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塩論争におけるデータのDASH

A DASH of Data in the Salt Debate

By Gary Taubes

Science, 2000;288:1319

 

 塩、血圧、公衆保健を巡る論争は永久に続き処置ないように思える。8団体の中で国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)と国民高血圧教育計画は高血圧者だけに限らず全ての人々に血圧を下げ健康を改善させるために食事中の塩量を減らすように勧めたが、この分野のかなりの研究者達は、その様な勧告はデータによって支持されていないと思っている。その結果、全分野は40年間も泥沼に陥ってきた。

 517日にNHLBIの所長は論争は終わったことを宣言した。アメリカ高血圧協会の年会で翌日発表された新しくNHLBIが財政援助した研究であるDASH‐ナトリウム研究の結果は減塩の健康効果を明らかにした、とレンファントは言った。しかし、例会後、論争はほとんど減塩の兆候を示さなかった。

 DASHDietary Approaches to Stop Hypertensionを表す。DASH‐ナトリウム研究は19974月に発表された元のDASHの続編で、DASH食は果物、野菜、低脂肪乳製品の豊富な食事をすることによって血圧を劇的に下げることを示唆した。注目すべき血圧低下を示した元のDASH研究では塩は因子ではなかった。

 DASH‐ナトリウム研究では、5ヶ所の研究所の共同研究で、研究者達はDASH食と平均的なアメリカ人の食事と同様のコントロール食の両方を三段階の塩摂取量、すなわち、平均的なアメリカ人の摂取量よりもわずかに少ない1日当たり8 g、現在の政府の勧告値に等しい6 g、そして4 gでテストした。研究者達は高血圧者または正常血圧者412人の被験者を90日間、コントロール食またはDASH食のいずれかにランダムに割り当てた。彼等は被験者に確実に割り当てられた食事を食べさせ、30日間毎にナトリウム量を変えた。

 結果は印象的であった。DASH食だけで前とは劇的に血圧を下げた。DASH食によろうと印象的ではないコントロール食によろうと、減塩による血圧低下はそれでも重要である。例えば、高血圧者が高塩食から低塩のコントロール食に移ると、収縮期血圧は8.3 mmHg、拡張期血圧は4.4 mmHg(8.3/4.4 mmHg)低下した。この低下は降圧剤による低下と比較できる。正常血圧者では、高塩食からコントロール食の低塩食に移ると、血圧は5.5/2.8 mmHg低下した。この低下は最近のメタアナリシスが予測したよりも5倍も大きかった。政府が勧める1日当たり6 gの塩から最低の4 gに被験者が減塩すると、これらの大半が血圧低下を起こした。“現在勧めている以下に減塩すると、多くのアメリカ人が現在加齢に伴って上昇する血圧を抑えるのに役立つことを結果は示唆している、”とプレス・リリースでレンファントは言った。

 しかし、長く続いている論争は良いデータであっても新しいデータに対しては著しく抵抗する。アメリカ心臓協会の年会でDASH-ナトリウム研究をヒアリングした後で、全国民に減塩を勧める知識に懐疑的な人々は断固として懐疑的なままであった。例えば、ポートランドのオレゴン保健科学大学のデビッド・マッカロンは、健康に良いDASH食を食べている正常血圧者について、1日当たり8 gから4 gへの減塩は血圧にほとんど差を生じさせなかった(1.7/1.1 mmHg)と指摘した。“健康に良いDASH食を食べて、正常血圧者であれば、減塩にはほとんど効果がない。…それなのに、健康な食事を続ければ、減塩が論争点になるという時、どうして減塩が主要なメッセージになるべきなのか?”

 難しい意見は公衆保健勧告の性にされる。塩論争の大部分は減塩によって達成される血圧低下の大きさではなく、減塩によって健康が改善させるかどうかに集中していた。何年間も研究者達は減塩が健康を改善することを示せなかった。アメリカ医学協会誌に発表された減塩に関する1998年の総合的なメタアナリシスの著者らは、“論争に対する最適な解決策は脳卒中、急性心筋梗塞、生存と言った厳しい終末を伴う長期間の試験をすることだ。”と結論を下した。

 ニューヨーク市のアルバート・アインシュタイン医科大学の高血圧専門家でありアメリカ心臓協会元会長であったミッキー・アルダーマンが主催したアメリカ心臓協会の年会後、この結論は繰り返し言われた。“塩摂取量を半分に減らした25千万人の治療法として示唆しており、他の潜在的な悪い結果を調査することもなく30日間で血圧を変化させられることを示すと言う根拠に基づくだけで減塩をしている。私には信頼性が飛躍しているように見える。”とアルダーマンは言っている。

 DASH-ナトリウム研究の研究者達は減塩の健康利益についてずっと楽天的であったが、少なくともアルダーマンの指摘は合理的であることを認めていた。ポートランドのカイザーパーマネンテ保健研究センターの生物統計学者ウィリアム・ボルマーは、DASH-ナトリウム研究が減塩を勧める良いエビデンスを提供していると信じていることをサイエンスに語った。それにもかかわらず、彼は次のように加えた。“低ナトリウム食の長期間の効果を示す良くコントロールされた研究を見ることは素晴らしい。問題が提起された。我々はここに座り、問題はないとも言える。あるいは我々は一度に問題を解決する研究を行える。”