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2018.10.01

 

塩から微量ミネラルを有用に摂取できると本気で

信じている愚かな科学者達 5

 

先月は安保徹氏と細川順讃氏の著書を取り上げた。両氏とも一般的に言われていることを、エビデンスとして確認もしないで思い込みでフェイクな記載をしている。この度は引き続き細川順讃氏の著書を取り上げる。

 

細川順讃 1948年生 NPO法人生命科学共同研究センター理事長、総合医療コンサルタント 著書「からだに「いい塩・悪いしお」」 2016年出版 株式会社かんき出版

フェイクな記述:ここでまずハッキリさせておかなければいけないのは、「いい塩」と「悪い塩」の区別のしかたです。地球上にある塩は3つに分類されます。海の塩の“海塩”、ヒマラヤ山脈などの山で採れる“岩塩”、ボリビアのウユニ塩湖、イスラエルの死海、アメリカのグレートソルトレークなどの湖で採れる“湖塩”があります。つぎに塩の製法で分類すると、天然海塩、再生加工塩、化学塩の3つがあります。「天然海塩」は海水を塩田に導き、太陽と風の力で塩の結晶をつくるものです。「再生加工塩」は、天日乾燥した海塩を平釜で煮詰めて塩を作ります。「化学塩」は、輸入した天日乾燥した海塩や岩塩をイオン交換膜によって、塩化ナトリウム99%以上の塩をつくります。精製塩とも呼ばれます。輸入したばかりの天日乾燥した海塩には、ミネラル分が豊富に含まれバランスのとれている状態ですが、この状態のままでは細菌やウイルスが含まれているため、食用としてすぐに使うことはできません。そのため、殺菌の目的もあって製塩が施されるのです。製塩方法で一般的に行われているのが、「イオン交換膜」によるものです。この方法は殺菌効果が高いものの、塩化ナトリウム以外の有効なミネラル分を除去してしまうという欠点があります。そのため、塩から豊富なミネラル分を摂取できなくなってしまうのです。いい塩というのは、ミネラルバランスが整った塩のことですので、海から採れた塩しかありません。24 - 26ページに記載

コメント:長々とフェイクな記載を引用したが、基本的に認識が間違っている所がある。

天然海塩が一番良い塩のような書き方であるが、天日塩(天然海塩)は収穫されてから海水で洗浄され、付着にがりは洗い流がされ、山積みにされて海水を落としてから輸入される。

ここで「化学塩」は輸入塩をイオン交換膜法によって精製塩にしたものとしているが、全くのフェイクである。化学塩はカ性ソーダと塩酸との中和反応で出来る塩(エン)である塩化ナトリウム()のことである。輸入天日塩を水に溶かして不純物を除き、煮詰めて商品名の精製塩を作る。これを化学塩とは言わない。海水をろ過により水道水より清澄にし、イオン交換膜を使用して電気透析し、主として塩の成分を集め、煮詰めて作った塩が商品名の食塩である。この工程には化学反応はなく、電圧とイオン交換膜により主として塩の成分であるナトリウム・イオン(Na+)と塩化物イオン(Cl)を集める。この方法で有効なミネラルが全く除去されるのではなく、カリウムはむしろ多く2倍程度となり、カルシウム、マグネシウムは少なく半分程度になるだけだ。それほど大差があるわけではない。いい塩というのは、ミネラルバランスが整った塩としているが、抽象的な表現ではなく具体的なミネラルバランスと何をもって良としているのかを示さなければ、フェイク的な記載となる。

食用塩公正取引協議会で優良誤認表示のない商品には塩の公正マークが与えられる。

フェイクな記述:毎日取り入れる食品に含まれる塩分は、体内のミネラルバランスを大きく左右します。塩化ナトリウム99%以上の化学塩を摂っていると、体内のミネラルバランスが完全に崩れてしまいます。私たちがスーパーなどで買う野菜のミネラルが少なくなっているので、塩でミネラルバランスをとらなければなりません。72ページに記載

コメント 食品に含まれる塩分が体内のミネラルバランスを大きく左右すると記載しているが、果たしてどうか?下の表は、塩からどの程度のミネラルが摂取できるかを検討したものである。一日必要量に対して塩からの摂取量では問題にならないほど少ないので、塩10 gを製造するに必要な海水量400 ml中にどれだけのミネラルがあるかを示した。塩10 gに相当する海水400 mlを摂取しても一日必要量の微量ミネラルに対して一桁から四桁も少なく、無視できるほどで、大きく左右するなど全くのフェイクである。したがって、塩でミネラルバランスをとれるはずがない。