たばこ産業 塩専売版 1991.02.25
「塩と健康の科学」シリーズ
日本たばこ産業株式会社塩専売事業本部調査役
橋本壽夫
食塩感受性(2)
食塩感受性については以前に一度この欄で書いた(昭和63年6月25日付け本紙参照)。
食塩の摂取量によって血圧が上昇したり、降下したりする体質を持った人たちがおり、このような人たちの数は比較的少なく、大部分が食塩非感受性の人たちであり、そのような人たちに減塩を勧めても血圧の降下はない。ところで、食塩感受性の定義であるが、実のところ、これが定かでない。
共通に認識される定義がまだできていない。
研究者がそれぞれ独自に基準を定めて、研究論文に発表している。ディムスダールらはそれらをまとめて表にしているが、その中からいくつかの例を表に引用した。
表 食塩感受性に関する研究概要
これらの調査の概要は多くの点で共通しているが、規定食の成分、食餌療法の期間、食塩感受性の診断基準等が大きく異なっている。
したがって、当然食塩感受性の比率がかなり変動している。その上、一部の人の血圧は低塩食により上昇すると述べている。
食塩摂取量の影響度が個々人によって異なることが分かり、精密で大規模の疫学調査の結果から、全体的には食塩摂取量と高血圧との関連が弱いことが分かってきたことから、今日では、全体を対象にして減塩を勧める政策の妥当性を問われるようになってきた。
しかし、食塩感受性の基準なり定義が明確にされ、そう多くはないと思われる食塩感受性者の比率(例えば表より高血圧者の50%が食塩感受性者で、高血圧者が20%とすれば、全体の10%が食塩感受性者ということになる)が明らかにされなければ、全体を対象にした減塩政策の推進は止まないであろう。
したがって、一日も早く血液検査等で簡便に食塩感受性の診断ができるようになることが望まれる。
また、さらには予測因子、遺伝子の解明等によって、食塩摂取量の影響が現れない前に自分の体質を知ることができ、減塩による予防法が功を奏するようになるとか、食塩感受性者の減塩による影響度が定量的に把握できるようになることも望まれる。
そのようになれば、大部分の人たちが食塩に対して何の心配もなく楽しい食生活ができる。
|