食塩と高血圧に関する海外の報道　（６）　食塩感受性の自己診断の仕方

たばこ産業　塩専売版　　1994.05.25

「塩と健康の科学」シリーズ

日本たばこ産業株式会社海水総合研究所所長

橋本壽夫

食塩と高血圧に関する海外の報道（６）

食塩感受性の自己診断の仕方

　食生活で食塩の摂取量に注意しなければならない人は食塩感受性の人であるが、その比率は多くない。しかし、食塩感受性の簡便な診断法はまだ確立されておらず、そのため全員が減塩しなければならないような状況で報道されている。この度はアメリカの雑誌｢消費者保健報告｣に最近掲載された(1994年4月号)〝塩はあなたの血圧を上げますか？〃という記事を紹介する。この中で紹介されている食塩感受性の自己診断法は塩と健康問題に関心を持ち、食塩摂取量を心配する人には参考になると思われる。
　ほとんどの人々はどれだけ沢山塩を食べているかについて心配する必要はない。どうしたらよいか話しましょう、という書き出しで次のように続いている。
　塩はアメリカの食事では脂肪の次に悪い栄養素として広く考えられている。アメリカ心臓協会、国立心臓･肺･血液研究所のような公共の保健機関は高血圧であるなしにかかわらず、すべての人に塩の消費量を減らすように促している。しかし、塩は大多数の正常な血圧者やほとんどの高血圧者にも影響をほとんど、あるいはまったく与えない。血圧が塩に応答しない普通の人々が血圧をある程度下げるためには少なくとも塩の消費量を半分にする必要がある。

塩と血圧

　塩と血圧に関する非常に大規模で注意深く設計された観察調査はインターソルトと呼ばれる国際プロジェクトで、32ヶ国､1万人以上が調査された。インターソルトの研究者たちは劇的に食塩摂取量を下げれば、人々の平均的な拡張期血圧は1ポイントだけ下がり、収縮期血圧は2ポイント下がると計算した。他の研究は高血圧者だけに焦点を置いている。
　それらの研究の示唆によると、減塩は正常血圧者よりも高血圧者で効果があるが、概して低塩食を正当化するほどにはまだ十分解明されていない。
　ある種の高血圧の人々は塩に対して著しく感受性がある。患者が減塩すると血圧が下がることを医者は知っており、介入試験は臨床的にそれを示してきた。減塩は血圧をある程度下げ、高血圧者の30～50％で少なくとも収縮期血圧または拡張期血圧を5ポイント下げた。理論的には、血圧が塩と強く反応する人は比較的腎臓の効率が悪く、血液からあまりナトリウムを除去できない。ナトリウムは体液を保持する原因となり、血液量も増える。この時、動脈に柔軟性がなく十分膨脹しなければ、血圧は上昇する。

誰が塩に感受性か？

　利尿剤がよく効く高血圧者は低塩食にも同様によく応答する。この理由は明らかでない。食塩感受性は肥満者、老人、黒人、食塩感受性の家族歴を持った人々に普通みられる。しかし、食塩感受性であるかどうかを確実に確かめる唯一の方法は、注意深くコントロールされた条件下で低塩食をテストし、それが実際に血圧を下げるかどうかみることである。
　降圧剤を服用している人は食塩感受性のテスト中はそれを止めなければならない。そのような人はまず第一に医者に、二、三週間の薬剤中止が安全であるかどうか相談しなければならない。
　そしてテストを考えている人々はすべて、例えば腎臓疾患を持っているとか、一時的にせよ減塩すべきでない理由があるかどうか尋ねるべきである。

自分でテストする方法

　最初に信頼できる家庭用の血圧計が必要である。血圧計を買ったらそれを医者に持っていって較正し、適正に使えることを確認する。それから次のステップに従ってテストを進めていく。
　 ■ナトリウム摂取量を1日約2,000ミリグラムまたは、およそ茶さじ1杯に減らす。
　■食塩摂取量を正確に計算するために、24時間尿試料中のナトリウム排泄量を医者に測定してもらう。これは塩テストの二週間目と四週間目の終わりにする。
　 ■一週間に二、三回、午後遅くか夕方早くの同じ時間に、同じ環境で血圧を測定する。血圧を測定する前に約5分間静かに休む。そのあと5分間で三回測定する。最初の測定値を除き、次の二回の測定値を平均する。
　 ■食塩感受性であるかどうか調べるために、低塩食を1ヶ月間食べる。二回の連続した測定日で収縮期血圧か拡張期血圧のどちらかが少なくとも5 mmHg低下するかどうか観察する。そのような低下があれば食塩感受性であり、1日約2,000ミリグラムの制限を続けるべきである。
　血圧にほとんど、あるいはまったく影響がないネガティブなテスト結果であれば、あなたが普通に食べている塩の量はあなたの血圧を上げる心配はないので、普通の食餌に戻すことができる｡(しかし、このテストはあなたが普段食べている以上に塩を食べても安全であることを証明するものではない。)
　食塩感受性は年齢とともに高くなることがあるので、二、三年後、あるいは血圧が上がり始めたらすぐにこのテストを繰り返した方がよい。
　以上のような記事であるが、2,000ミリグラムのナトリウムというと塩にして5グラムであり、味噌、醤油、塩などの調味料は一切使わず、漬物も食べないときにほぼ達成される量である。高血庄を心配する方は一度試されては如何であろうか。