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たばこ塩産業 塩事業版  2015.10.26

塩・話・解・題 127 

東海大学海洋学部 元非常勤講師

橋本壽夫

 

イギリス塩協会の情報発信サイトから

 2 保健に対する塩の有益性

 

 先月に引き続きSaltSenceのサイトから保健に対する塩の有益性について紹介する。塩に関して新しい事実が学術誌に発表されると直ぐにその要旨を知らせてくれるウォッチャー的サイトだ。その他、生理学的な塩の重要性については何回となく訴えている。

 

健康に良い新たな証拠

塩の保健効果(2015.9.11)。イギリスの食品標準局が定めた1日当たり塩推奨許容量は約20年間変更されていない。2003年にこの値の変更を検討したとき、利用できるデータがなかった。その後の12年間で塩は健康に基本的に悪いという意見に疑問を呈する新しい証拠が明らかにされてきた。塩が健康に良い理由を6つあげる。

1.塩は心臓血管疾患の危険率を増加させない証拠がある

 2013年にアメリカの医学研究所は塩摂取量を6 g/日以下にする減塩努力を支持する証拠はなく、減らしても有益な効果はないと発表し、ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンは現在の推奨値に疑問を呈する結果を発表した。

2.ストレスを緩和

 体内の塩分が高いことによりストレス・ホルモンの分泌が阻止されストレスが緩和される。塩の主成分であるナトリウムが闘争心を抑制するので、人々は塩をある程度欲しがるのかもしれないとハイファ大学心理学部(イスラエル)の研究者達はいう。

3.睡眠を改善する

 低塩食は睡眠を妨げると人々はいう。ストレス・ホルモンの分泌が阻止されないからだ。

4.消化を改善する

 胃のpHを適正に維持するために塩を必要とする。胃酸の成分は塩酸で、塩酸は摂取した塩に由来し、食物を消化する基本的な物質である。

5.塩は筋肉収縮を刺激する

 塩は筋肉と脳とを結ぶ神経に作用し、行動をコントロールする電解質を提供する。塩は運動中の筋肉痙攣を抑える。

6.塩の欠乏は危険となる

 低い塩摂取量と通常の塩摂取量とを比較したときの死亡率の高さは、高い塩摂取量と通常の塩摂取量とを比較したときの死亡率よりも全ての死因で危険率が高いと、アメリカ高血圧学会誌のレビューは結論を下した。

 塩は日常生活の基本的な物質で、特に保健に対しては欠かせない。かしこい塩摂取量で楽しめる多くの保健効果がある。

暑さの中で運動能力を維持するには(2015.7.3)。暑さの中で運動能力を維持するには水と塩の不足にならないようにすることが重要。熱中症になったとき、塩辛い汗かき(salty sweater:汗の塩分が高い人)は他の人々よりも暑さに関連した病気で悩まされやすい。塩辛い汗かきの人に-塩辛さを甘く感じる、汗が目にしみる、衣類や肌に塩がつく、しばしば筋肉痙攣をおこす、脱水症状をおこす-などの兆候がでると、低ナトリウム症状になっている。体が水を吸収し保持する比率を増加させるには塩を必要とする。塩辛い汗かきにとってはスポーツ・ドリンクによる塩分補給だけでは不十分。特別な塩を入れた電解質ドリンクを使用する競技者は耐久競技で運動能力を向上させる。競技前にあらかじめ特別に塩を摂取しておくことも長く激しい運動には役立つ。運動後の疲労回復にも食物に塩を振りかけて激しい発汗で失われた塩を補う。

塩欲求の理由(2015.6.11)。世界各国の50年間にわたるデータを解析して2014年に発表された塩摂取量は1日当たり6.6 g – 12.2 gの狭い範囲内にあった。極端な事例では6世紀のスェーデンでは塩蔵された魚から人々は100 gの塩を摂取していた。塩は我々の体を健常な状態に維持するために必須なミネラルであり、水分保持、筋肉収縮、消化に重要な役割を演じている。塩欲求に陥ると次には塩欠乏の危険性が生ずる。

 

免疫防御力を高める

塩は感染を予防する(2015.3.5)。高塩食は皮膚を保護することが分かった。皮膚に塩が蓄積し、微生物の侵入を予防し、免疫防御力を高める。

  (この後、話題が変わり、1日当たり6 gに設定された推奨許容量の妥当性に疑問を呈して、減塩の危険性に関する次の論文を紹介している。) 3年間以上、17ヶ国からの10万人以上を追跡調査し、塩摂取量が1日当たり7.5 g以下の人々は7.5 g15 gの塩を摂取したと推定される人々よりも死亡の危険率が27%高いか、または心臓発作や脳卒中のような重大な疾患を発症させることが分かった。アメリカの医学研究所が2013年に発表した報告書では、塩摂取量を6 g/日以下にする努力を支持する証拠はないとしている。8年間に4千人のヨーロッパ人を追跡した2011年の報告では、心疾患の危険率は最高塩摂取量の人々よりも低塩摂取量グループで56%高かった。

一層健康で幸せにする塩の5大効果(2015.1.12)

健康状態をいっそう良くし、幸せになるために塩が役立つ5大効果がある。

1.ストレス低減

 ハイファ大学心理学部の研究者達は、塩の主成分であるナトリウムがうつ病抑制に役立つので、人々はある程度塩を欲するのかも知れないと言っている。

2.熟睡

 塩はストレスの強さに独特な効果を発揮することを研究は示している。血液中の十分なナトリウム量はストレス応答を下げるので、心配で眠られないことはなく熟睡できる。

3.健康な肌

 塩は汚れ、脂、毒物を吸収し、皮膚の毛穴や汗孔を清潔にする。コップ1/3の塩を浴槽に加え、温水で満たし、15 – 30分間浸す。肌が和らぐ。海塩で吹き出物が治る。

4.冬風邪を撃退する

 塩水でうがいしてひりひりする喉を和らげる。塩は炎症を静め、細菌を殺すのに役立つ。

5.もっと運動を

 スポーツ運動医療科学による研究は激しい運動や競技の前に塩を摂取することは熱耐性を改善し、悪い効果(筋肉痙攣や脱水症)を減少させる。

誇張された塩と高血圧との関係(2014.10.13)。塩摂取量と高血圧との関係は誇張されているとアメリカ高血圧学会誌で発表された。それによると高血圧は世界中で最も一般的な疾患であり、イギリス人口の約30%が患っている。減塩は健康状態を改善すると医学専門家は長い間示唆してきた。

しかし、体格指数(BMI)が主要な寄与因子で、塩は様々な様態で人々に影響を与えることが明らかになってきた。“高血圧発症を予防する対策は体重増加の防止を第一目標とすべきである”と著者らは言っている。ジェームス・ディニコラントニオ博士はアメリカ心臓学会誌に“高血圧の実際の原因因子は塩ではなく砂糖かもしれない”と発表した。アメリカの研究者たちは、高い砂糖摂取量が脈拍数を高め、血圧を上昇させる視床下部に影響を及ぼすと考えている。

塩辛いスナックはストレスを和らげる(2013.5.16)。多くのストレスは免疫不全、鬱病、心労、心臓発作のような健康によくない合併症を引き起こす。ストレスを感じたとき、塩辛いスナックを食べることは健康に良くないと思ってきたかもしれないが、最近の研究では実質的にストレスを軽減させることが分かってきた。ストレスに陥るとストレス・ホルモンであるコルチゾールができる。それが体内にあり過ぎるといくつかの厄介な症状を引き起こす。塩摂取量の増加はコルチゾール量を減らすことに有効であることが分かってきた。アメリカ合衆国の国民健康・栄養調査によるデータは、塩摂取量の低い人で鬱病やストレスが高いことを示している。

新しい研究は高血圧の原因として塩ではなく遺伝的性質を指摘(2012.12.12)28ヶ所の特別なDNA領域がヒトの高血圧と関係していることをマサチューセッツ総合病院の科学者たちは明らかにした。低塩食はヒトの健康に有害な影響を及ぼす(糖尿病や早すぎる死亡の危険率増加)ことを明らかにした。

塩洞窟治療は肺の清浄と喘息治療に役立つ(2012.10.9)。喘息は急増しており、イギリスでは410万人以上の子供たちが喘息を患っている。人々は喘息や呼吸器系疾患の治療のために塩洞窟に行く。塩洞窟治療は塩洞窟または7,8トンの塩で覆われた治療室で行われる100%自然な非薬物療法である。治療する人々は洞窟内でローブを着てくつろぎながら塩粒子を注入された空気中で呼吸している。これらの粒子は気道中を流れ下り、粘液をサラサラにし、体外に吐き出しやすくする。塩の洗浄効果は副鼻腔や咽喉をすっきりさせるので、非常に楽に呼吸できるようになる。

毎年多くの子供たちが喘息と診断され、塩洞窟治療は喘息を治療する最良の方法であることが証明された。

 

血圧を下げる2つの食品

血圧を下げるには、チョコレートと塩付きピスタチオをもっと食べよう!(2012.9.26)。コクラン共同研究によるレビューは、少量のチョコレートを食べることは減塩効果よりも血圧低下に大きな影響を及ぼすことを示唆している。毎日チョコレートを食べたとき、収縮期血圧は2.8 mmHg、拡張期血圧は2.2 mmHg下がった。同時にアメリカ心臓協会誌に発表された別の研究は、塩付きピスタチオは塩なしピスタチオよりも劇的に血圧を下げることを示した。毎日の食事でピスタチオを食べると血圧に4.8 mmHgという大きな低下を示した。減塩運動家にとって驚きであったのは、最大の血圧低下を示したのが塩なしピスタチオではなく、塩付きピスタチオであったことだ。