台所の塩の化学
The Chemistry of Salt in the Kitchen
By Emma Beckett
MedicalXpress May 6, 2016
“塩”と言う時、通常、ポテト・チップスに振り掛ける物質の塩化ナトリウム(NaCl)を意味する。しかし、技術的に言うと、これは塩の一例に過ぎない。
化学的に塩は酸と塩基の中和反応で出来るイオン性の化合物である。それを説明する。電荷を持った分子はイオンと呼ばれる。プラスに帯電している分子は陽イオンであり、マイナスに帯電している分子は陰イオンである。それらは磁石の両端に似ており、陰イオンは陽イオンを引き付ける。
酸は水中でプラスに帯電した水素イオン(H+)を放出し、一方、塩基はマイナスに帯電した水酸イオン(OH-)を放出する。一緒に混合すると、お互いに中和しあって塩を生ずる。
したがって、塩類はマイナスに帯電した陰イオンとプラスに帯電した陽イオンとの結合によって作られる。塩化ナトリウムはマイナスに帯電した塩化物イオン(Cl-)と結合したプラスに帯電したナトリウム・イオン(Na+)である。塩類の性質は、イオンの結合に応じて異なる。
塩辛い
必ずしもすべての塩類が食べて安全であるとは限らないし、それらの全てが塩辛い訳ではない。陽イオンは塩辛い味であるかどうかを決定し、陰イオンはその味の強さを決定する。
味覚受容器との相互作用で、塩類はそれぞれのイオンに分解-または解離-しなければならない。これには唾液または水のような溶液がいる。したがって、舌を乾かしてその上に塩を置いて舌を刺激しても、塩辛さを感じない。
塩類を水に加えると、それぞれの基本的な状態でかなり安全な化学反応があり、それぞれの成分は非常に反応し易くなる。ナトリウムと塩素の両方は水と激しく反応するが、それらのイオンが塩として共存すると安定である。
人類は二つの簡単な理由:安くて自然の保存料であり、食べ物を一層美味しくするから、数千年間も食べ物に塩を加え続けてきた。
塩を加えると食品の“水分活性値”を下げることによって食べ物の保存を長くする。塩は基本的に水を吸収し、微生物の増殖を抑えて腐敗しにくくする“乾燥した”環境を作る。塩はまた微生物内部の水分を引き出し乾燥した環境にして殺してしまう。
適正な量では塩は良い味である。必要量を我々に摂取させようとするために心地よい味として塩味があるように思える。塩類は神経信号のような多くの生理学的工程で重要であるので、我々の食事で何某かの塩を必要としている。
塩はまた風味強化剤である。少しの塩を加えれば、ほとんどの食べ物の味が良くなる。例えば、チキン・スープに加えても塩辛くならず、うま味を増し、バランスよくなればなるほど、もっとチキン・スープらしくなる。塩は多くの食品でこのように作用する。
塩はもっと良い味にしようとして食品の悪い味を抑える。味覚テストで苦い溶液と甘い溶液を一緒に混ぜて塩を加えると、混合液は甘くなった。しかし、甘い溶液だけに塩を加えても、味はそれほど改善されなかった。
多くのビタミンや酸化防止剤の味は苦い。これらの苦い化合物に自然に含まれている、または強化されている食品に塩を加えると味が良くなる。この理由で菜食主義者はしばしば塩を加える。
塩はまた、“水分活性”として知られている未結合の水量を減らす。これにより他の味がする化合物の濃度が相対的に増加し、匂いや味、食品の“こく”を改善する。
これは低脂肪食品または甘みの少ない食品の味を改善する。したがって、栄養表示をチェックし、健康に不必要な過剰の塩のために過剰のカロリーを減らせるかもしれない。
防御的な食べ物
習慣的に塩を食べ過ぎることは心血管疾患や腎疾患のような状態と関係している。一時的な過剰の塩摂取も良くない。十分な水がないと、過剰の塩は特別な塩濃度に依存する工程を混乱させる。
過剰の塩は“防御的な食べ物”の役割として苦みと酸味の味覚受容体を刺激する。これが食品の味を改善するために塩を加える理由であるが、加え過ぎると不味くなる。
美味しくするか、不味くするかの塩の量は個人によって変わる。これは一部、遺伝子のためであるが、通常の食習慣に応じて順化も生ずる。
通常高い塩の食事をしている人々は多い塩を好みがちである。幼少の頃に低塩食の人々は塩をあまり食べず、大人になっても血圧が低い。しかし、我々は減塩戦略として逆にこの順化を使える。
これは食事にゆっくりと少しずつ塩を加え、同時に食品製造者は消費者達を慣らすようにゆっくりと時間をかけて製品中の量を減らす。
塩化カリウムは塩化ナトリウムと置き換えるためにしばしば他の塩類として使われる。しかし、苦味もあるので、部分的に置き換えるだけである。塩類のもっと複雑な混合物を使うことにより、我々は塩味を強化でき、塩の使用量を減らせる。
別の方法は塩をより効率的に溶かすことで、それにより塩味を早く感じさせる。塩を食品の中に混合するよりも、食品の表面に塩を加えることによって塩は唾液により早く溶ける。塩の表面積を増加させるために粒径を小さくすることも塩をより早く唾液に溶かし、“塩辛さ”を増加させる。
別の面白い解決法が日本の研究チームから最近発表された:食べる時にフォークで舌にチョットした電気刺激を与える。電気刺激は塩味を刺激し、食べ物に加える塩の必要性を減らす。
我々が食べる塩の多くは、多くの人々が“塩辛い”とは言わない食品に隠されている。オーストラリア人は推奨量以上を食べている。したがって、科学を知った今や、科学を利用して塩辛い食品に関して選択できる。