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たばこ産業 塩専売版  1995.05.25

「塩と健康の科学」シリーズ

(財)ソルト・サイエンス研究財団研究参与

橋本壽夫

その後の食塩摂取量と疾患死亡率および受療率との関係(3)

疾患別受療率

 これまでに食塩摂取量と疾患死亡率との関係について分析した結果、脳出血による死亡率と食塩摂取量との相関はなかった。脳血管疾患にはる死亡率とは少し正相関があるようであるが、今回は食塩摂取量と脳血管疾患で病院に入院または外来治療している受療率との関係を整理した。

死亡率と受療率
 死亡率は死亡の原因を医師の診断によって明確にし、死因となった疾患別に整理し、人口十万人当たりの死亡者数として発表されている。しかし、死因は必ず生前に患っていた疾患であるとは限らない。
 例えば、高血圧や脳血管疾患で長年患っていても、死因は心不全や急性肺炎となることがある。
 このように、死亡率には若干曖昧なところがあり、食塩摂取量との関係を考える場合でも注意しておかなければならないが、脳血管疾患死亡率のように三回とも同じような傾向の結果が出れば、ほぼ真実を表していると考えざるを得ない。
 ところが、疾患受療率では生きている患者を診断して疾患名をつけているので、これには曖昧さがなく、食塩摂取量との関係も正しく表されると考えられる。

高血圧性疾患患者数
 高血圧性疾患による死亡率については食塩摂取量との相関はなかったが、念のため受療率を図1に示す。高血圧性疾患では入院患者よりも外来患者の方が相当多いことが分かる。年の経過による患者数の変化はほとんどなく、この6年間同じであったといってよい。食塩摂取量と患者数との関係を表すデータはバラついており、食塩摂取量と高血圧性疾患に相関があるとはいえない。
食塩摂取量と高血圧性疾患患者との関係
    図1 食塩摂取量と高血圧性疾患患者との関係

脳血管疾患患者数
 脳血管疾患による死亡率については食塩摂取量の増加に伴って死亡率が増加する正相関がみられた。また、年々、死亡率は急速に下がってきた。ところが、脳血管疾患で受療している患者数をみると図2のようになり、入院患者は若干増加している傾向にあるが、あまり大きな変化はなく、ほぼ同じとみてよい。
食塩摂取量と脳血管疾患患者との関係
    図2 食塩摂取量と脳血管疾患患者との関係

 食塩摂取量と患者数との関係を表すデータは大きくバラついており、これについても相関があるとはいえない。

 脳血管疾患では入院患者の方が外来患者よりも若干多いが、ほぼ同じ程度の患者数であるといってもよい。
 このように、死亡率でみた場合には正相関があると思われた脳血管疾患でも、データに一層の信頼性がある受療率でみると食塩摂取量との相関はなくなった。