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反対者と塩摂取量:オドンネルらによる論評についての関心事

 

Dissidents and Dietary Sodium: Concerns about the Commentary by O’Donnell et al.

By Norm RC Campbell

Int. J. Epidemiol. 2017;46:362-366   2016.12.30

 

 

 塩論争の両側に関する極端な展望を持った人はほとんどいなくて、公衆保健における研究文献の耳障りで論争的な解釈を引き出す領域はほとんどないとオドンネルらは主張する。それでも多くの独立した保健科学的な機関はエビデンスの全体性をレビューして、減塩するための正に首尾一貫した勧告値に到達してきた。さらに、WHOを含む主流の保健従事者や科学者達は減塩を強く支持してきた。オドンネルや彼の共著者が学術機関に所属しているカナダでは、26の国家保健科学機関が5.8 g/d以下に減塩する立場を支持しており、連邦政府や地方自治体は2016年末までに5.8 g/dまで減塩する目標を設定し、ほとんどの保健治療専門家達を代表する機関のリーダー達とカナダ人口の約70%は減塩への規定アプローチを支持した。カナダ高血圧教育プログラムは血圧を下げるために5.1 g/dまでの減塩を考えることを勧めている。高い支持率は多くの他の諸国でも見られる。過剰な塩摂取量に関する科学者達と保健専門家達の機関である塩と健康の世界行動(World Action of Salt and Health)には95ヶ国から500人以上のメンバーがいる。世界の他の地域には関心を持った科学者達の同様の地方ネットワークがある。ほとんどの国の高血圧機関や世界高血圧連盟、国際高血圧協会は減塩を支持している。消費者インターナショナル(120ヶ国の240市民社会機関の傘下機関)はキー・プロジェクトとして減塩を支持している。オドンネルの論評で表現されている意見、または他の意見を異にする科学者達の意見を支持する信頼できるどんな保健、科学または市民社会機関も私は知らない。主流の科学と公衆保健に反対して主張する反対の意見を持った科学者達の小さいが強く意見を述べるグループによって論争が発生する。

 関係者の財政闘争は栄養に関するエビデンスの解釈に大きな影響を及ぼす。何人かの強く反対意見を述べる科学者達は食品そして/または塩産業、例えば、科学における誠実さと長い関係を持ってきた。オドンネルらは関係者の潜在的な闘争を何も示さなかったが、塩摂取量に関するユスフとメンテ博士ら自身の議論のある研究結果はオドンネル博士によって発表された食品会社から資金を調達した食品政策委員会の組織委員にユスフとメンテ博士はなった。食品産業界の資金がどのように使われたかは公開されなかった。共著者としてオドンネル、ユスフとメンテ博士らによる最近のランセットの論文は彼等の研究の資金提供者として砂糖研究所も列挙し、彼等は減塩に反対して主張する原稿も発表した。一方、ユスフ博士が1件以上の特許を持ち、多くの特許出願をしてきた環境で抗高血圧治療も主張してきた。これらは潜在的な利益相反を表す可能性がある。

 主要な公衆保健政策に反対することを主張することに用心深くなるよりもむしろ何人かの異議を唱える科学者達は低品質の研究を行い、文脈から外れた研究を取り上げ、事実に基づく間違いをし、あるいは結果を誤解し、彼等の議論のある研究をより確固とした物に見せるやり方で科学的手順/プロトコールを変え、高品質に優る低品質のエビデンスを使ってきた。例えば、オドンネル博士は都市と農村における前向き疫学研究(PURE)の観察データに基づいて、直線関係を示すランダム化比較試験からのデータを使うよりもむしろ低塩摂取量であまり血圧を下げないと言う非直線の血圧低下があることを最近主張してきた。PURE研究は一回の空腹時早朝スポット尿試料に基づく長期間の塩摂取量を調査し、PURE研究から報告された血圧データは高品質の国家調査のデータとは著しく異なっている。中国からのPURE研究のサブ研究は一回の空腹時早朝スポット尿試料の塩摂取量推定値と24時間尿中塩摂取量との高い相関を確認できなかった。主なPURE研究解析は24時間尿中塩摂取量を報告し、両研究からのプロットはスポット試料からの24時間尿中塩摂取推定値と24時間尿中塩摂取量測定値との間に20 g/dの差を示した。

 スポット試料からの24時間尿中塩摂取推定値と24時間尿中塩摂取量測定値との関係の総合的な解析は0.19と言う低い相関で著しい変動を示したが、オドンネル、ユスフ、メンテ博士らによる発表は他の著者らのように高い相関を述べた。PURE研究は1回早朝測定の試料を評価しているが、メンテらは独立したスポット尿試料と24時間尿試料との相関を提供する要請には応えなかった。最近挑戦したとき、中国のデータは早朝試料よりもむしろ午後の試料を使い、一方、総合とPUREの中国のサブ試料の両方は空腹時早朝スポット尿試料を調査したとメンテ博士らは主張した。PURE研究はスポット尿試料ではなく空腹時早朝尿試料(スポット尿試料は自発的に排泄する時間を決めない尿試料として定義され、したがって、空腹時早朝尿試料を含む)を使ったこともメンテ博士らは主張した。とにかく空腹時早朝尿試料は全て不正確の問題と他のスポット尿試料の再現性の欠如に悩まされる。PUREスポット尿試料についての主な確認研究は本質的な方法論問題を持っており、それには4つの誤りがあり、不完全な24時間尿試料が50%以上あり、研究をより強固に見えるようにする発表されたやり方に対して明らかにされていない変更である。血圧低下を示した6ヶ月以上長く続いたランダム化比較試験はないことをオドンネル博士も主張してきた。6ヶ月以上続き、減塩で下がる血圧の予測程度を示した幾つかのランダム化比較試験がある。

 それにもかかわらず、彼等の研究の評価とレビューで科学的な欠点が繰り返し報告され、反対者達は批判を無視し、彼等の調査方法を強化しない。何人かの反対者達はパワー不足のサブグループまたは不適切な解析を行い、減塩または潜在的な害の影響はほとんど、または全くないと結論している。例えば、グラウダルらは減塩に対する投与量応答を調べるメタアナリシスを行った。メタアナリシスは正常血圧者では血圧低下を見出せなく、減塩に対する投与量応答はなかったと結論を下した。解析は正常血圧者のわずか83人を含んでいた。ランダム化比較試験の多数の独立したメタアナリシスは、減塩は正常血圧者の血圧を下げることを確認している。短期間の大幅な減塩によって大きく負荷されるレニンーアンジオテンシン濃度に及ぼす減塩の影響のメタアナリシスもグラウダルらは行ってきた。増加したレニンーアンジオテンシン濃度を明らかにした研究は広範囲な短期間の塩摂取量変化のため公衆保健に無関係であるとして批判された。それにもかかわらず、グラウダルは同じ方法を使ってメタアナリシスを2度更新した。グラウダルのメタアナリシスの最大値は平均8.8 g/dの減塩であり、正常血圧者で7日間の中間期間であった。わずかな長期間研究のメタアナリシスは減塩からのレニンーアンジオテンシン濃度にほとんど影響を及ぼさないことを示し、レニンーアンジオテンシンーアルドステロンに及ぼす減塩の効果は1ヶ月以上続けた研究で消える。

 意見を異にする科学者達の研究で観察された他の問題は研究結果の再現性を欠き、異なった試験のうり二つの結果を説明する原データを提供できない、データ抽出の不正確さ、データの分類を誤ったメタアナリシスの解析設計と言ったことを含んでいる。

 レニンーアンジオテンシン軸(RAS)の短期間‘刺激’は減塩に対する現在の努力で長期間の有害性について可能なメカニズムであるとオドンネルらは説明している。現在の推奨値まで長期間で次第に減塩することはRASの活性化にほとんど影響を及ぼさないと言う事実は別として、活性化されたRASは低塩摂取量ではなく高塩摂取量で主に危険であることを新しい生化学的研究は示している。最終的に、体内の塩分量を減らすように作用する利尿剤を含めてRASを刺激する抗高血圧剤は、高血圧の管理でRAS活性を減らすそれらの抗高血圧剤に対して同様の心血管利益を持っている。

 高塩摂取量が合理的であると言うオドンネルらの立場を支持するために彼等は個人の命名法も使う。5.8 g/dの塩摂取量は‘非常に低い’と彼等は主張しているが、その量は塩を全く加えないで人類が進化してきた食事中の3倍も多い。世界高血圧連盟、塩と健康に関する世界行動、塩と健康に関する世界行動のオーストラリア支部によって支持されている国際健康と塩専門家グループは標準化された命名法を勧めてきた。その分類は、オドンネルの‘中程度’摂取量を‘高い’から‘非常に高い’として分類し、オドンネルの‘非常に低い’摂取量を‘高い’から‘勧められている’となっている。標準化された命名法は塩を加えない食事と塩摂取量を勧めている現在のWHOに基づいていた。

 トリンコートらの観察を支持しながら、塩摂取量に関する数多くの研究は減塩の悪い影響または全く影響のないことを明らかにしていると他の研究者達は述べてきた。しかし、低品質の研究を排除するために品質のフィルターを適用すると、ほとんど全ての研究は減塩の健康利益を支持している。例えば、20136月から20155月までに行われた文献の総合的なレビューで、レビューされた564研究の中で14研究が品質基準に合っており、それらの全ては減塩からの健康利益を支持した。この問題を提示した塩摂取量に関する研究の実行についての最低限の基準を作成するための幅広く支持する呼びかけがあった。WHOと他のグループは、意見を異にする科学者達によって採用されなかった様々な品質基準をこれまで使ってきた。

 塩摂取量に関する公式に述べられた立場の人々は塩摂取量勧告過程には含まれていなかったとオドンネルの論評も主張した。ユスフ博士が会長である世界心臓連盟は塩摂取量に関するエビデンスをレビューし、摂取量に関する推奨値を作成するように委員会に支持した。塩摂取量に関して反対意見のオドンネル博士を委員会に指名することとは別にして、共同司会者は塩産業界の前コンサルタントであり、タバコ会社に対する過去の支払い済み裁判所の証人であった。さらに、私自身を含め多くの科学者達はエビデンスの総合系統的レビューに含まれていることに従った減塩の擁護者となってきた。事実、塩と健康に関するコンセンサス行動と塩と健康に関する世界行動は委員会のメンバーによって塩摂取量に関するイギリスのレビューに従って形成された。

 オドンネルらは‘効果のエビデンスがない’と言う概念と‘効果のないエビデンス’と言う概念を混乱している。減塩する前に塩摂取量の中程度の低下が心血管疾患結果を減らすことを示すランダム化比較試験を彼等は要求している。心血管疾患予防のために勧められているほとんどの戦略について、それが普通の基準であることを彼等は主張している。しかし、運動を増加し、薬剤を飲まないでまたは大気汚染を減らして糖尿病を予防するような多くの公衆保健政策を後押しするランダム化された決定的で‘確実な結果’を出した臨床試験はない。さらに、これらの話題の多くに関する大きな結果をもたらす臨床試験を行うことは可能ではないと多くの考察は示唆している。公衆保健では、不完全なエビデンスは例外ではなく、規則である。しかし、公衆保健政策は一番利用できるエビデンスの評価にほとんど必ず基づいて説明される。展望的な研究は低塩摂取量対中程度塩摂取量で心血管疾患の高い危険率を報告しているが、これはわずかに低品質の研究を組み込んだレビューだけで真実であるとオドンネルらは主張している。決定的ではないが、ランダム化比較試験のメタアナリシスは全体の心血管疾患を減らす減塩と一致していた。これは低品質の研究を排除するための範疇を使ったコホート研究のメタアナリシスを資金援助したWHOと同じであった。塩摂取量に関するより決定的で高品質の臨床試験を私は強く支持する。しかし、そのような試験を行う難しさを私は認識しているが、主流の科学的公衆保健社会のように社会利益のために一番利用できるエビデンスに関して行う必要性を私は支持する。

 塩摂取量を調査する研究方法と食事研究に及ぼす利害衝突の影響に関するレビューを歓迎する雑誌を私は奨励する。WHOレビューで使われごく最近更新されたような品質フィルターを適用することによってトリンコートらの結果をさらに調査するために私は彼等も奨励する。さらに、商業的な利害衝突の独立した総合的系統的調査、低品質科学、減塩に反対する人々の科学的行動も私は奨励する。このレターは総合的なレビューではないが、私が信じる私の幾つかの経験の表現は大きな公衆保健の話題に関する論争を引き起こす潜在的に重要な非科学的問題を示している。最後に、間違った結果をもたらす強い可能性のある低品質研究についての役割はない。十分に確立された厳密な研究方法を使う意見の異なる研究者達を私は奨励する。