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2017.08.01

 

私の血圧管理

 

 塩と高血圧との関係について長年、情報を流してきた。科学的根拠がないにもかかわらず塩を悪者にする情報が氾濫している中で、筆者の情報は科学的根拠に基づいた塩と高血圧との関係を紹介することを基本としている。塩は高血圧とはあまり関係ないとの情報を流しながら、読者の中には筆者自身が減塩しているように思っている人もいるようだが、塩摂取量を気にしない食生活をしている。高血圧症である筆者は別の疾患で入院した機会に減塩食を給食させられたことから塩感受性でないことを知ることができた。

実のところ長年、高血圧症を患っている。一時期、高血圧治療を止めていたが、現在では降圧剤を服用した治療を続けている。この間、筆者が血圧を管理してきた経験を紹介する。参考になれば幸いである。

 

高血圧症と診断されてから

入社して翌年2月には東京の中央研究所から山口県の防府市の防府製塩試験場に転勤になった。その頃、後頭部が重く充血した感じで物事を考える気力も湧かず、後ろの首筋を強く押すと気持ち良かった。変だなとは思いながらも勤務していた。市内に県立中央病院があったので、診察してもらうと血圧が高いことが分かった。最高血圧が170-80 mmHgあったので、自覚症状が表れたのであろう。一日3回の服用で薬剤治療を行っていたが、若年性高血圧の場合、何らかの原因があることが多いので、入院して調べることになった。腎臓の血管造影を含めて2週間以上の入院であったが、結局、原因が分からず若年性本態性高血圧症と診断された。服用を続ければ問題ないとのことで、外来診察を続けることになった。

 当時は家庭用の血圧計もなく、一日三回の服用を続けており、手首で脈拍数を数える要領で指先に伝わってくる脈拍の強さで血圧の高さを予測した。後頭部の重さを感じられなくなり、脈拍の強さが弱くなると三回の服用を二回とし、さらには一回としてきた。当然のこととして、外来診察時の血圧測定値を参考にしながらであったが、主治医に無断で行っていることなので、人に勧められるものではなく自己責任で行ったことである。

 1972年の試験場閉鎖に伴って神奈川県の小田原市にあった小田原製塩試験場(現在の海水総合研究所)に転勤になった。それを機に7年間続けた高血圧治療を止めることとした。

 

高血圧治療の再開

 小田原に来てからも高血圧症の自覚症状はなかった。東京に転勤になり、40歳過ぎてから胆石のために胆嚢を切除する手術を受けた。以来、肝機能検査で定期的に通院していた。60歳頃になって血圧が上がりだした。その際の血圧測定で治療再開を決断した。65歳で退職するまでは東京の病院に通院していたが、退職後は小田原市にある自宅近くの病院、平塚市の病院、再び小田原市の元の病院に通院している。

 その間に家庭用の血圧計を購入し、毎日起床してから約1時間後の血圧を測定し、薬局からもらった血圧手帳でグラフ化して傾向を見てきた。その後、8年ほど前に朝、昼、夜と2年間の記録が残る血圧計を購入した。高価な血圧計であるが、それだけの価値はあると思う。測定は自動的に15秒間隔で3回行われ、その平均値が記録される。月単位で2年間、週単位で2ヵ月間の記録が残り、朝、昼、夜の月間または週間の平均値とその間の最高血圧平均値差と最高血圧値差が表示される。これで早朝高血圧かどうかが分かる。筆者は典型的な早朝高血圧症であることが分かった。

 これまで服用してきた薬は2種類であった。血圧が下がらなければ血圧計の記録を主治医に見せて、薬を変えてもらうことを何回か繰り返してきたが、変えたことによって目に見えて血圧が低下した効果が経験できず、こんなものかと思い最高血圧が150 mmHg台に維持され、160 mmHgを超えることは避けよう。最低血圧は90 mmHg台、100 mmHgを超えることは避けようと考えて治療を続けてきた。

 

減塩で血圧が低下する塩感受性の判別

薬物治療によらない高血圧の非薬物療法には減塩、DASH食、運動などがある。減塩による血圧低下は塩感受性でなければ起こらない。塩感受性者は一般的に30%程度しかおらず、高血圧者でも50%以下と言われている。しかし、塩感受性の簡便な検査法はない

 前述したように高血圧症である筆者は減塩には全く気遣っていない。肥満防止のために積極的に運動をしている。たまたま主治医を変える前に、脊柱管狭窄症で2週間入院した。高血圧症であるため、病院では塩摂取量6 g/d1600 Kcalの減塩食を給食された。この期間であれば十分に塩感受性を検出できるので、前記の血圧計を持ち込み、測定を続けた。その結果、血圧は変化せず、塩感受性でないことが分かった。図1の201610月の値を見て頂きたい。ただ、厳密に言えば降圧剤治療を行っていたので、塩感受性の判定は難いかと考えられるが、塩感受性と判断するには10%以上の低下が必要である。

 

主治医を替えてから

 主治医が高齢であるので病院内の他の先生に変わることを考え、母が長年心臓病で診察を受けていた循環器専門の先生に昨年から秋から変わった。新しい主治医は同じ病院内であるので、筆者の元の主治医から事情を聴いていたようであった。高血圧治療については自信があり、院内の難治療高血圧者は回されてくると言う。これまで投与されていた薬は変えられ、また1種類追加されて3種類の薬を服用することとなった。薬を変えてから図1に示すように起床時の血圧を除き下がりだした(5時頃目覚め、6時頃測定)。しかし、午後の運動では、最高血圧が110 mmHg前後、最低血圧が55 mmHg前後になった。この時、体がだるく疲れを感じ、忍耐力がなくなり運動を継続出来なかった。

服用している薬はACE阻害剤、カルシウム・ブロッカー、βブロッカーである。就寝時の測定は午後11時頃行う。その時には、低い血圧であっても朝までに血圧は上昇するようで、今のところその値を下げる治療はされていないようだ。

               

図1 投薬による血圧変化

 

高血圧治療薬

 高血圧治療には一般的に下記5種類の薬剤が使われる。どの薬が患者に一番よく効くかは試行錯誤によって選択しなければならない。ほとんどの人々は高血圧管理に1つ以上の薬を必要とするので、患者が最も効果的な治療を受けられる薬の選択・組合せは非常に難しいことである。

 限られた血管内容積中の血液量を減らすことにより血圧を下げる薬である1と2、血管が収縮すると容積が減るので血圧は上昇する。したがって、血管収縮を阻止して血圧を下げる薬である3と4、血圧を上昇させる物質を作らせないようにして血圧を下げる薬5がある。

1 βブロッカー:心臓の鼓動を遅くし、血液循環量を下げることにより、血圧を下げる

2 利尿剤:腎臓からの体液排出を促進させ、血液量を下げることにより、血圧を下げる

3 αブロッカー:血管の収縮を阻止するので、拡張した血管状態にして血圧を下げる

4 Caブロッカー:血管平滑筋細胞内にCaが入って血管を収縮させることを阻止し、血管を拡張状態に維持して血圧を下げる

5 ACE阻害薬:血圧を上げる物質を作らせないようにすることで血圧を下げる

筆者に処方されている薬は1、4、5である。血圧を下げる基本的な三つの作用を示す薬から一つずつ選ばれている。非常に良く効くことが分かった。これまで高血圧治療をしてきた病院を3ヶ所変わり、主治医はそれ以上の回数で変わり、薬も変えながら現在のような血圧低下を経験したことはなかった。血圧治療に対する主治医の取り組み姿勢に問題があり、白衣高血圧(医者の白衣を見て緊張した状態で測定される血圧は高い)診断時1回の血圧測定だけでは薬の変更には踏み切れないのであろう。そのような時に、筆者が使用している血圧計で普段の生活状態の血圧を示すことは、適正な薬を選ぶ上で非常に重要である。

筆者についてのこれからの問題は早朝の血圧を下げられないか?3種類の薬を2種類、1種類と減らせないかである。血圧記録を示しながら主治医と相談して進めていきたい。