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たばこ塩産業 塩事業版  2005.06.25

塩・話・解・題 3

 

愛・地球博(3/259/25

       塩の展示を見てある記

 

 愛・地球博が325日から925日まで愛知県の長久手と瀬戸会場で開催されている。当初、入場者が少なかったが最近では増加し、訪れた613,14日も大勢の人出でごった返した。ことに月曜日の13日は14万人とかで、入場するまでの長い行列にうんざりした。入場者合計は750万人を突破したとのこと。塩に関する展示があることを知ったので、先ずはそれらを見ることを中心にして回った。専売制度が廃止されたことから塩の売り込み展示もあり、そうでない展示や映像もあった。事前に情報を得ていた国々を紹介しよう。

モンゴル:薄茶色1.5トンの岩塩を展示
 映像のなかったモンゴル館では待つまでもなく入館できた。
 
 この館のテーマは「エコ社会のための開発」。自然と人間の活動がうまく調和されていた時代から、近代化と市場経済への移行に伴い環境破壊が問題となる恐れが出てきたので、従来の生態系を重視して環境に優しい技術を導入して社会を開発していく姿勢を示している。 
  出口に写真1に示す薄く茶色に着色した重さ1.5トンの岩塩を持ち込んで、それを粉砕した製品を天然ミネラルの豊富なマイルドで甘い塩、と言った売り込みで200 g500円で販売していた。訪れた時には女性3人、男性1人で精力的に謳い文句を叫び注意を引くので、多くの観客が立ち止まり、物珍しく岩塩をさわっていた。一瞬の人々の途切れを待ってシャッターを切る。
  このブースが万博会場の中で塩の販売に一番力を入れていた。

モンゴル館に展示されている岩塩

写真1 モンゴル館に展示されている岩塩

クロアチア:床の「塩田」がスクリーンに
 クロアチアはアドリア海を挟んでイタリアの東側にある国で、アドリア海沿岸で天日塩を製造している。
  この館のテーマは「一滴の水:一粒の塩」で、映像を中心としており、入館に20分ほど待たされた。最初の映像室では壁に天日塩田が映し出された。天日塩田の作業は人力で、塩を収穫している様子が印象に残った。
  次の部屋に移ると、そこは写真2に示すように塩田をイメージした広さが15 m×20 m程度の部屋で、歩道になっている板張りの両側には少し灰色がかった粒径が310 mm程度の塩を5トンほど敷き詰めてある。
  入場者がいる場所はせり上がって、塩田をスクリーンとして空撮した風景が映し出され、上から下をのぞき込むようにして見ると言う趣向を懲らした工夫がなされていた。
  出口には天日塩が展示してあり、「食べられません」と書かれていた。

床の塩田がスクリーンとなっているクロアチア館


写真2 床の塩田がスクリーンとなっているクロアチア館

フランス:ルイ・ヴィトン 塩瓦のオブジェ
 フランスでは40分ほど待たなければならないように表示されていたが、25分ほどで入れた。
  このパビリオンのテーマは「人と自然との関係」。映像は人口、食糧、水、公害、ゴミと言った人口増加に伴う様々な問題が提起され、数々の箴言が映し出されたが、「現在の環境は親からもらったものではなく、子供に残すものである。」と言う言葉が強く心に残った。見応えがあり、いろいろと考えさせられた。
 フランス館の中にルイ・ヴィトンが「自然と共生する創造」物として写真3に示す海塩で作った塩瓦の造形物を置いていた。インターネットのサイトには「自然にささげる塩瓦のオブジェ」と説明されており、使った円盤の塩瓦は4200枚。自分で写した写真ではフラッシュの光が届かなく、なかなか綺麗に写せなかった。興味のある方はフランスのサイトで幻想的な写真を見て頂きたい。

4200枚の塩瓦で作られているフランス館の造形物

写真3 4200枚の塩瓦で作られているフランス館の造形物

ヨルダン:死海の泥で美容体験も
 ヨルダンはアラビア半島の左上に位置する国で、イスラエルとの間に死海がある。
  この館のテーマは「沈黙の浮遊」で、琵琶湖の約1.5倍の面積がある死海の浮遊体験ができる。入場者は上から浮遊している人を眺める。
  入館には10分程度待ったであろうか。入り口には写真4に示すマッシュルーム・ソルトが点々と置いてある。死海で析出する塩は天日塩田で析出する塩のように角のある塩ではなく、カリフラワーのように丸くごつごつしており、全体的にはマッシュルームのように丸くボコンボコンと大きな塊となっている状態である。
  この死海の水面は海面より低いことで知られているが、ヨルダン川の水量が減少し、1920年から2000年までに11メートルも水面が低下して消滅の危機にあると言う。
 ミネラルの豊富な死海の水は皮膚病や関節炎に効果があり、泥や塩も健康や美容用に輸出されている。パビリオンの一角では泥による美容体験もできる。
  また、砂漠の砂を使ったサンドアートは人気のコーナー。小瓶の中にいろいろな色の砂を細い漏斗を使って器用に絵を描くように入れ、針金で整えて仕上げていく。例えば、夕焼けに映えた砂漠をラクダが行く風景が見事に画かれる。

ヨルダン館の入り口にあるマッシュルーム・ソルト

写真4 ヨルダン館の入り口にあるマッシュルーム・ソルト

ポーランド:世界遺産がミニチュアで
 このパビリオンのテーマは「素晴らしきものとの出会い」。
  素晴らしきものとは、自然の美しさ、文明と自然の賢明な共存、自然から発想した芸術作品、と言ったことがサイトで紹介されている。ポーランドで生まれたピアノの詩人ショパンの曲を聴きながらポーランドの自然、文化などの映像を見た。そのために20分ほど並んだ。
 映像を見た後はエレベーターで世界遺産となっているビェリチカの岩塩坑へ降りる。岩塩坑の一部がミニチュアで展示されている。もちろん本物の岩塩や彫刻品も展示されているが、プラスチックでそれらしく作って雰囲気を演出しているところもあった。
  ここには昨年11月に訪れ、感激した手記を本紙(2005120日付)ソルト・サイエンス研究財団の機関誌「そるえんす」64号に掲載したので、思い出しながらじっくりと見学した。ガラス張りの床下には黒色や透明な岩塩がいくつか置いてあり、天井には透明な塩の結晶で作られた小振りな電球のないシャンデリアが写真5のように飾られていた。シャンデリアが輝いておれば一層の豪華さが演出され、入館者も感激したと思われるが、どれだけの人がシャンデリアに気付いたであろうか。本物を見てきた者にとっては一抹のさびしさを感じた。

ポーランド館のビェリチカ岩塩坑内にあるシャンデリア

写真5 ポーランド館のビェリチカ岩塩坑内にあるシャンデリア

塩の販売はラオス館でも
  以上、万博で塩の展示、映像があったパビリオンの紹介をしてきた。とても全館を見て回る時間がなかったが、塩を販売するだけではラオス館で目に付いた。このような物産の販売は他の館でも行われていたかもしれない。