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2016.06.01

 

塩と健康に関する情報提供機関 2 WASH

 前に塩と健康に関する情報提供機関としてCASH( Concensus Action on Salt and Health)を紹介した。1996年にイギリスで設立された機関であるが、その機関が国際的に発展させた機関WASH(World Action on Salt and Health)2005年に設立した。それをホームページから紹介する。

 

減塩政策を推進する巨大な組織の使命と目的

 WASHの使命は現在の塩摂取量10-15g/日を世界中で世界保健機関(WHO)が目標としている5g/日まで下げること。この低下により血圧は下がり、心臓血管疾患すなわち、脳卒中、心不全、心臓発作による死亡を大きく減らせる。

 具体的な目的として食品産業に対しては塩が高血圧の主原因である確かな証拠があり、骨粗鬆症や胃癌のような健康に悪い影響を及ぼすことを食品製造者に納得させ、世界中で塩含有量の高い市場製品を調べ、世界的な減塩計画に従うように国際的な食品会社を説得し、製品中の塩含有量を減らさせるだけでなくそれらの製品を各国一律に普及させる。例えば、塩含有量については包装の栄養表示でイギリスの食品標準局が定めた多色栄養表示のように鮮明で総合的な基準を作り国際的に普及させる。

 政府に対しては、過剰な塩摂取量の危険性について科学界からの証拠を世界各国の政府が政策に取り入れるようにさせることと政府や保健関係機関とともに減塩戦略を実行していくことである。

 家庭の調理では、メディア広報や公衆保健運動、例えば、イギリス食品標準局の運動によって調理や食卓で加える塩を減らさせること。

 食品業界が行動すれば、来る10年間で1日当たり平均6gの減塩は容易に達成される。減塩で血圧が下がれば、脳卒中を約24%、心臓発作を18%下げることに他の保健利益も併せて大きな影響を及ぼす。

 

組織構成と日本における活動

 現在95ヶ国から527人の会員が参加している。会長はCASHの会長であるマグレガーが兼務している。日本からは13人が会員として登録されている。

 日本における活動は20089月に次のように紹介された。日本の塩摂取量は10.7gから10年間で初めて最新のデータでは11gに増加してきた。日本人は世界で一番塩好きの国民であると専門家達は警告し、減塩には食品業界の協力が避けられないと指摘している。

 日本高血圧学会は減塩推進に積極的である。減塩を目標にした作業グループを編成し、次のような活動を行ってきた。

  新しい日本高血圧学会ガイドラインを発表し、7g/dから6g/dに推奨許容摂取量を下げた。

  現在、食品製品の栄養表示は任意である。日本高血圧学会は厚生労働省の食品管理部に働きかけ、法的に食品製品中の塩含有量を表示するように要請している。しかし、製品中の塩含有量を食品製造者に法的に義務付けることは現時点ではできないと応えている。製品中の塩含有量を任意に記載するように食品製造者に働きかけてきた。

  2006年末に日本高血圧学会は多くの冊子を書いてきた。例えば、「病院での塩摂取量の測定法」、「高血圧者に減塩を勧める理由」、「1日当たり6gの調理法」である。

 

減塩に対する啓蒙活動

世界の塩周知週間

 世界の多くの国々からの幅広い支援を受けられるように毎年世界の塩周知週間を開催している。世界中のすべての人々に減塩の重要性を認識させるこの重要な週間は2008年から始まった。

 2008年には子供達の減塩に重点を置いた啓蒙活動を行った。2009年には外食、持ち帰り食品、ファーストフード、給食など家庭以外で作られた食品に重点を置いた。2010年には塩と健康に焦点を置いたポスターを制作し、脳卒中や心不全だけでなく、現在の塩摂取量は胃癌、骨粗鬆症、肥満、腎臓結石、腎臓疾患の始まりとの関係を支持する証拠が増えているとも述べている。2011年には女性よりも男性の方が若くして心臓血管疾患で死ぬことが多く、塩摂取量も多いので塩と男性の健康に焦点を置いた。2012年には減塩による脳卒中予防を取り上げている。2013年には家庭では塩摂取量を管理できるが、外食産業の食事では管理できないので、外食産業が作る食事・食品の塩を減らすことを要請している。2014年には食品製品の栄養表示に注意して購入することを勧めている。2015年には子供の頃の食事習慣が成人してからの食事パターンに影響を及ぼすので、「ファーストフードを食べる習慣を止めよう」と塩と子供達に訴えるポスターを作り、塩と子供というテーマを設定している。2016年には「隠れている塩に用心しよう」との見出しで、食べている塩の75%は購入している食品中に隠れていると解説したポスターを7種類製作した。

塩と健康

 塩と健康欄には減塩についての質問に対する答えが多く用意されており、減塩の必要性を説いている。さらに「塩と血圧」、「塩と健康に関するデータ集」、「塩と子供」、「塩と老人」、「塩と人種集団」、「経費節約研究」、「参考文献」の項目が盛り込まれており、それぞれの項目ではさらに詳しい項目が含まれている。例えば、「塩と血圧」では「動物研究」、「疫学研究」、「介入研究」、「集団研究」、「死亡研究」、「治療試験」の項目があり、「塩と健康に関するデータ集」では「血圧」、「脳卒中と心疾患」、「腎臓疾患と腎臓結石」、「肥満」、「骨粗鬆症」、「胃癌」、「水分保持」、「塩と他の疾患」の項目が参考文献付で詳しく述べられている。「参考文献」には176件が掲載されており、ほとんどが原報とリンクされている。それぞれの中には減塩の無効性や危険性についての論文もあり、CASHの引用文献のような偏りはない。

 

減塩法

 この項目では「減塩の仕方」、「減塩レシピ―」、「製品調査」、「モニター」の項目があり、それぞれの項目にはさらに詳しい内容の項目がある。「製品調査」で様々な製品中の塩含有量を国際的に幅広く調査しており、それらを集大成したものと思われるが「モニター」では「セリアル」、「ファーストフード」、「ピザ(スーパーマーケット)」、「ピザ(持ち帰り)」品中の塩含有量に関する膨大なデータが掲載されている。

 

ニュース紹介

 ニュース・センターの項目では2007年から始まってWASHが関連している組織の活動、減塩や減塩政策に関するニュースを紹介している。それらのニュースの他に研究ニュースという項目があり、その中では「児童と青年」、「心臓血管疾患」、「高血圧」、「政策」、「食品製品中の塩含有量と栄養表示」の項目に分けて詳しく述べており、参考になることが多い。