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新しい研究は塩と心疾患との関係はないこと示す

New Study Finds No Connection between Salt and Heart Disease

塩摂取量と心疾患との関係に挑戦

By Ewen Callaway

Scientific American July 6, 2011

 

 議論のある新しい研究が多過ぎる塩摂取量と心血管疾患発症との間で何回も繰り返される関係に疑問を呈している。アメリカ高血圧学会誌に今日オンラインで発表されたメタアナリシスは7件の臨床研究の結果を調査し、減塩が心臓病を防ぐと言う確実な証拠を見出せなかった。

 WHOは塩摂取量を5 g/d以下にすべきことを勧めている。一方、多くの西欧諸国の人々は一般的にその2倍を摂取している。公衆保健機関は既に食品の塩含有量を減らす方法を調べている。例えば、イギリスの食品標準局は食品製造者と一緒に減塩を行っており、ニューヨーク市保健部は5年間でアメリカ人の塩摂取量を20%減らす国民運動の先頭に立っている。ネイチャーは新しい研究と減塩政策の説明を調べている。

 

塩はどうして心疾患の原因となるなだろうか?

 塩摂取量は体内に水貯留を引き起こし、それによって血圧が上昇し、高血圧は心臓発作、脳卒中、他の心血管疾患についての危険因子である。

 多くの臨床試験とメタアナリシスは、減塩が血圧を下げることを示唆しているとロッド・テイラーは言う。彼はイギリスのエクセター大学の統計学者で、新しい研究を主導している。しかし、減塩が心疾患に対して十分に保護するほど血圧を下げるかどうかについては不明確であると彼のチームは言う。前のメタアナリシスは、減塩は人々の血圧を下げるが、平均してわずかであることを明らかにした。

 他方、人々の塩摂取量と心血管疾患発症率とを比較した多くの研究は明らかな関係を出してきた。177,000の患者が参加した13件のそのような研究の2009年メタアナリシスは、高塩食は脳卒中の危険率を23%増加させたことを明らかにした。

 

減塩が心血管疾患を予防するかどうかを証明することがどうしてそんなに難しいのか?

 塩摂取量と疾患発症率との関係を見る観察研究は減塩で心血管疾患を直接的に低下させられないとテイラーは言う。“人々は減塩を選ぶが、それは他の健康に良い行動と関係しているかもしれない。彼等はより活発に運動し、飽和脂肪酸をあまり食べないかもしれない。”それらの要因は心血管疾患に対しても保護的である。

 “政策と我々は減塩するように人々にアドバイスすべきかどうかを知らせるためには、観察研究は不十分である、”とテイラーは付け加えている。患者が低塩食か高塩食に置かれずっと続ける比較実験試験はより明らかな答えを提供すると彼は言う。

 

新しい研究はどのようにして行われたか?

 テイラーのチームは塩と心血管疾患との関係に関して2,600件の発表されている雑誌論文を読んで、6か月間以上を追跡した全部で6,250人の患者を含む7件の比較試験を取り上げた。テイラーのチームは患者を3つのカテゴリーにグループ分けした。正常血圧者、高血圧者、心不全と診断された患者で、塩摂取量が血圧、心血管疾患発症率、死亡率とどのように関係しているかを解析した。

 

結果はどうであったか?

 低塩食の人々は血圧低下を観察した。しかし、テイラーのチームは減塩しなかった人々の率と比較して心不全の被験者率に統計的に有意な差を認めなかった。さらに、低塩食は正常血圧者または高血圧者の死亡率を減らすことと関係していなかった。“心不全患者の1試験で減塩は死亡率を増加させたことを我々はむしろ心配しながら明らかにした。”とテイラーは付け加えている。

 

どうしてこの結果は他の観察研究の結果と違っているのか?

 テイラーは彼のチームのレビューが前の観察研究からの結論とどうして違ってきたのか分からない。減塩と心血管疾患を予防することとの間には関係がないとされた、とテイラーは言う。しかし、彼はその解釈には疑問を持っている。彼のチームが血圧低下に気付いていたからだ。

 多分、研究は統計的に有意な効果を明らかにするに十分な患者を見つけられなかった。フランセスコ・カプチーオがこの可能性を指摘した。彼はイギリスのウォーウィック大学の栄養センターと共同しているWHOを率いている。“この問題は統計的にデータが有意ではないと言うだけで、その理由はメタアナリシスがあまりにも小さかったことである、”とカプチーオは言う。低塩食は心血管疾患に対して予防する傾向を示さなかった、と彼は述べている。

 一番良い説明は、患者が研究の早い段階で減塩したが、次第に摂取量が増加し、効果を隠してしまった、とテイラーは考えている。“彼等は23年熱心に減塩していたが、8年または10年後にこれらの人々の行動は元の習慣に戻った、”と彼は言っている。

 

大規模で厳密に管理された臨床試験は塩と心血管疾患との関係の真相を究めたか?

 テイラーのチームが解析した研究のように個人向けの食事勧告に依存した研究は人々の塩摂取量を十分に減らせなかったとテイラーは思っている。むしろ、公衆保健努力の効果を調査した研究を科学者達は見るべきである。そのような努力には食品が心血管疾患や死亡を防げるかどうかを見るために、食品の塩含有量をはっきりと表示することである。“国民レベルの介入である研究を我々は設計する必要があり、本質的に我々は個人の地域社会を取り上げ、彼等にパンフレットを配るだけで、1時間カウンセラーと一緒に座らせるよりも、彼等の行動を変えさせる様々な方法で彼等を目標とし、その行動を持続させるように手助けする。”と彼は言う。

 しかし、そのような研究は高価で、実際的でなく、不必要であるとカプチーオは言う。“彼等は不可能なことを求めて公衆保健を人質にして身代金を要求する。他の多くの栄養素と同じように塩は、比較臨床試験がなくても、行動は圧倒的なエビデンスに向かわざるを得ないカテゴリーに入る。”と彼は説明する。

 

新しい研究の政策説明は何か?

 答えは尋ねる人に依存する。ニューヨーク市のアルバート・アインシュタイン医科大学名誉疫学者ミカエル・アルダーマンは、中程度の塩摂取量の人々には減塩は役立たないと言うエビデンスに研究は加わった、と思っている。減塩を強制する目的の公衆政策は間違った方向へ導かれ、潜在的に危険であると彼は言う。減塩は血圧を下げかもしれず、それは心臓に良いが、インシュリン抵抗、トリグリセライド濃度を増加させ、交感神経活性を亢進させる可能性もあり、これらは全て心血管疾患の危険因子である。

 国民に減塩を強いる方向の政策は意図しない健康結果や経済的な結果をもたらすことをテイラーも心配し、減塩の保健効果をもっと研究することを要求している。“直感的に全面的な減塩は良いことのように見えるが、それを証明するエビデンスはもっと必要であると私は言いたい、”と彼は言う。

 新しい研究は煙幕として使われるだろうことをカプチーオは心配している。新しい研究を公衆保健当局が納得し、あるいは新しい研究が食品製造者に加工食品や既製食品の減塩を強いることを一層難しくしているからだ。それらの食品は我々の食事でほとんどの塩が来る元となっている。“政策が目立つように塩は論争感を作り出している、”と彼は説明する。

 

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