戻る

4.醗酵調整作用

 発酵調整作用という言葉は分り難い。微生物の増殖には至適(最適)の環境がある。塩濃度についても微生物の種類によって増殖に至適濃度がある。好塩性微生物でない限り、一般的には微生物の増殖は塩によって抑えられる。したがって、塩濃度を調整することによって醗酵速度を調整することができる。これは塩がある状態で醗酵させる食品、例えば、味噌、醤油、漬物など、どれにも該当する。
 
 製パンでは必ず塩が使われる。フランスパンのように塩味が感じられるパンは少なく、ほとんどは塩味は感じられない。しかし、塩を使わないとパンとしてイメージできる製品はできない。製パンにおける塩の役割は小麦粉のタンパク質でグルテンを形成させることである。これにより小麦粉を練ったドウに粘りが出てきて、パン酵母菌の増殖により発生した炭酸ガスがドウ内に保持され、加熱によって炭酸ガスが膨張することによりふっくらとしたパンになる。製パンにおける塩の働きはパン酵母の増殖を制御することで、醗酵速度を調整している。