たばこ塩産業 塩事業版  1999.04.25

塩なんでもQ&A

(財)ソルト・サイエンス研究財団専務理事

橋本壽夫

 

乾燥野菜に塩を付着させる方法

 

私どもの会社では刻んだ野菜に塩を混ぜてニーダーで混合した後、乾燥させて乾燥野菜を製造しておりますが、乾燥させますと溶けている塩が再び析出してきて、それが野菜に付着せず、多くの塩が下の方にかたまって集まります。そのため、その塩を産業廃棄物業者に引き取ってもらっていますが、塩を乾燥野菜にうまく付着させて、塩が分離してこないようにすることはできないでしょうか。                           (食品加工会社 岐阜県)

付着性が高いフレーク塩

 一般的に塩の付着性については、アメリカのさる製塩会社が分かり易くパンフレットの中で説明しています。先ず、それを紹介しましょう。
  付着性は傾斜させた織布パネルの上にある一定の高さから塩を落として、その上にある一定量の塩が残る最大角度を計測します。傾斜角度の大きいほど付着しやすいことを表しています。具体的に塩の結晶形や大きさによって、付着性がどのように変わるかを表−1の物性と図−1で見て下さい。この結果は織布パネルの表面状態によって変わりますので、塩の種類による変化を相対的に理解して頂きたいと思います。

表−1 フレーク塩と通常(立方体)塩の種類と物性
製 品 A B C D E F G H 通常品
粒度(mm) 0.35-0.84 0.35-0.84 0.35-0.50 0.20-0.35 0.20-0.35 0.20-0.30 0.10-0.13 0.05-0.10 0.20-0.35
かさ密度(g/cc) 0.624 0.628 0.645 0.750 0.787 0.853 0.963 0.970 1.228
溶解度(分) 3.6 3.3 2.3 2.1 1.7 1.0 0.5 0.3 9.0
比表面積(ft2/lb) 10.0 17.9 24.7 30 35.6 64.5 125.4 - 34.2
塩製品の種類と付着性

          図−1 製品の種類と付着性 (数字は傾斜角度)

通常、塩の形状は立方体(図表では通常品と表現)です。市場に出回っている塩はほとんどがこの形になっております。特殊な作り方によって、鱗片状のフレーク塩ができます。この塩はかさ密度が図−2に示すように小さいことと、扁平な形であるため付着しやすい(図−1参照)ことが特徴ですが、図−3に示すように溶けやすいこと(ある一定量の塩が完全に溶けるまでの時間が短い)も特徴の一つです。フレーク塩の粒経の大きさによって、それぞれの特徴を表す数値が違うことが、それぞれの図から分かります。したがって、素材に付着させるにはどの塩が最適であるかを試験して決められます。これらの図はある条件の下で実験して得られた結果ですが、相対的な比較で製品間の違いを判断して下さい。日本国内でも、この商品に類似した製品が販売されていますので、塩元売店に聞いてみて下さい。塩製品の種類のかさ密度

         図−2 製品の種類とかさ密度 (単位:g/cc)
塩製品の種類と溶解性

       図−3 製品の種類と溶解性 (数字は分)

溶解性、粒径に留意して

 この質問については、工場見学をさせていただきました。その結果、刻んだ野菜をニーダーに入れ、そこに粒径が0.3-0.4 mmの塩を加えて撹拌混合しますが、手で触ってみますと、混合している間に塩が完全に溶けていないことが分かりました。粒径の大きい立方体の塩であるため溶けにくいものと思われます。したがって、乾燥工程では溶けないで残っている塩が大きく成長する形で再結晶が進み、乾燥した野菜に付着しないで下の方に固まって集ったものと思われます。
 問題を解決するためには次のようなことが考えられます。
 ニーダーで刻み野菜と塩を撹拌混合している間に完全に溶けてしまうように、フレーク塩のような溶けやすい塩(この場合にも適当な粒経を選ぶ必要があります)使うか、立方体の塩でも粒径のもっと細かい塩を使うことです。完全に溶けているかどうかは手で触ってザラザラとした感触が感じられないことで判断すればよいと思います。
 野菜の乾燥工程で塩が再結晶してくると思われますが、完全に溶かすことにより使用する塩の量は少なくなってきますので、立方体の塩が析出してきても細かいままで、多くの塩が下に集まるようなことはなくなると思います。
 また、野菜を乾燥させた後で塩を混合することも考えられます。その場合には、その工程に適した塩を選ぶ必要があります。