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激しく論争が続いている塩戦争:

マリオン・ネッスル栄養学教授との雑談

The Salt Wars Rage On: A Chat with Nutrition Professor Marion Nestle

By Michael Moyer

Scientific American  July 14, 2011

 

過剰な塩摂取量が高血圧や心疾患を引き起こすかどうかに関する良い研究が

どうして決して無いかもしれないことを研究者は説明する

 

 塩は悪者か?ちょうど数ヵ月前に研究者達は、過剰の塩摂取量が心疾患を発症させる、血圧を下げる、あるいは全く何の影響もないことを示す表面面矛盾した研究を発表した。我々は塩と健康に関する最近の見解を説明するのに役立てようとサイアンティフィック・アメリカンの顧問であるマリオン・ネッスルに聞いた。彼はニューヨーク大学の栄養、食品、公衆保健教授であり、著書「食品政策」の著者である。

[インタビューを編集した内容は次のとおりである。]

 

私が理解しているこの分野は論争中である。

 大論争中です。

 

論争点を教えてくれますか?

 腎臓の専門家または高血圧研究者と話すとき、彼等がする最初のことは、彼等が摂取している塩の量を下げるように努めることを話すことでしょう。血圧管理に役立つからです。しかし、多くの人々に低塩食を食べさせようと試みている所で臨床試験をしようとすると、多くの塩を食べていると言っている人々と多くの塩を食べていないと言っている人々との間にはそれほどの差を見ない。臨床試験では関係は現れない。

 

どうして?

 二つの理由がある:人々の集団を低塩食にできないことが一つ。アメリカ人が食べ物から摂取する塩の大体80%は加工食品かまたはレストランの食事のいずれかで食べる前に食品中にある。非常に多くの塩が供給食品に加えられ、非常に多くの人々がそれらを食べてしまうので、低塩食を食べている人々の集団を見つけ出すことは難しい。基本的には彼等は存在しない。

 彼等が数年前に行った一つの比較疫学研究のインターソルト・スタディで、多くの加工食品を食べないとかレストランで食べないどこかのジャングルといった隔離された場所に住む人々の2つの集団を彼等は上手く見つけ出した。集団の人々は低塩食を食べており、決して高血圧にはならなかった。

 

そこで彼等はその試験で高塩食グループと低塩食グループに分けたか?

 

 いや、いや、いや分けなかった。それは比較試験ではなかった。彼等は集団が摂取している塩の量と罹患している高血圧症の件数を見ただけであった。これらの二つの集団だけで、高血圧の発症率は非常に低かった。他の皆では塩摂取量は非常に多かったが、多い摂取量と比較的多い摂取量との間には何の差もなかった。

 

したがって、どこかのジャングルの住む人々を除いて、低い塩摂取量の集団は地球上にはいないか?

 

 どこにもいない。ことによると我々もそうであったかもしれないが、今ではそうではない。我々は世界的な食品供給網を持っているので、本当に注意深い研究を行うことは出来ない。

 

何が他の問題か?

 

 必ずしも誰もが低塩食を食べるわけではない。減塩すれば血圧が下がる塩感受性の人々は集団の一部である。多分、集団の大部分は応答しない。彼等は好きなだけ多くの塩を食べても血圧は低いままである。

 したがって、どこで臨床試験を行おうとも、この奇妙で変則的な結果となり、多くの効果を示さないこれらの複雑で解釈の難しい結果を得ることになる。しかし、高血圧患者を治療している人は誰でも低塩食が良いものと思っている。今までの私の人生で、塩が高血圧と関係しているかどうかを考えているどの委員会、団体、グループも“そうだ”と言い、公衆保健手段として減塩を勧めてきた。我々が置かれている奇妙な状況がこれだ。

 一つ別の妙案があり、塩について人々の味覚に働きかけなければならない。例えば、キャンベル・スープは低ナトリウム・スープを販売できない、したがって、逆に塩を加えていると昨日発表したばかりである。売れないとした理由の一部は、高塩食を食べていれば、塩辛くない食品は不味いと感じる。低塩食を食べていれば、低塩食に慣れるまでに3から6週間かかる。その時には食べる物は何でも塩辛いと感じる。したがって、供給される食品中の塩が多くなればなるほど、好みの塩味にするにはもっと多くの塩を必要とする。このことも物事を複雑にしている。

 したがって、公衆保健の立場から、低塩食に極端に応答すると思われる集団のパーセントを扱おうとすれば、供給する食品中のナトリウム量を出来るだけ少なくすることである。それで塩辛い食べ物を売る人々は変わり者と思われる。彼等は味覚音痴と思われる。このシステムで非常に変わった意見を持つ別の第三者がおり、科学的に不明確な状況では情熱の強さが事を制すると、私は思う。

 

加工食品を食べないようにすべき状況を作れないか?

 

 それではレストランはどうか?私は食品専門家である。私はプロとして食べつくす。

 

それではシェフは料理を美味しくする必要がある―そうでなければ、人々はレストランに行かない。

 

 そうではない。シェフ達は自分の基準で美味しくする必要がある。料理に多くの塩を使うので、ナトリウム量が多くなる傾向がある。塩は次第、次第に多くなる。あるレベルの塩味に慣れると、彼等にはもはや塩味はしなくなり、さらに塩辛くしなければならない。したがって、料理中の塩が多くなる圧力がかかる。つまり、塩を減らすことは非常に難しい。

 

それではレストランで塩の量を制限する規制を勧めるのか?

 

そうだ。私はそうする。加工食品についてはもちろんだ。減塩すれば誰でもより健康になれると私は思う。十分に塩辛いと思わなければ、あなたは必ず塩を加える。しかし、塩が私に差し出されれば、塩を断れない。それがジレンマだ。同意してしまえば個人責任、“過保護状態”、本当に公衆保健問題にならないその他多くの果てしない論争となる。科学的に解決できないので、公衆保健問題は解決が難しい。

 

塩摂取量の直接測定法である尿中のナトリウム量を測定する研究を行って、高血圧と関係付けられないか?

 

そうだね彼等はそれを行ってきて、高血圧発症率に何の差も見なかった。理由は基準の塩摂取量が非常に高いので差が出ないからだ。人々が推奨値の1日当たり1,500 mgまで減らすことを提案することは本当に、本当に難しく、その量でも多すぎるかもしれない。本当に正しい投与量応答を示されず、個人差が大きいため、正しい塩摂取量は不明確となる。

 

これまで良い研究はあるの?

 

分からない。

 

これは科学の限界を表しているのだろうか?それはブラックホール現象と塩摂取量か?

 

多分、そうかもしれない。確かにそうかもしれない。あるいは我々が持っている科学は完全に十分で、既に答えを持っている。私は統計学者達が集まっているナトリウム会議に一度参加した。私は統計学者達と一緒に出ると、彼等は“塩が高血圧に何らかの作用を及ぼすと考える人々は勘違いしている。”と言った。塩と高血圧との関係はほとんど何も示さない臨床試験に基づいていた。そして今でも、かつてこの問題を取り扱ったどの委員会も言っていることは、“我々は供給食品中のナトリウムを本当に減らす必要がある。”私は信じられないが、今やかつてこの問題を扱ってきた委員会はどれも勘違いしているか、あるいはこれらの決定の合意には臨床的で合理的な根拠があるに違いない、かのいずれかである。

 

しかし、これが問題だ。-これらの委員会は彼等の勧告を支持するエビデンスを示せるはずである。しかし、彼等は逸話や個人の経験にあまりにも依存しているように思える。

 

あるいは皆が論争している幾つかの臨床試験に依存している。たとえ何が結論であっても、皆が全ての臨床試験について論争している。それで私は全てのことを完全に魅力的に思っている。私は栄養に関する研究を行うことの難しさを誰もが過少評価しているとは思わない。人々はナトリウムだけを食べている訳ではないからだ。彼等は食品中のナトリウムを食べている。高ナトリウム食は食品供給で何か他の事項についての印であるかもしれない、または生理学的な差異が非常に大きいので明快な結果を得られないだけなのかもしれない。個人差は非常に大きい。その理由は分からない。自分についての作用が分かっているだけである。それは nof oneの逸話である。