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2019.05.01

 

塩感受性診断の現状

 

 減塩する必要がない人々が大半である。これらの人々は減塩しても血圧は下がらない。減塩して血圧が低下する効果を示すのは塩感受性の人々である。しかし、塩感受性は容易には判定できない。以前からこのホームページで塩感受性について紹介し、「研究進み 実用化待たれる食塩感受性判定法」で関係のありそうな遺伝子3件の判定法を紹介した。

 最近アメリカ心臓協会誌に発表された塩感受性テスト法を評価したレビューが発表された。それには“塩感受性を確認する基準は標準化されていないが、高血圧者の30 - 50%が塩感受性であり、正常血圧者の約25%が塩感受性であると推定されてきた。”“塩感受性をテストする様々な方法は研究設定に適用されてきた;しかし、日常業務の臨床テストで有用な塩感受性テストはまだ確定されていない。”と前書きで述べている。本論では減塩食と高塩食を組み合わせて血圧変動を観察する食事プロトコールを基本としそれに利尿剤を加えて塩分排泄を促進させることにより血圧の低下反応が現われやすくする方法も評価している。代替塩感受性テストとしてフロセマイドをベースした入院患者急性プロトコールが最も幅広く使用されているとは結論で述べているが、それには潜在的に混乱因子を含んでおり、反復テストで塩感受性者を同定する精度には疑問があるとしている。また、例え塩感受性テストが日常的に使用されるようになっても、その結果を反映させて有益な効果を示す臨床結果になるかどうかを明らかにする研究が必要であると結んでいる。まだまだ先が長そうである。

 先に述べた塩感受性に関係のありそうな遺伝子は腎臓のナトリウム輸送を遅くする遺伝子(GRK4)群であり、最近はGNA12遺伝子が塩感受性の危険性を表す指標として発表された。それ以外にも塩感受性遺伝子としてSLC4A5などが発表されており、この分野の研究は急速に進んでいくものと考えられる。

 兎に角、容易な塩感受性判定法の開発が早期に行われて、減塩政策を実行すべき対象者を選別できるようにしてもらいたい。