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2016.11.01

減塩食を食べてみて

 高血圧である筆者は脊柱管狭窄症の緩和治療で2週間の入院をすることになった。高血圧者であるため塩摂取量が1日当たり6 g1,600 kcalの減塩食を処方された。この機会に自分が塩感受性であるかどうかを知りたいと思った。塩感受性の判定は2週間もあれば出来ることが報告されている。

日常では一日一回、夕食後に2種類の降圧剤を服用し、起床時と就寝時に血圧を測定している。使用している血圧計メディノートは自動的に15秒間隔で血圧を3回測定し、その平均値を記録する。三回の測定で大抵の場合、一回目が高く二回目、三回目となるにつれて低い血圧値となった。さらに毎週と毎月の平均値がそれぞれ2か月間と2年間にわたって棒グラフとなって表示される。また測定時に記録されている実際の測定値を遡って読み取ることが出来る。

処方された食事は主食が米飯150 gかパン2枚で、副食が基本的に味噌汁を含めて3品。たまにデザートが付くことがある。普段、濃い目の味付けで塩摂取量を全く気にしない食生活をしている筆者は、減塩食は塩味が薄く、味気なくて美味しくないものとの先入観を持っていた。確かに味噌汁は塩味が薄くボケた感じで物足りなかった。しかし、退院する2週間目の朝食に出た味噌汁はそのようには感じなかった。つまり2週間の間に薄味に慣れて美味しく感じられるようになっていた。

副食の味付けは甘味が主体で、大抵の場合、酢で味付けした一品があった。他に香辛料のカレーやワサビ、からし、生姜を加えて味にメリハリを付けてあった。旨味も効かせて全体的に美味しく食べられるように工夫してあることが感じられた。しかし、茹でた野菜とたまたま出された鰆の磯辺焼きは全く味付けされていなかったので美味しくなかった。味付けに出されるスティック醤油は塩を40%以上減らしただしわりしょうゆ(一袋当たり食塩相当量0.25 g)で、チキンカツに付いていたのは塩分を70%減らした減塩中濃ソース(一袋当たり食塩相当量0.08 g)であった。このように減塩食でも出来るだけ美味しく食べられるように工夫してあったので、総体的に食べやすくあまり抵抗感はなかったので、減塩食は美味しくないと言う先入観は払拭された。しかし、複数の病院に入院して減塩食を処方された友人によると、減塩食でも病院によってずいぶん違い、全く美味しくない病院食があるようだ。

 減塩食を食べて気になることがあった。それは体力がなくなるというか、運動して体が非常に疲れたような状態になることだ。具体的には体力維持のため入院中でも毎日、15,000歩程度歩く運動した。その中には地下から5階まで階段を上ることがある。階段の数は1階当たり22段である。地下から上り始め4階から5階に登るときになると体が疲れた時のだるさになった。つまり100段ほども上った時である。この経験は後で述べるジムでの筋肉トレーニング時にはなかった。減塩で気力・体力が落ちることは書物を通して知っていたが、体験したのは初めてであった。

1日当たりの塩摂取量6 gは、料理に使用した食品中のナトリウム量を食品標準成分表から集計し、その値に係数2.54を掛けて計算される。当然のこととして日々の塩摂取量は変動し、一週間目は4.97.6 g、二週間目は5.57.1 gの範囲であった。栄養士の先生に1週間平均で6 gになるように管理しているのかと聞いたところ、そうではなく日々6 g付近になるようにしているとのこと。しかし、厚生労働省は6 g未満になるように指示しており、抜き打ち査察で6 g以上に調理していると指導されるという。

減塩食を食べての血圧変化は図1の通りであった。入院期間は1013日から1027日までの2週間であった。この間、1日当たり6 gの減塩食を食べたが、血圧は変化していないと言える。したがって、筆者は塩感受性ではないことが分かった。塩感受性であるためには、10%以上の低下がなければならない。

減塩食による血圧変化

1日当たり1,600 kcalの食事であるので、2週間で体重は85.4 kgから81.4 kg4 kgの減量となった。ある日の食事の内容を写真に示す。筆者の場合、点滴すると下剤を点滴されたように必ず便意をもよおした。それも2回、3回にもなるので、その都度、点滴を続けながらベッドから起き上がり、キャスター付きのスタンドを押してトイレに通った。このため初日の体重の減量は1 kg以上もあった。

体重が減ると血圧が下がると言われているが、これくらいの体重減では血圧は下がらないことも分かった。また血圧低下に運動療法がある。運動すれば血圧は大きく下がる。筆者は肥満防止にジムに行って腹筋、背筋、腕や足の筋肉を鍛えるために様々な運動をするが、最も長く続けるのは階段上りのステップ運動で、1分間に95段程度の階段を上るような運動を15分間続けると、茶碗1杯のご飯のカロリーに相当する160 kcal24分間でハンバーグ1個分の260 kcalのエネルギーを消耗する。これらの運動前後に血圧を測ると最高血圧で30 mmHg程度、最低血圧で20 mmHg程度も下がることを確認しているので、運動には血圧を下げる大きな効果がある。

読者も入院する機会があれば、不安な食生活から解放されるために塩感受性をチェックしてみることを試みてはどうだろうか。不幸にして塩感受性であることが分かれば、出来るだけの減塩に心掛ければ血圧が下がり、服用する薬の量も減らせるかもしれない。

減塩食の朝食

朝   食

 

減塩食の昼食

昼   食

減塩食の夕食

夕   食