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塩と健康 Vol.4 No.2  Spring 2009

食塩代替物の毒性

Morton Satin − Salt Institute

 

 特別な事項を試みようとするとき、決まり文句、訳の分からない言葉、婉曲な言葉を使う傾向がある。残念なことに、メディアによって幅広く引用される社会への発表でこの方式が使われるとき、社会を誤解させる傾向がある。問題となる事例は“有毒な”という言葉の使用である。この言葉は、特に化学的な手段によって障害または死に至る可能性のある物質として長い間定義・理解されてきた。言い換えると、毒物である。しばしば毒物は、毒物を生産する病原性の微生物と看做される場合にも使われることがある。そのような明らかで良く理解されている定義で、焦点を誇張するように不正確にこの言葉を使うと、その正確な理解をぼやかすことによって消費者を混乱させ、最終的に害する結果となる。

 有害な資産として不良銀行のローンに言及することは扇情主義者であるメディアを利するだけである。メディアは大抵、資金が安全であることを書きまわり、平均的な消費者にはほとんど何も知らせない。青明に及ぼす生理的な効果を述べることを本当に意味するとき、実際には、消費者は銀行ローンに応用されるその用法で混乱させられるかもしれない。

             

 消費者擁護グループは、彼等が消費者を故意に混乱させるとしても、事象を誇張する傾向があるのは常識である。実際に彼等は多くの支持者を得るが、混乱した消費者は在庫品となり、多くの消費者擁護グループとの交換品となる。これらの擁護グループに所属する消費者は食品技術について正式に教育されていない。したがって、“有毒な”という言葉が消費者擁護グループによって自由に使われることは驚くことではない。公益科学センター(CSPI)が主催した記者会見で最近この事が起きた。彼等が召集した2009.5.11の記者会見で、CSPI代表のMichael JacobsonStephen Havasは、塩が有毒で、現在の摂取量は多くのアメリカ人を早々と墓場に送り込んでいる、と述べた。

 塩、最も古くから最も幅広く使われてきた食品成分で、全ての生命に必須な産物を彼等は“有毒物”として選んで述べた。CSPIに質問あるいは論戦しようとする時間を取ることもなく、どんな効果があるかを秤にかけて、全国紙は意味のない声明以上の何物でもない物語を書き始めた。塩が実際に有毒だと消費者は信じるようになるだろうか?

 毒性は程度の問題で、動物、細菌、植物のような生物に物質を曝らすと、どの程度で障害を引き起こすかである。毒性の主たる概念は、毒物の効果が投与量依存で、換言すれば、何でも大量摂取すれば毒になる。一方、蛇の毒液のように非常に有毒な物質でも、注目に値する毒性を示さない低い投与量がある。

 毒性は目標器官に及ぼす効果によって測定される。同じ投与量の毒物でも通常、個別に応答が異なるからで、毒性の集団レベルの測定が使われ、それは集団中の特定の個人に及ぼす効果の一般的な可能性に関係している。そのような測定値の一つがLD50または平均致死投与量である。それはテストされた集団の半数を殺すに必要な投与量である。人の場合のように(そのようなテストが不可能であるから)、そのようなデータがないときには、いくつかの“安全因子”または“倍率係数”がデータや評価過程における不確定さを考慮して組み込まれる。例えば、毒性物質の投与量が実験室ラットについては安全でも、人についての安全な投与量は1/10と仮定し、二つのほ乳動物間の種間差についての安全係数として5または10を用いる。データが魚からのものであれば、2つの種間の大きな差を考慮して100という係数を使う。同様に、毒性効果を受けやすい子供や妊婦に適用する場合には、特別な保護係数が使われる。この方法が非常に適正であることは疑いない。しかし、そのような保護係数は非常に内輪に設定され、その方法はいろいろと幅広く適用され、有用であることが分かってきた。

 人について塩の毒性データはない。そのことが過剰な食塩摂取に関連した高ナトリウム血症(血漿ナトリウム量の増加)の事例がない理由である。存在する唯一の高ナトリウム血症は水の摂取量が不十分な場合の結果で、特に老人や喉が乾いても水を飲めない傷害者である。他の原因は水の不適切な排泄で、利尿剤による治療または腎臓の問題のためにしばしば尿が出ない場合であり、決して過剰な食塩摂取量によるためではない。

    

 事実、水は塩よりもずっと有毒である。十分な塩を摂らないで大量の水を飲んだために水毒性(低ナトリウム血症)の事例が多く発表されてきた。例えば、2007.1.12にカリフォルニア州ランチョ・コルドバで28歳の母親がニンテンドウのウイー・ゲームで勝とうとして2,3時間で死んだ。地方のラジオ局の“ウイーでWeeを抱く”競争は排尿しないで大量の水を飲むことを要求していた。

 したがって、塩は有毒ではないのに、どうしてCSPIの代表達は塩を有毒だと言ったのであろうか?彼等は塩と高血圧との関係を誇張するためにそう言っている。塩と健康に関する公表されている臨床試験の結果を知れば、減塩の呼び掛けを支持しておらず、謀議仲間によって立てられた仮説的な予測に言及し、立場を主張するために悪魔的な言葉を使うことを彼等は選んできた。塩は有毒ではないことを述べた彼ら自身のウェッブサイトに矛盾して、CSPI代表者達は、消費者に誤解を与えるかもしれないにもかかわらず、報道内容に引き付けるために、塩を有毒と特徴付けることを選んでいる。

 彼等が行わなかったことは次の段階を取り、彼等の主張の本当の目標である加工食品中の塩を減らすために利用できる実際的なオプションが何であるかを消費者に知らせることであった。食品工業の経験を持つ人は誰でも知っているので、食品の塩含有量を簡単に減らせず、同じ受け入れ許容度を持つことを期待できない。加工食品中の塩は他の何らかの成分で置き換えるか、強化されなければならない。これらの化学添加物の毒性についてはどうであろうか?

5-リボヌクレオチド

  5-リボヌクレオチドは風味強化剤で塩味感覚を強化するために使われ、もっと正確に言えば旨味を強くする。旨味は今では5原味の一つとして認識されている。それはイノシン酸2ナトリウム(IMP)とグアニル酸2ナトリウム(GMP)の混合物で、混合物としてまたは個別の風味強化剤として販売されている。1974年の6月4日〜13日にローまで開催された食品添加物に関するFAO/WHO合同専門委員会は、人がこれらの化合物を大量に摂取することは、通風と腎臓疾患の危険因子である血清尿酸値と尿中の尿酸排泄量を増加させることを決めた1。もっと困ることがNew Scientistに発表された最近の報告で、食品中の5-リボヌクレオチドは痒い発疹、ひどい皮膚の発疹、アナフラキシー様症状などの発現を引き起こすことを示した2。リボヌクレオチドに対する反応は単なる痒い発疹から命に関わる唇や舌の腫れまで範囲が広い。インターネットには5-リボヌクレオチドを含む製品を摂取した結果として悩まされている人々の個人的な逸話性の出来事が沢山ある3

      

L-リジン

 L-リジンは人の健康に必須であることを意味する必須アミノ酸で、体内で合成されない。毒性は低いが、他の薬剤と一緒に摂ると、副作用や相互作用の可能性がある。動物に関する研究は逆効果や胎児に毒性を示したが、妊婦に関しては十分で良くコントロールされた研究は行われていない。

      

L-アルギニン

 アルギニンは半必須アミノ酸であり、大抵の場合、体内で合成されることを意味しており、食事から直接摂取する必要はない。しかし、生合成経路は十分なアルギニンを生産できず、食事からある程度摂取しなければならない。摂取量が高いときの症候は皮膚の肥厚や荒れ、筋肉の柔弱、下痢、悪心を示し、ビールスの活動も増加した。アルギニンはまたねずみの網膜細胞死に影響を与えた。

       

乳酸塩

 乳酸カリウムは主として生肉産業で使われる。それは貯蔵寿命の延長と塩味強化のために使われる。乳酸カリウム水溶液の欠点は苦い後味である。

マイコセント

 マイコセントはカビタンパク質から誘導された風味強化剤である。毒性に関する情報はすぐには得られない。

グルタミン酸1ナトリウム

 グルタミン酸1ナトリウム(MSG)は食品業界で最も広く使われている風味強化剤の一つで、家庭で、レストランで、食品加工業者で作られたいろいろな食品中に入っている。MSGは、グルタミン酸が大体25%ある小麦粉グルテンの酸加水分解によって最初に作られた物であるが、現在ではバクテリアや酵母を使って炭水化物の発酵によって生産される。食品成分としてのMSGは多くの保健研究の課題であった。FDAに代わって1995年に編集された米国連邦実験生物学学会からの報告は、通常の量を食べてもほとんどのMSGは人々について安全であると結論を下した。しかし、逸話的な報告に基づい
MSGに不耐性な人々もおり、“MSG症候合併症”を引き起こし、一般的に中国レストラン症候群で喘息症候を悪くするとも言われた。さらに、ノースカロライナ大学チャペルヒル公衆衛生校によると、食べ物に風味強化剤としてMSGを使う人は使わない人よりも運動量や総カロリー摂取量が同じでも肥満になりやすい。

      

トレハロース

 マイコースとしても知られているトレハロースは1859年にライ麦(麦角)のカビ汚染で初めて発見された天然の二糖類である。それはカビ、植物、昆虫によって合成される。現在ではデンプンから大量生産され、塩味強化を含めて幅広く利用されている。トレハロース不耐性はきのこや他のカビに対する消化不耐性と同じである。しかし、塩味強化用に幅広く使われている低濃度のトレハロースはほとんどの消費者についてこの症状を引き起こすには不十分であるようだ。

       

 加工食品中の塩含有量を減らすための塩味強化剤として作用する製品のいくつかだけを述べた。しかし、塩が食品製造で果たす役割は味だけではない。食品中の塩によって満たされる多くの応用は使われる多くの食品によって変わる。風味強化剤や苦味抑制剤としての塩の役割の他に、塩はテクスチャー、食感、ジュース、砕け易さの調整剤とともに微生物汚染をコントロールするための水分活性調整剤として働く。古く伝統的なチーズ製造工程で、塩は顆粒生成を起こさせ、熟成したチーズの例えようのない味とテクスチャーを生成させるチロシン結晶を誘発させる。冷凍用の野菜は色とパリパリした食感を維持するために塩溶液中に何時も素早く浸す。

 食品製造で塩が果たす数多くの役割のために、フィラデルフィアの有名なモネル・ケミカル・センターシーズ・センターの専門家達でさえも塩を完全に置き換えることはほとんど不可能であると思っている。それにもかかわらず、置き換えようとする努力は続けられており、塩のこれらの機能を置き換えるために使われる薬品は多くある。食塩代替物で味やテクスチャーを変更する方法がかつて発表されたが、微妙な差を調整し、またはなくなった元の添加物でもたらされていた味や機能を取り戻すために反対の調整剤を加えるという際限のないメリー・ゴー・ランドに陥った。調整が済むまでに、元々製品が含んでいた塩を置き換えるために、製品は複雑な工業薬品のまぎれもないカクテルを含むことになる。

 予想される食塩置換量で相互作用や毒性について合成化学薬品はまだテストされていないのに、幅広く使われている塩をそれらの蓄積で置き換えることについての保健上の関係を注意深く質問することは賢明なことではないのだろうか?動物脂肪をtrans fatsまたは今日、糖代替物と呼んでいるいくつかの発音しにくい工業薬品と蔗糖と置き換えることとはちょっと違う。これら全ての代替物は消費者の食品に対する概念を局解させ、全カロリー消費量の増大を促進させ、それによって意図しない結果をもたらすだけである。

 食塩の代わりに使われる化学添加物のより厳密な毒性考察が十分でないとすれば、生理機能に及ぼすさらなる減塩の影響を考えるべきである。食塩摂取量の不足はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を刺激し、他の役割の中でその系の役割は前の塩と健康ニュースレターで強調したように、体内の塩を保持することである。食事ガイドライン示している食事中の推奨塩量(3.8 ? 5.8 g/day)は上昇したアルドステロン量の進展を阻止するには不十分である。メタボリック症候群でアルドステロンのネガティブな臨床的意味と高血圧抵抗性は広範囲であることが現在では一般的に認識されてきた。事実、現在では新しい処方薬剤があり、それの特別な役割はアルドステロン拮抗薬として作用することである。したがって、追加的な化学添加物の影響を受けやすい上に、減塩の影響をさらに受けやすい人々は新しい分野の処方薬を飲む必要がある。

 塩代替は簡単な問題ではなく、消費者にとって心配しないですむ問題ではない。何千年も塩を摂取してきて身体の感覚は慣れてきている。集団全体の減塩が健康に何らかの良い影響を及ぼす確たる事実はなく、反対に意図しない結果の可能性が大きい。政策立案者は入手できる全ての事実を総合的に考えて、この件を合理的に考察する時期である。

引用文献