日本海水学会誌 第54巻 第1号 45-53 (2000)

講座

塩と健康(2)

減塩に降圧効果はあるのか?

また減塩は可能であり,危険性はないか?

Salt and Health (2)

Does Salt Restriction Have Any Antihypertensive Effects?

And Can Everyone Restrict Salt Intake without Deleterious Risks?

 

橋 本 壽 夫

Toshio HASHIMOTO

()ソルト・サイエンス研究財団

The Salt Science Research Foundation

(106-0032)港区六本木7-15-14 塩業ビル3F)

 

1.は じ め に

 塩と高血圧の問題から非薬物治療法の一つとして,さらには予防法の観点から国民全員が減塩すべきである,とする保健政策が勧められている.そこでは減塩は誰にでも降圧効果があり,減塩は可能で,それによる危険性はなく,減塩すればするほど血圧低下効果は大きいように思われている,が本当であろうか?
 人間の塩味に対する噂好は非常に強く,これまでのところ,それほど減塩は進んでいない.毎年,厚生省が発表する国民栄養調査による食塩摂取量の数値がそれを表している.それであるからこそ減塩思想は強く,味付けの変化で薄味に慣れることにより減塩は可能であるとして,慣れるまでの食事の不味さ,食生活の不快さには日をふさいで,恐怖感をてこにひたすら辛抱を押しつけているように思われる.このようなことから塩味を美味しく味わいながらも心の底では後悔する食生活をしている人々が多いのではなかろうか.
 それはともかく,先ずは,必要摂取量から目標摂取量を考え,減塩の効果を調べるためにいろいろな介入試験が行われてきたことを紹介し,それらの結果から減塩が可能であるかどうかを考察する.
 次ぎに,減塩運動が始まった当時には,減塩に対する危険性はないと考えられていたが,最近ではそうでもなく,いろいろと減塩の危険性を指摘する論文が発表されだした.それを考慮していると思われるが,食塩摂取量の目標値を定めている日本人の栄養所要量答申の中でも減塩に対する考え方が少し緩和され,注意すべきことも具体的に述べられるようになってきた.

2.食塩の必要摂取量

 生命を維持するために食塩は必須のミネラルである.その必要摂取量については疫学調査の結果1)から一日当たり1 g以下と見なされている.ブラジルの僻地に住むヤノマモ・インディアンは塩を食べると言う習慣がなく,食べ物の中に自然に入っているナトリウムだけを摂取して生活しているからである(無塩文化と言われている).この種族には高血圧症がなく,加齢による血圧上昇もない.しかし,寿命は短く,大量の電解質を失う怪我や下痢,発熱による発汗には抵抗力がない.
 日本人の栄養所要量では,食塩の必要摂取量は不可避損失量という言葉で1.5 g/日とされている2)

3.食塩摂取量の変遷と目標値の設定

 食塩摂取量と高血圧発症率との関係は1のように推定されている3).摂取量が少なければ高血圧発症率も小さくなることは確かであるが,インターソルトの調査1)でも明らかなように,文明社会の食生活では6-14 g/dの食塩摂取量になり,無塩文化の社会を含めた全体では食塩摂取量の上昇に伴って高血圧発症率が上昇するように措かれている.しかし,4ヶ所の無塩文化社会を除外した文明社会では,高血圧発症率は食塩摂取量と無関係になる.

    

 食塩摂取量が高いほど高血圧発症率が高いというダールの疫学調査結果4)から,食塩が高血圧の原因であるとして食塩摂取量に関心が集まり,アメリカでは食品に添加された食塩からの摂取量を一日当たり5 gと決めた.食べ物に自然に含まれているナトリウムが食塩換算で3 g程度含まれているので,これを合わせると1日当たり8 g程度の摂取量となることで1979年の議会で承認された引.日本では食塩摂取に関する特別な食習慣があることから,いきなりアメリカ並にも出来ないので,当面の努力目標として1日当たり10 gを目標値として1979年に定めた.
 2は厚生省が毎年発表している食塩摂取量の変遷を示したものである.このデータは11月の日曜祭日を除く連続した3日間に食べた物と量のアンケート調査を行い,食品成分表から食べた物の中のナトリウム量を集計して,その値を2.54倍して食塩に換算している.食塩摂取量は11.7 gまで次第に下ったが,それを最低値としてその後次第に上がり始め,現在では13 g程度である.減塩政策が勧められているが,減塩食は美味しくない.世界一の長寿国である日本では減塩には馴染めないのかもしれない.しかし,21世紀に向けた国民の健康づくりの指標として,厚生省は新たな「健康日本21」計画を立てている.その中で高血圧,脳卒中,虚血性心疾患,胃癌の予防から食塩摂取量を目標値の10 g以下に下げることを一層進めようとしている.

    

4.減塩の効果

 減塩の効果については前に降圧効果について紹介6)したが,もう少し詳しくいろいろな面から減塩の効果について調べてみた.

 4.1 高血圧症,脳血管疾患における減塩の効果

 毎年行われる国民栄養調査の中で,日本で一番食塩摂取量の多い地区と少ない地区について食塩摂取量と脳血管疾患,高血圧の死亡率との関係を3に示した7).これらの死亡率の低下を減塩運動の成果のように言う人もいるが,図3の結果から決してそのようには言えないことが解る.つまり死亡率の低下は減塩運動が始まる前から起こっており,減塩の傾向に関係なくほぼ同じ勾配で低下し続けている.これらの死亡率低下は,戦後20年が経過し,食生活も豊になり,医療技術も進歩してきた結果によるものであると筆者は考えている8)

    

 人口動態統計調査から死亡率の低下が著しい脳血管疾患について食塩摂取量との関係を4に示す.脳血管疾患の内訳として脳梗塞以下の疾患があるが,食塩摂取量と脳血管疾患死亡率との関係に大きく寄与しているのは脳梗塞であり,脳出血の寄与はわずかであることが解る.
    
 しかし,死亡診断書による人口動態統計調査よりも精度が高いと考えられる患者調査があり,そのデータから脳血管疾患の入院患者や外来患者について食塩摂取量との関係を見ると5のようになり,脳血管疾患と食塩摂取量は関係ないことが解る.もちろん高血圧症についても関係はない8)

    

 結局,これらのことから食塩摂取量は高血圧症や脳血管疾患には関係ないといえる.しかし,先にも書いたように厚生省は「健康日本21」の中で減塩と運動を進めれば脳卒中の羅患率が下がると考えているが,患者調査の中で脳卒中の羅患率は発表されていないのでデータ整理ができない.

 4.2 集団社会の減塩効果

 日本における食塩摂取量の実態から,死亡率と疾患率について食塩摂取量との関係を整理して,食塩摂取量は関係ないことを述べた.しかし,集団社会で減塩の介入試験を行ったときには,減塩でどのような血圧低下効果が現れるのであろうか.ここに二つの事例を紹介する.
 一つ目はスタッセンらがベルギーの東北部にある二つの町で行った5年間にわたる介入試験である9)50 km離れた人口統計的,社会経済的に塀似した住民9千人の町を対照区として住民12千人の町を介入区にして,ポスター,ステッカー,リーフレットなどのマスメディアを使い,過剰な食塩摂取量から来る健康障害を知らせるようにした.リーフレットには減塩のために@食卓に塩振りかけ器を置かない,A家庭で調理するとき,塩を使わない,B塩が加えられていない食品を購入する,と言ったことが説明されていた.また,地方のラジオ局からンタビューやメッセージが放送され,地方の新聞にも掲載された.もともと食塩摂取量は比較的少なく.男子で11 g/日弱.女子で約8 g/日であったが,介入の結果,女子で平均1.5 g/日,男子で0.7 g/日の低下であった.血圧は有意には低下しなかった.結局.マスメディア法による介入試験では減塩を達成することは困難であると報告している.
 二つ目はフォルテらがポルトガルの農村で行った2年間の介入試験である10).二つの農村は約90 km離れており,成人人口が約8百人で.いずれも食塩摂取量が多く,約21 g/日で住民の30%が高血圧であることから関心が高く,村の指導者との対話が良好な農村の方を介入区とした.減塩指導は@調理に使用する塩を減らす,A塩漬けタラとソーセージの摂取量を減らす,Bパン作りに使う塩を減らす,ことであった.試験チームは定期的に介入区の農村に行き,集会で話し,家庭を訪問して主婦と話し,主婦の小グループで減塩調理の指導を行った.農村の指導者,医師,看護婦は減塩を強く支持した.その結果,2年後には食塩摂取量は12 g/日となり,血圧についても有意に低下し,介入が高度に有意な結果をもたらした.
 このように集団社会における減塩指導の効果が違って現れているのは,その社会の減塩に対する関心の持ち方,指導者の熱意,普段の食塩摂取量の高さによるためと思われる.

 4.3 高血圧者の減塩効果

 一般的に集団全体で見ると減塩効果はないといえるが,高血圧者についてはどうであろうか.ケンプナーは高血圧の治療で重症高血圧者にライスダイエット食(減塩食であるが減塩を意識しなかった)を与え,治療効果を報告した11)

 軽症高血圧者の場合については.減塩で収縮期血圧に対する効果はあったが拡張期血圧に対する有意な効果はなかったり12),老人ではいずれの血圧も下げる13)と報告され,高血圧着では,いずれも効果はあるが逆の効果もでることがあった14)

 ミッドグレイらはコンピューターで文献調査し,ランダム化されたコントロールのある報告のメタアナリシスを行った結果を発表している蛸.それによると高血圧老1131人に及ぶ28件の試験で.減塩の平均値は95 mmol/(71-119 mmol/)であり,ナトリウム排泄量低下100 mmol/日当たりの血圧低下は収縮期血圧で3.7 mmHg(2.35-5.05 mmHg)(p<0.001),拡張期血圧で0.9 mmHg(-0.13-1.85 mmHg)(p0.09)であった.血圧低下は老人で大きいので,老人の高血圧者については減塩を勧めても良いとしている.
 同じようにコンピューターによるメッドライン検索で1966年から1997年末までを調べたダラウダルらは反対に,58件の報告から平均のナトリウム低減118 mmol/日の影響は収縮期血圧で3.9 mmHg,拡張期血圧で1.9 mmHgの低下であり,この結果は一般的な減塩勧告を支持しないと述べている16)

 4.4 正常血圧者の減塩効果

 高血圧予防の観点から減塩が勧められているが,正常血圧者についての減塩効果についてもいくつかの報告がある.
 ミラーらは82(男子36人,女子46)の正常血圧者に12週間にわたって食塩摂取量を9.2 gから4.0 gに減塩した結果を発表した17).その結果は,平均動脈圧がわずかながら有意に低下した.年齢を40歳以上と以下に分けると,血圧が低下する可能性は40歳以上の人々の方が大きく,40歳以下の人々では集団としての血圧変化はなかったとしている.しかし,各個人を個別に見ると6に示すように血圧が下がる人もいれば,逆に上がる人もいることがわかる.右端の数字は人数を表している.このような減塩に対する血圧応答の現れ方は子供の場合でも同じである18)

    

 つまり減塩に対する血圧応答は7に示すように正規分布を示す19).それは正常血圧着でも高血圧着でも同じである.先に述べたミッドグレイらの報告15)には正常血圧者についても調査されている.それによると,正常血圧者2374人に及ぶ28件の試験で,減塩の平均値は125 mmol/(95-156 mmol/)であり,ナトリウム排泄量低下100 mmol/日当たりの血圧低下は収縮期血圧で1.0 mmHg(0.5-1.56 mmHg)(p<0.001),拡張期血圧で0.1 mmHg(-0.32-0.51 mmHg)(p0.64)であった.このように正常血圧着では減塩による血圧低下は有意ではなく,正常血圧老にまで一律に減塩を勧めるべきでないとしている.

    

 グラウダルらの56件の報告からも,平均のナトリウム低減160 mmol/日の影響は収縮期血圧で1.2 mmHg,拡張期血圧で0.26 mmHgの低下であり,減塩勧告は支持されないことが述べられている16)
 反対にクマニーカらは高血圧予防のために4.6 g/日の減塩試験を行って18ヶ月後には平均して2.6 g/目しか減塩できなかったが,6 g/日の減塩に換算すると収縮期血圧で-1.4 mmHg,拡張期血圧で-0.9 mmHgの血圧低下になるので.高血圧予防戦略として減塩は有効であるとしている20)
 以上,いろいろな事例で血圧低下に及ぼす減塩の効果を紹介した.減塩は健康を大きく改善するかもしれないが,現時点では減塩を勧める確かな証拠がない,とスエールスは1980年代半ばに述べていたが21),その後の研究で新たな事実が分かってきた10年後の1990年代半ばには,高血圧患者では小さいけれども確かに血圧低下効果はあるが.正常血圧着ではごく小さいので集団の血圧を下げるための減塩を疑問視している22)
 最近,アメリカで行われている国民保健栄養調査(NHANES I1971-75)のデータを整理して食塩摂取量と疾患死亡率との関係が発表された.それによると,食塩摂取量はすべての死因死亡率と心臓血管疾患死亡率に逆相関しており.このことは減塩政策を支 持しないと述べている23).この調査はVまであり,これからUとVのデータが整理され発表されると思われるが,同じような結果が出れば,アメリカで勧められている減塩政策に大きな影響を与えるものと思われる.

5.減 塩 の 可 能 性

 これまでに日本やベルギーにおける減塩の難しさを述べたが,もう少し対象者を特定した場合の報告を紹介する.
 重症の高血圧者はとにかく良いと言われることは何でも試みる姿勢を持つので,減塩に対しても努力するであろう.ワインバーガーらは高血圧治療の補助手段として中等度の減塩(80 mEq/)が可能であるどうかについて外来患者114名で実験した.被験者の47%が6週間目に,33%が18週間目に,30%が30週間目に目標値を達成し,体重と血圧が有意に低下したことを報告している24.しかし,減塩を実行することの難しさも述べており,もっと実行しやすい患者指導法の開発が必要であるとしている25
 次ぎに軽症の高血圧老や正常血圧者についてはどうであろうか.アリらは軽症高血圧者について長期間の低ナトリウム食を続けさせる可能性について報告している.彼等は77人の軽症高血圧老の中から半数をラソダムに選び,23の簡単な食事教育をして,12ヶ月間,追跡調査した.その間4回の診察を行い56人が試験を終了した.その内の26人が低ナトリウム食を食べた人々であった.試験期間中のナトリウム排泄量の平均値は低ナトリウム食グループで177.0±32.9 mEq/日,通常ナトリウム食グループ169.3±49.4 mEq/日でオーバーラップした.しかし.収縮期血圧と拡張期血圧のそれぞれの平均値は低ナトリウム食グループで有意に低かった.彼等は,実行する上で簡単な食事教育で軽症高血圧老のナトリウム摂取量を低下させることは不可能であると.結論付けた26)
 減塩の可能性については,よはどの危機感と決意を持って臨み,それに目に見えるような効果が現れなければ続かないのではなかろうか.

6.減 塩 の 危 険 性

 減塩には一般的に危険性はないと考えられて減塩運動が勧められてきた.必要量と考えられる1 gに比べて10倍以上もの摂取量であれば,少々減らしてもそのためにどこかが悪くなるはずがないと考えたのであろう.
 しかし,減塩のために食事が不味くなり食欲がわかず,必要な栄養分を十分に取れなくなるのではないか,ということは十分考えられることであるが,それにもまして減塩で血圧が下がると思っているの
に,
図7に示すように逆に上がってしまうことがある.しかもそれらの比率は同じくらいである.減塩による血圧変化は正規分布で現れてくるからである.
 アルダーマンは,中等度(4-6 g)の減塩に対して軽症高血圧者の25%位で血圧を下げるだけで.逆に,115%位の患者の血圧を上げ,2)睡眠を妨げ,3)他の栄養素の摂取量を下げ,4)下痢.高熱,出血などの障害に対して抵抗力が下がるとして,すべての高血圧患者に無差別にナトリウム摂取量を下げるように勧告するには根拠に乏しいし27)心筋梗塞の危険性を大きくするとも述べている28).ウェーダーとイーガンは,減塩で総コレステロールと低密度リポタンパク質コレステロールが増加し,心臓血管についてのリスク・ファクターに悪い作用を及ぼすらしいと報告した29).また,血管拡張による血圧低下作用に影響を及ぼすインシュリン抵抗性を悪くする30)との報告もある一方で,短期中等度の減塩では正常血圧者のインシュリン感受性やアテロームを発生させる脂質に悪い影響を及ぼさない31)とか,長期中程度の減塩は血清HDL/総コレステロール比に悪い影響を及ぼさない32)という報告もある.1 g/日程度の極端な減塩では血漿脂質に悪影響を与え33),食塩感受性や食塩抵抗性の正常血圧成人で血清脂質やインシュリンを増加させる34)
 グラウダルらは減塩でレニン濃度は3.6倍に増加し,アルドステロソ濃度は3.2倍に増加し,ノルアドレナリン,コレステロール,低密度リポタンパク質コレステロール濃度は増加したが,アドレナリソとトリグリセライドには影響なかったと発表した16)
 減塩で効果のある食塩感受性の人々は成人の30-40%程度であり,前述のことからすべての人々に一律の減塩を勧めるべきではない35)との意見に対して,それは厳しい減塩に対することで,中等度の減塩(70-100 mmol/)まで心臓血管系に何等かの悪い影響を与える,という事実はないので減塩すべきであるとの意見もある36)
 ともかく減塩には危険性がないと仮定されていたが,そうでもないことが解ってきた.しかし,最近出された日本人の栄養所要量の中では,中等度の減塩(6 g/)により有害な影響が出現したという報告はない,として少なくとも減塩で血圧上昇を起こす人々がいることを無視している.また,70歳以上の高齢者に対して減塩指導を行う場合には,生活の質を配慮したものであることが望ましいと善かれており,これまでの論調とは変わってきた2)

7.減 塩 の 懐 疑 論 者

 研究者によって減塩の効果はさまざまに報告されてきた.減塩を勧める論文が多い中で減塩を勧める根拠が不十分で,重症高血圧ではともかく軽症高血圧では効果も不明確であり,逆に有害な事例も考えられることから,減塩に疑問を呈する人々もいた37,38).その後,インターソルトの結果が発表されてから,減塩に対する懐疑論が裏付けられた形となり39),さらに進んで一律に減塩を押しつけるべきでないとする意見が出てきた35).最近ではコンピューターを使い,文献検索により文献を選び出して,多数の報告をメタアナリシスすることにより,どちらかと言えば,血圧低下効果の程度は小さく,減塩による悪影響も報告されるようになってきたので,一律の減塩政策に対する反対が強くなってくると思われる.
 2000年の節目を迎えるに当たり,ルフトは過去1000年の間に問題になってきた塩と高血圧の関係を総括している.「塩をあまり食べないように」と勧告する代わりに(塩という言葉を取って)「あまり食べないように」と短くすべきである,と最後に締めくくっている40)
 身体を動かさないで移動できる便利な社会の中で,食塩摂取量に対して神経質になるよりも自らの足で移動するように心がけることの効果をもっと強調すべきである,と考える.

引 用 文 献

 

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(平成111130日受付 Received Nov. 30, 1999