6. 塩とその他疾患

 塩が高血圧や胃癌の原因となるのは仮説であるが、同様に仮説として関係があるとされている他の疾患
は骨粗鬆症、腎臓結石、喘息などである。

 
 いろいろな疫学調査から塩は胃癌の原因物質ではないかとの仮説が立てられた。厚生労働省発表の食
塩摂取量の推移と胃癌死亡率の推移とを組合せて考察しても仮設は証明されなかった。その後、さらに詳し
く胃がんによる年齢別死亡率と食塩摂取量あるいは入院患者や外来患者との患者を整理しても関係は見
出せなかった
。その後のデータ整理でも食塩摂取量との関係は希薄であった。食塩摂取量と胃癌との関係
をレビューした論文によっても関係は明確ではなかった

 京都国際会議場で第7回国際塩シンポジウムあり、そこで厚生労働省が発表している各種の統計データ
を整理して食塩摂取量と高血圧、脳血管疾患、心疾患との関係を発表した。その概要を新聞に掲載した。
その後、疾患別年齢調整死亡率受療率について整理し、脳出血による死亡率とは関係なく、脳血管疾患
死亡率
とも関係なかった。

 食塩摂取量と腎不全との間には相関があるように発表された論文ではデータ整理を間違えており、実際
には相関関係はない

 冒頭、塩摂取量が喘息の原因ではないかとの仮説があることを書いたが、喘息や呼吸器系疾患の治療に塩粒子を含むエアロゾルが利用されている。これは洞窟治療法を参考にして発展したハロセラピーという技術である。欧米では慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療で治療施設の利用が広がっている。しかし、この治療法に疑義を示す意見もある。