慎重でなければならない。

 歴史を通して、個々の食事特性を変えることによってヒトの食事を改善するために努力が続けられており、これらの変化のいくつかは予期しない有害な効果を持っていた。例えば、1950年代に、妊婦は子癇前症、高血圧に特有な症候、体液貯留、腎臓問題を避けるために厳しく体重増加を制限するように勧められた。明らかに多くの婦人がこのアドバイスに従い、多くの低体重の赤ん坊-低体重で生まれたことに帰する幼児の死-が増加した。

 ごく最近、人々に多くの低脂肪食を食べるように奨励することによって幾分アメリカ合衆国で増加している肥満の流行に寄与しているとして、連邦食事ガイドラインは医学研究者達に批判されてきた。

 両方の事例で、規制当局は、彼等の政策が逆効果となるかどうかを知るための証拠を持たないで道理に合った考えを制定した。

 塩は健全な食事の中で多くの必須元素の中のわずかに一つである。人々が自由に塩を得られる所では、健康な人々は1日当たり約5~8グラムを一般的に摂取している。人々のグループが毎日のナトリウム摂取量を12グラムに減らしたとき、彼等の平均血圧は低下する。しかし、個人間で非常に大きな変動がある。ほとんどの人々については、幅広いナトリウム摂取量の変動は血圧に影響を及ぼさず、何某かの人々についてだけ、塩摂取量を減らしたとき、血圧は実際に上昇する。

 しかし、本当のことは、減塩が最終的に心臓発作や脳卒中を予防し、したがって、改善されるか、寿命が延びるかどうかである。そしてこれは血圧だけに依存するのではなく、制限されたナトリウム摂取量により起こる全ての代謝結果に依存している。それらにはインスリン抵抗性、交感神経活性の亢進、レニンーアンジオテンシン系に基づく腎臓の活動がある。これら3つの効果の全てが心臓発作や脳卒中の危険性を増加させる。この単一の食事要素の変化が未知の栄養的な相互作用を乱すかも知れず、かくしてまだ未確認の効果として良いか悪いかの作用を発生させることはあり得る。

 塩消費量が我々の健康にどのような影響を及ぼすかに関する一番利用できる証拠は観察研究からもたらされ、その研究では、被験者は通常のナトリウム摂取量とその後の心臓発作や脳卒中との間の相関関係を明らかにするために調べられる。ニューヨーク人が摂取しているのと同程度のナトリウムを摂取している全部で100,000人以上の参加者を調べた9件のそのような研究は様々な結果をもたらした。それらの研究の4件では、減塩は心臓発作や脳卒中による死亡数の増加や疾病と関係していた。肥満者に焦点を置いた研究では、塩摂取量が多いほど心臓血管疾患死亡率の増加と関係していた。そして残りの4件では、塩と健康との間に何の関係も見られなかった。

 塩消費量を減らすことを主張する人々は、塩消費量がアメリカ合衆国よりも一般的に高い日本とフィンランドの2つの他の観察研究を考察することを概して好む。これらの両方の国では、より多くの塩はより多くの心臓血管問題と関係していた。

 しかし、観察研究は因果関係を示せない。そしてタバコと肺や心臓血管衛生に関する研究が行ってきたように、多くの研究が幅広い状況範囲の中で一定の強い結果をもたらすとき、この種の研究は行動を正当化できるだけである。

 それにもかかわらず、塩摂取量に関する研究は最も強力な種類の医学研究であるランダム化された臨床試験に取組む疑問を明らかにするのに役立つ。そのような研究では、年齢、体重、血圧値、コレステロール値のような関連した特性値を共有している人々は2つのグループに分けられ、それらのグループは1つのグループが塩摂取量を減らしていることを除いて同じ食事を食べさせる。この方法で結果(心臓発作や脳卒中)に何らかの差があれば、確かにナトリウム消費量のせいである。

 塩摂取量に関してわずかに一つの強力な臨床試験しかこれまで報告されておらず、それはかなり進んだ心臓に問題のある患者に焦点を置いていた。結局のところ、低ナトリウム食に従ったグループは、高ナトリウム食に割り当てられた人々よりもかなり多くの心臓血管による死と入院に実際に遭った。

 考察すべき別の証拠は、過去の世代を通して、アメリカ合衆国のナトリウム摂取量が明らかに増加しているのに、心臓発作や脳卒中による死亡数は半分に減ってきた。

 減塩の利益について説得力のある科学的な証拠がなく、安全性の保証もあまりないので、ニューヨーク市衛生部が法律のための確実な科学的根拠を提供する研究に迫ることは賢明かもしれない。とかくするうちに、人々から心臓発作や脳卒中の危険性を下げるのに役立てるために、衛生当局は体重管理(それは塩摂取量を減らす)や運動の利益を促進させることに集中すべきである。