日本海水学会誌 第45巻 第4号 222-237 (1991)

 

ヨーロッパの塩事情

State of European Salt Industry

        橋 本 壽 夫

             Toshio HASHIMOTO

        日本たばこ産業(株)塩専売事業本部

             Salt Administration Headquarters, Japan Tobacco Inc.

             (100東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞ヶ関ビル8)

 

1.は じ め に

 ヨーロッパでは紀元前1000年ごろからすでに岩塩の採掘が行われていた.その地はアルプスにあるハルシュタットである.紀元前1100500年にはヨーロッパ南部で青銅器時代から鉄器時代にかけてハルシュタット文化が栄えていた.そこでは現在でも溶解採鉱で採塩を続ける一方,その昔岩塩を採掘していた遺跡の発掘調査が行われており,数々の出土品が収集され,また岩塩採掘の現場も発見されている.
 以来3000年の製塩史をもつヨーロッパは現在でも世界最大の塩生産地であり,日本で行われているイオン交換膜製塩法を除き,あらゆる製塩法が行われている.1992年春に開催予定の7回国際塩シンポジウム準備のためヨーロッパの塩生産団体,製塩企業の人々と打ち合わせる枚会があり,その際に工場,採塩場を見学し,またそれ以前にも食用塩の国際規格制定に向けて国際会議に出席した機会に見学した製塩場も含めてヨーロッパの塩事情をまとめた.

2.塩 専 売 制 度

 生活の必需品である塩は昔から権力者,国家の支配下にある統制物資として徴税手段の対象品となった歴史があり,フランスでは悪評高き塩税としてフランス革命が起こる原因の一つにもなったといわれている.塩税は今でもドイツに残っており,食用塩には1トン当り120ドイツマルクの塩税がかけられている.したがって,工業用塩の購入にあたっては,食用にできないようにたとえば色素といった添加物を加えて変性した製品を購入するか,購入許可書が必要である.
 塩専売制はかつては多くの国々で行われていたが,時代の流れとともにしだいに少なくなり,現在ではスイスとトルコだけである.トルコはたばこ,塩,アルコールを専売としてGeneral Directorate of Tobacco Products, Salt and Alcohol Enterprisesが事業を行っている.イタリアは1974年に塩専売制を廃止したが,イタリア政府の専売局(Administrazione Autonoma dei Monopoli di Stato)は残っており,天日塩,せんごう塩の生産,販売を行っている.オーストリアの塩専売制は1978年まで続いたが,1979年に国が100%の株主であるÖsterreichische Salinenが株式会社の形態をとって事業を行うようになった.販売価格は法律で定められており,国内一律で製造会社は1社だけの独占企業で独立採算制を採っており,専売制という名はつけられていないものの国家管理されている.

3.塩 の 生 産

 3.1 塩の生産地
 ヨーロッパの塩生産拠点を図-1に,地名,製塩会社を表-1に示す1).図-1からノルウェー,スウェーデン,フィンランド,ハンガリー,ブルガリアには塩の生産拠点はないことがわかる.ヨーロッパには多くの岩塩鉱があり,乾式採鉱とともに溶解採鉱も行われ,そのかん水を原料としたせんごう工場も数多くある.地中海沿岸には多くの天日塩田があり,岩塩を溶解採鉱したかん水を天日蒸発させて天日塩を生産している塩田もある.
      


 3.2 生 産 量
  1988年の塩生産量を表-2に示す2).ヨーロッパは世界の塩生産量の37%を占めており,表-1に示すように大小さまざまの製塩会社が多数ある.一部( )書で製塩設備の生産能力を示した.


 3.3 生 産 方 式
 ヨーロッパで行われている塩の生産方式は多種多様で規模の小さい旧式なものから大規模で近代的なものまである.
 3.3.1岩 塩 採 鉱
 岩塩を採鉱するには乾式と湿式がある.乾式は岩塩そのものを岩塩層から切り出す方法であり,湿式採鉱法は水で岩塩を溶かし出して採鉱する方法である.溶解採鉱法とも呼ばれ,経済的に採鉱でき,かん水の輸送も配管で容易にできるため,最近ではこの方法による場合が多い.かん水は主として自家用の化学工業用原料として大量に使用されている.岩塩の品質は産地によってさまざまに異なり,採鉱された純度の低い岩塩は融氷雪用として使用され,純度の高い岩塩はソーダ工業用の原料として使用される.非常に純度の高い無色透明な岩塩は食用としても使用される.岩塩としては純度が低くても溶解採鉱したかん水を精製し,せんごうによる再結晶で純度を向上してソーダ工業用塩や食用塩にする.
 3.3.1.1 乾 式 採 鉱
1Deutsche Solvay-WerkeBorth鉱山
 近代的な設備を誇るDeutsche Solvay-WerkeBorth岩塩鉱はデュッセルドルフの北約80km,オランダとの国境に近いところにある.そこでは図-2に示す方法で年間400万トンの岩塩を掘出している.まず18 m2の掘削面積をもつ巨大な掘削機で底部に導坑を掘削し,次に高さ7 m×幅15 mまで穿孔と発破により空洞を拡張し,さらに幅を24 mまで広げる.穿孔は電動ドリルで14 mまで行われ,そこへ爆薬を詰めて発破をかける.このたびごとに数千トンの岩塩が切り出される.この後高さを16 mまで発破で広げ,天井を形成するためにさらに2 mの塩層を弱い発破で落とし,高さ18 mとして安全性を確保するため天井に2 mぐらいの鉄筋を埋め込む.発破で崩された岩塩は35トン積みバケット運搬車で粉砕機まで運ばれ,粉砕されてベルト・コンベアーでホイストまで運ばれ740 m上の地上に運び出される.

    

 掘削される
1区画は幅24 m×高さ18 m×長さ600 mで,これをルームと呼び,岩塩層を支える柱(ピラー)を残し図-3のように掘削されていく.地下には枚器の組み立て,保守工場があり,地下で使用される巨大な掘削機,運搬機器は地上で分解されホイストで地下に下ろしてからふたたび組み立てられる.図-4に見える塔には岩塩を運び上げるホイストが納められており,その右の煙突の横にある塔は作業員,資材を出し入れするエレベーターである.
   

   

               図-4 ボース岩塩鉱山


 3.3.1.2 溶 解 採 鉱
1Österreichische SalinenHallstatt鉱山ザルツブルグの南東50 km,アルプス山中の美しいハルシュタット湖のほとりにこの鉱山はある.ここでは3,000年前に青銅製や鉄製の道具を使い,たいまつの光を頼りに岩塩を採取していた現場が図-5のように見られる.ハート型に溝を掘って岩塩を切り出していたようすで,壁,天井のいたるところにハート型の跡がある.この現場が発見されるまでは空洞の途中まで水が溜まっていたため,その部分は鉄の色で赤茶気ている.現在ではこの鉱山は図-6に示すような方法で溶解採鉱が行われており,得られたかん水は40 km離れたEbenseeのせんごう工場まで配管で送られている.ここの溶解採鉱法ほ地下の鉱内で行われており,一般的に行われている二重管挿入溶解採鉱法も採用されているが,多くは独自の標準採鉱法,深層採鉱法が採られている.高い山の上にあり自然にかん水を落下させることができるためであろう.

     

  図-5 ハルシュタット岩塩鉱山の3000年前の岩塩採掘現場

     

2Deutsche Solvay-WerkeEpe溶解採鉱場

 Borthから北東へ約70 km離れたEpeDeutsche Solvay-Werke社は溶解採鉱を行っており,塩として年産500万トンを溶解抽出している.このかん水は直径700 mmの配管で73 km離れたRheinbergの化学工場や途中分岐して32 km離れたMarl,さらには300 km離れたベルギーのSambleまで送られる.
 溶解採鉱の方法を図-7に示す.三重管を岩塩層に差し込み,中間の管に水を入れ,塩が溶解して重くなり下に沈んだかん水を内側の管から抜き出す.不溶解物は底に沈澱して残る.いちばん外側の管からは油を入れて天井の岩塩層との間に遮断層を作り,天井が溶け出して崩れないようにすると同時に横方向への溶解を進める役割を果たす.油層を抜けば溶解は上部へも進む.超音波発信機で空洞の大きさを測定しながら溶解を進めていく.
 溶解が終了した空洞は天然ガス,原油,石油製品の貯蔵庫として利用されている.

      

 3.3.2 天 日 製 塩
 地中海沿岸には図-1に示すように多くの塩田が散在している.規模の小さいものが大半であるが,中には100万トン/年の生産能力をもつ機械化された近代的な塩田もある.それはCSMEGiraud塩田で10,000 haの面積をもち,そのうちの770 haが結晶池である.815 cmの塩層を形成し,年2回収穫する.
1Nueva Compania Arrendateria de las Salinas de TorreviejaTorrevieja塩田
 スペインのマドリッドの南東約400 kmの地中海に面したTorreviejaにある塩田も120万トン/年の能力をもっている.1400 haTorrevieja湖が結晶池である.原料としては海水のほかに隣接している700 haLa Mata湖で濃縮された海水と54 km内陸にあるPinosoから溶解採鉱されたかん水を直径45 cmの配管で供給している.このようにかん水供給に特徴があるため,通常の海水濃縮で析出してくるきょう雑物が少なく,品質の高い塩が得られている.結晶他の底はかたい塩の層になっているがその上に薄い粘土層があり,その上に塩を析出させ塩層が5 cm以上になると収穫を始める.塩の収穫は通常の塩田のようににがりを排出して採塩する方式ではなく,水深0.7 mの浅い湖に図-8に示す採塩船を浮べてスクレーパー付き掻き取り棟で採塩する珍しい方式である.収穫された塩は写真に見えるホッパー部から底が浅く平たい3.5トン積みのハシケに積まれ,曳舟で10隻ぐらいつないで湖中央まで敷設されているベルト・コンベアーのところに運ばれる.そこでハシケごとひっくり返して塩をベルト・コンベアーに移しかえる.塩は必要に応じてかん水,海水,淡水で洗浄し,粉砕,乾燥されて製品となる.このような特殊事情からこの塩田は機械化されているとはいえ,装置規模が小さく前近代的な感じはまぬがれない.

     

                     図-8 トレビエハ塩田の採塩船

   

             図-9 トレビエハ塩田の塩運搬船

   

 3.3.3 せ ん ご う 製 塩
 ヨーロッパのせんごうは溶解採鉱で得られた飽和に近いかん水を原料としており,真空式,蒸気加圧式,その両方の組合せ,あるいは旧式の平釜式といったようにいろいろな方法で製造されている.
 3.3.3.1  真空式せんごう工場
1Akzo Salt and Basic ChemicalsHengelo工場
 オランダにおける国内製塩の歴史は1886年にオランダの東部で飲料用地下水の探査中に岩塩鉱が発見されたことに始まる.当時ドイツから岩塩を輸入し再製していたが,第一次世界大戦の影響で輸入量が激減し,大戦後の1918年に初めて平釜で生産を始めた.1926年には真空式製塩法を採用し,今日まで規模の拡大を図ってきた.Akzo社は世界長大の製塩会社で年間1,500万トンの塩を生産し,世界数カ国に生産拠点を持っている.アムステルダムから東へ140 km,ドイツとの国境に近いHengeloの地で製塩を始めたのは1937年で,このとき運河も開通し北欧諸国までも船で塩を輸送できるようになった.1970年には設備を更新し同社長大の工場となった.その生産規模は日本の工場より1桁大きい年間200万トンである.この工場のフローシートを図-11に示す.4重効用と5重効用の2系列の真空蒸発装置をもち,それぞれ130万トンと70万トンの合計200万トンを1工場で生産している.缶体は2 mmのモネルを内張しており,耐久性をもたせている.地下400 mにある厚さ50 mの塩層から溶解採鉱したかん水を煮つめて製塩している.かん水の精製は図-12に示すとおりで,ボイラーの排ガス中の炭酸ガスを利用して脱カルシウムを行っている.製造した塩はサイロ(700トン×4),散塩倉庫(4万トン)に,あるいは包装されて倉庫に貯蔵される.同所にある電解工場で使用されたり,専用貨車でロッテルダムの工場まで運ばれる.サイロの散塩は図-13に示すようにタンク車で運ばれる.図-14は工場の一部で,電解工場,ボイラー建屋,いちばん右にせんごう工場がある.     

     

         図-13 塩運送用タンク車、サイロの下で積み込み中

     

                       図-14 ヘンゲロ工場

2Norddeutsche SalinenStade工場3)
 この会社は西ドイツのスターデにあるAkzo社の子会社であり,最近Akzo Salz und Grundchemie GmbHと社名を変更した.ここでは地下1,500 mから溶解採鉱したかん水を原料として,2系列の4重効用缶で40万トンの塩を生産している.この工場には動力源がなく2 km離れた近くの原子力発電所からパイプで蒸気を購入している.排気ガスによる果樹園への公害防止からこの措置が採られている.エルベ河に通じる運河沿いに立地しており,船で北欧諸国に塩を輸出しているが,日本にも金属ソーダ用の原料塩として高純度の塩が輸入されている.
 3.3.3.2 蒸 気 加 圧 式
1Österreichische SalinenEbensee工場
 電力費が安いところでは蒸気加圧式せんごう法が採用されている.たとえばフランスのCSME社は加圧式と真空式を組み合わせて60万トンの塩を生産している.Österreichische Salinen社は蒸気加圧式だけで50万トンの塩を生産している.1979年に民営化されたときEbensee工場が新設され操業を開始した.操業11年目に見た工場は非常によく整備されており,製塩工場につきものの鉄錆び,微粉塩とほこりが見られず清潔で新設同様の印象を受けた.図-16の正面建屋内に蒸発缶がある.入口には古い蒸気加圧タービンが展示されていた.ハルシュタットからのかん水を原料として製塩している同工場のフローシートを図-17に示す.蒸発缶は2基あり,このほかに熱回収を兼ね母液濃縮用に小さな真空蒸発缶がある.図に記載されている比エネルギー消費量500 kJ/kg NaCl120 Mcal/t NaClに当たり,飽和かん水を煮詰めていることにもよるが,わが国のエネルギー消費量の1/10以下である.

      

                         図-15 スターデ工場

      

                        図-16 エベンゼー工場

      

 3.3.3.3 平 釜 式
1Österreicbische SalinenHallain工場
 平釜によるせんごう塩はエネルギー費がかさみ,生産性も悪いが結晶形に特徴があり,小規模ながら現在でも製造されている.たとえばイギリスのMaldon Crystal Salt社は年間200トンを生産している.
 Österreichische Salinen社のHallain工場はザルツブルグのすぐ近くにあり,1859年から平釜によるせんごう塩の製造を始めたが,エネルギー費,生産性の面から1955年代には蒸気加圧式に変わった.絵で見る平釜が人に比べ非常に大きなものであるので一度見たいと思っていたが,たまたま見る機会が巡って来た.Hallain工場はすでに述べたように現在でほ平釜製塩は行っていないが設備は残っていた.図-18に示すように面積が200 m2ある大きな釜で,深さは50 cmもあろうかと思われた.塩を運びやすいように円錐柱に固める容器も残っていた.この工場は昨年まで蒸気加圧式で7万トンの塩を作っていたが,訪れたときはその設備を解体中であった.

       

                        図-18 ハライン工場の平釜

 3.4 生産工業会組織
 ヨーロッパでは1957年にヨーロッパ塩研究委員会(European Committee for the Study of Salt)を設立し,業界の情報交換,意見交換の勉強会,親睦を行っている.情報収集提供活動をする機関としてドキュメント・センターを付属させており,年会費7,500フランス・フラン(1990)で情報のタイトル・サービスを行っており,そのなかの必要な情報は複写サービスで入手できるようになっている.現在の加入国はベルギー,旧西ドイツ,デンマーク,スペイン,フランス,イギリス,オランダ,イタリア,オーストリア,ポルトガル,スイス,トルコの13カ国である.
 また,各国内でもそれぞれ工業会組織をもっており,たとえばフランスではフランス製塩委員会(The Comite des Salines de France)をドイツではドイツ塩工業会(Verein Deutscbe Salzindustrie eV)イギリスではイギリス塩工業会(British Salt Manufacturer’s Association)をもっている.

4.塩 の 品 質

 4.1 純  度
 工業用に使われる塩の品質は純度が高い.ソーダ電解工業でもイオン交換膜法が導入されているところではとくに高純度が要求され,生産者もそれに応えるための研究を続けている.
 食用で一般家庭用に販売されている製品は一般的に純度は高い.ヨーロッパでも自然塩指向はあり,天日塩を洗浄,粉砕した製品がかなり出回っている.しかし,そのような製品でも純度は高く,乾燥されてさらさらした塩が多い.また,ドイツでは岩塩を粉砕した製品もある.これまでヨーロッパに行ったとき,店で目につきしだい買い求めた家庭用塩175点の塩の品質を整理すると表-3のようになる.64%の塩が純度99%以上であり,96%の塩が純度95%以上であった4)
 冬期融氷雪用に道路に散布する塩は一般的に品質の悪い岩塩が多いが,オーストリアのようにせんごう塩を散布するところもある.

   

 4.2 形   状
 塩の形状は日本で市販されているものと大部分同じであるが,ほかにも14面体の塩(Österreichische Salinen)や樹枝状塩(ICI)がある.
 4.3 添 加 物
 4.3.1  団結防止剤,流動化剤
 塩の固結は世界的にも問題となっており,添加物としていちばん多いのは固結防止剤,流動化剤である.固結防止剤としてはフェロシアン化ソーダ,カリが使われている.流動化剤としては炭酸マグネシウム,炭酸カルシウムが使われている.
 4.3.2 栄 養 強 化 剤
 塩は毎日必ず食べるものであり,しかも摂取量が比較的一定していることから,通常の食生活で不足しがちな栄養素で微量ですむものは塩に混ぜて摂らせる方法がある.たとえばフランスでは1952年より甲状腺腫予防用にヨード(NaIとして15 ppm)を添加した塩が多く使われている.日本では海草の摂取によってヨードを補給しているのでヨード添加塩はない.また,歯のカリエス予防としてスイス,ハンガリー,スペインにフッ素を添加した塩があり,スイスでの長年の使用実績を見て,最近(1985)ではフランスもフッ化物イオンで 250 ppmKF添加塩の販売に踏切り,年間6万トン生産されているという5)

5.消 費 と 用 途

 ヨーロッパ各国の見掛けの塩消費量を表-4に示す6).生産量と輸入量を加えた数値から輸出量を差し引いた値である.旧西ドイツ,フランス,イギリスが大消費国である.これを用途別に5年間の推移で表-5に示した6).その年の気候の変動によって大きく変わる道路融氷雪以外はほぼ安定した推移を示している.ソーダ工業関係が消費量の大半を占め,西ヨーロッパでは約70%,東ヨーロッパでは80%弱を示している.塩素,か性ソーダとソーダ灰の塩消費量は西ヨーロッパと東ヨーロッパではようすが異なり,西ヨーロッパではソーダ灰用が少なく,東ヨーロッパでは逆に多い.

     

6.輸  出  入

 表-4で多くの国々が塩の輸出入を行っていることがわかる.それをもう少し詳細に輸出入国先がわかるように表-6に示した7).主としてヨーロッパ諸国間で取り引きされていることがわかる.

   

7.お わ り に

 ヨーロッパの塩事情について概説し,一部製塩場についても述べた.1992年のEC統合に向けて塩事業に不安と期待をもっている国や企業がある.たとえばドイツの塩税問題,オーストリアの独占形態などである.近い将来ヨーロッパの塩事情に大きな変化が生ずるように思われる.

文     献

1)  Saltin Europe, PNEU MICHELIN, Paris (1990)

2)  D.S. Kostick,Salt Minerals Yearbook 1988U.S. Department of the Interior,

  Washington, D.C. (1988)

3)  村上正祥, 海水誌, 32, 258 (1979)

4)  世界の塩Ⅱ,日本たばこ産業㈱塩専売事業本部 (1990)

5)  B. Moinier, Cah. Nutr. Diet., ⅩⅩⅤ(4), 273 (1990)

6)  The Economics of Salt, 6th Ed., Roskill Information Services Ltd., London (1989)

7)  Minerals Yearbook 1987,U.S. Department of the Interior, Washington, D.C. (1987)

(平成3610日受理 Received Jun. 10, 1991)

注:原著はカラー写真ではありません。