戻る

2018.12.01

 

減塩政策を否定している書籍

 

 血圧低下に及ぼす減塩の効果は小さく限定されており、減塩には危険性もあることが明らかにされて以来、海外ではすべての人々に減塩を勧める減塩政策の正当性について論争されている。日本では減塩政策を否定する研究者はほとんどいないが、減塩の危険性について海外で発表された論文を参考にして医者、学者が減塩政策を否定する内容を書籍に書き出した。早くに出版された書籍から紹介するが、同一人物が複数の書籍を出版している場合には順序が変わる。章見出し、中見出し、小見出しを記し、その内容を紹介しよう。

 

石原結實 「『塩』をしっかり摂れば、病気は治る」2004年出版 株式会社経済界

第1章      減塩食を実行したのに、どうして病状が悪化したの? 15ページ

 小見出し:塩分をしっかり摂れば、死亡率が下がる! 31ページ

 アルダーマン博士がランセットに発表した(1998)米国の25歳から75歳までの207,729人を対象にした米国の国民栄養調査の結果を見て、塩摂取量の一番多いグループの死亡率が一番低く、塩摂取量が少なくなるほど死亡率が高くなっており、高血圧や脳卒中、心筋梗塞という心・循環器系疾患の死亡率も、塩摂取量の少ないグループほど高かったと述べ、この科学的データからみると、「塩は病気を防ぎ、長寿の要因となる」ことが分かったと記載している。

 筆者は、本ホームページでアルダーマン博士がこれに先立ち1995年のアメリカの高血圧学会誌で発表した男女2,937人を対象に同様の調査結果を紹介した。全体的に同様の結果であった。

石原結實 「塩」は体を温め、免疫力を挙げる! 2007年出版 株式会社経済界

 これは前述の書籍で表題「『塩』をしっかり摂れば、病気は治る」とほとんど同一の内容だ。出版社も同じで、前述の書籍を持っている購入者にとっては騙されたと思わざるを得ない。3ページの「まえがき」を読むと、出だし部分と最後の謝辞の部分が違うだけで、その間の記述は全く同じで驚いた。第1章から第3章までは同じで、第4章の一部を変えており、付録に「病気にならない特効メニュー」を加えている。

石原結實 「減塩」が病気をつくる! 2017年出版 青春新書 青春出版社 

序章 減塩=健康にいいをくつがえす新常識 17ページ

〇 小見出し:衝撃のデータ「食塩摂取が少ないと病気が起きる」 18ページ

 前述したアルダーマン博士が1998年にランセットに発表した国民栄養調査の結果の紹介であるので、内容を省略した。

 コーエン博士が2008年に一般内科学誌に発表した米国人8,700人を対象に実施された米国民健康栄養調査の結果を調べたところ、塩摂取量がもっとも少ない25%に属する被験者は、摂取量の最も多かった25%に比べて心臓病による死亡率が80%高かった。博士は、多くの研究から塩摂取量による血圧変化は極めて小さく、血圧が正常で健康な人に減塩を勧めることに疑問を投げかけていると、紹介している。

〇 小見出し:脳血管疾患、心筋梗塞と食塩摂取量の関連性はない? 24ページ

 厚生労働省が発表している平成22年度の国民健康・栄養調査結果から47都道府県の塩摂取量の状況と高血圧、脳血管疾患、心疾患による死亡率および高血圧罹患率とを関係付けた病気の発生状況によると、塩摂取量と高血圧者数には何の因果関係もなく、脳血管疾患、心疾患との間にも何の整合性もないと推測している。

筆者も厚生労働省が発表している塩摂取量と人口動態調査による疾患死亡率や患者調査による疾患罹患率との関係を調べて発表したことがある。塩摂取量と疾患死亡率では関係がある結果を示しても、死亡率よりも正確な結果が得られる疾患罹患率では関係ない結果であった

〇 小見出し:では、ガンとの関連性は? 24ページ

 これについてもガン死亡率が高い上位10都道府県のうち7つは塩摂取量が全国平均より低い県であるとして関連性を疑問視している。

 筆者は前期の調査を基にして胃ガンについても調べたが、死亡率、罹患率ともに塩摂取量との関係はなかった

〇 小見出し:食塩摂取量と平均寿命の意外な関係 29ページ

 平成22年度の国民健康・栄養調査結果と都道府県別生命表との関連を見ると、塩摂取量が多いと短命になるとは言えず、塩摂取量が多い高血圧、脳血管疾患、虚血性心臓病…などが多発し、死亡率が上昇する…という言い草は成り立たない。塩摂取量不足の方が健康を害し、種々の病気を発生させる原因になることが分かる、つまり「減塩が病気をつくる」と述べている。

 筆者は塩摂取量と平均余命との関係も調べ、関係のないことを示した

白澤卓二 「長生きできて、料理もおいしい!すごい塩」2016年出版 あさ出版

第2章 塩はこんなに体にいい 41ページ~57ページ

◎ 中見出し:塩を摂ったほうが長生きする 42ページ

日本人は塩を多く摂りすぎているので減らすべきとの意見がある。しかし、日本人は塩を多く摂る食生活をしているが、「日本はずっと長寿国として世界にその名を轟かせています。中略。長生きしているのにはちゃんと理由があるのです。」と述べ、塩を多く必要としている理由を以下の小見出しで述べている。

〇 小見出し:塩はすぐに体外に排出されてしまう 43ページ

 日本は高温多湿の気候であるので、発汗量が多く、塩分が失われるので、塩を補給する必要がある。欧米のナトリウム(塩分に相当)の多い動物性食品(肉類)中心の食事に比べて、日本では植物性食品(野菜。果物)を多く食べるのでその中に含まれるカリウムを体外に排泄させるために多くの塩を摂取する必要があった。

〇 小見出し:塩は血圧を下げる!? 44ページ

 減塩は良いことではない。過度に減らすと命に係わる危険がある。塩の成分であるナトリウムが血圧を維持している。したがって、減塩により必要なナトリウムが得られなくなると、生命維持に必要な全身に血液を巡らすための血圧が保てなくなる。人間にとって塩が不足することはあっても、過剰になる状態は起きにくい。過剰に摂っても自然に喉が渇き、水を飲んで腎臓から水分と一緒に余分な塩分は排泄される。


  中見出し:塩が不足すると脳卒中、心筋梗塞になる 49ページ


 塩が不足すると、脳卒中や心筋梗塞になることはどのような人でも該当する。インターソルト・スタディでは、塩摂取量を制限することで一般的に死亡率が高くなり、心臓循環疾患を引き起こす結果が出た。しかも、塩摂取量が少ないほど危険率は高くなる。健康な成人で行われたアメリカの国民栄養調査でも、心筋梗塞など心血臓血管疾患による死亡率は、塩摂取量の最も多いグループが最も低く、塩摂取量の最も少ないグループで最も死亡率が高いという結果がでた。約21万人の結果であるのでデータの信憑性は保証されている。 

第3章 「塩が悪者」には根拠がない 60ページ~109ページ

◎ 中見出し:塩の量は気にしなくていい 60ページ

 アメリカ医学研究所はアメリカで推奨されている1日当たりの塩摂取量5.8 gにはエビデンスがなく、それ未満の塩摂取量で心臓病や脳卒中、死亡が増えた、あるいは減ったと結論づけるには、研究の質や量が不十分であることを紹介している。また、日本高血圧学会で味噌汁の塩分は血圧に影響しないという研究結果が発表されたことを紹介し、塩分制限には根拠がないと述べている。

〇 小見出し:「長生きのためには減塩」の嘘 62ページ

 国を挙げた減塩運動の効果によって多くの人が、減塩=健康と考えているが、減塩しても健康や長生きにつながらない。減塩の効果がある例外的な人を除いて、例外なく減塩しない方が健康で長生きできる。先に述べたアメリカの国民栄養調査によるデータでは、塩摂取量と高血圧はまったく関連性がなく、心筋梗塞など心臓血管疾患での死亡率は塩摂取量の最も多いグループが最も低かった。塩摂取量が最も少ないグループは、むしろ死亡率が一番高い結果であった。つまり塩摂取量が多いほど長生きでき、減塩すれば心筋梗塞などで早く死亡する可能性が高くなる。

〇 小見出し:多くの専門家も塩=悪を疑い始めた 65ページ

 ニューヨーク・タイムズ紙の記事「減塩についての疑い」の内容を紹介し、アメリカで一番読まれている新聞でこのような内容が堂々と掲載されたのは、減塩キャンペーン一辺倒の状況から考えると、画期的なことと述べている。

〇 小見出し:「塩が体に悪い」ことを裏付けるデータは1つもない 66ページ

 アメリカ医学研究所の報告書とグラウダル博士のチームが最近発表した研究論文では、最も好ましい健康結果と関係している塩摂取量は6.7 – 12.6 g/dとされており、公式にアメリカで勧められている5.8 g/dよりもずっと多いことを述べている。

 さらにこの章では以下の中見出しと小見出しの表題で数々の話題が記載されているが省略する。



  中見出し:減塩食で何も改善されなかった!?

〇 小見出し:塩を摂らなかった人が一番短命に



  中見出し:「塩が体にいい」説は次々にもみ消された

〇 小見出し:立場上「塩がいい」と言えない専門家も

  中見出し:すべてはアメリカの発表が間違っていること

白澤卓二 監修 「医者が教える最強の食事術」2018年出版 宝島文庫()宝島社 

4章 体質改善の食事術 117ページ

◎ 中見出し:「塩はとても体に良い!?」 122ページ

〇 小見出し:むやみに減らせばかえって病気になる! 122ページ

 減塩=健康に良いとは限らない。減塩ブームで塩は敵のように扱われているが、安易に減塩しすぎれば命を左右するほどの一大事になる。

 例えば、塩分を摂りすぎると高血圧になるとよくいわれるが、その理屈でいえば、塩(ナトリウム)はそれだけ血圧の維持に力を発揮している。過度に減塩すると、体に必要なナトリウムが足りなくなり、全身に血液を行き届かせるための血圧が保てなくなる。

 塩分が不足すると、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることも意外と知られていない。血液中にはナトリウムイオンが含まれており、造血細胞に働きかけて造血を促進し、全身をめぐって血液をきれいにする役割を果たす。しかし、むやみに減塩すると、血液をきれいにする働きが鈍り、血栓ができやすくなる。血栓が脳に到達すれば脳梗塞を起こす。

 塩分を摂りすぎると、体内の調節機能が働き、喉が渇いて水を飲みたくなる。水を飲むと血液に水分が行き渡り、尿として水分と塩分が排出される。腎臓の働きに問題がなければ、塩分が体に蓄積することは考えられない。

米山公啓 監修 「お医者さんだけが知っている新・医学常識のウソ・ホント」

 2017年出版 ナガオカ文庫 永岡書店 

1章 信じていた常識が180度変わる!毎日の健康管理にまつわるウソ 13ページ 

◎ 中見出し:「減塩すれば血圧が下がる」はウソ 18ページ

 ほとんどの人は減塩しても血圧は下がらない。血圧が塩分に反応する人としない人があり、前者は「食塩感受性」、後者は「食塩非感受性」と呼ばれる。日本人の6割以上が食塩非感受性。すなわち、いくら減塩しても、それだけで高血圧を改善するのは難しい。

 健康な人で排出機能が正常であれば、多少塩分を摂り過ぎても、不要な塩分は尿で排泄される。したがって、そんなに神経質になる必要はない。

 健康な人の過度な減塩は要注意。塩は人間の生命維持機能に重要な役割を担っているので、無理に減塩すると、塩分不足から疲れやすくなったり気力が落ちたりする。とりわけ、発汗によって大量の塩分が失われる夏は、水分とともに塩分補給を心がける必要がある。