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2019.06.01

 

最大の塩情報発信団体解散

 

 アメリカの塩協会は1914年にアメリカの塩生産流通業界が集まって発足した団体である。塩の科学、生産、用途、性質、融氷雪用塩の環境に及ぼす影響、歴史、教育、そして近年では2000年頃に解説したホームページを通して塩と健康問題に力を入れ、あらゆる塩に関する情報を流してきた。

 筆者が現職の頃、アメリカ塩協会の協力を得て1992年に京都の宝ヶ池にある京都国際会館で7回国際塩シンポジウムを開催した。当時の理事長はディック・ハンネマンで科学的根拠に基づいて積極的に政府の減塩戦略を批判し、マスメディアに情報を流し、ホームページでも有用な情報にあふれていた。後任の理事長ロリ・ローマンになってからは分子生物学者で国連食糧農業機関のグローバル農業関連産業プログラムのディレクターであったモルトン・サティンが副会長となり、引き続き塩と健康問題に関する情報を流していた。

 ところが突然、20193月末をもって組織を解散しホームページが閉鎖された。解散した理由は明らかでない。National Public Radioのウェッブ・サイトによると、理事長のロリ・ローマンは解散理由を何も言わず、理事会メンバーの大手製塩会社にも接触したが何の情報も得られなかったと言う。副会長のモルトン・サティンいろいろなことは非常に上手くいっていたので驚いたと言う。約25年間理事長であったディック・ハンネマンもどうして閉鎖されたのか分らないという。設立された当時、数百人いた塩生産者は、時代の変遷とともに業界は変わり、塩生産は大きな化学会社と農業会社の1部門になり、彼が退職したときにはメンバーは12会社以下になり、大会社が協会に参加していることに利益がなければ脱会し、運営資金がなくなって閉鎖したのではないかと推測している。