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たばこ塩産業 塩事業版  2014.6.25


塩・話・解・題 111 


東海大学海洋学部 元非常勤講師


橋本壽夫


塩は日常生活のトラブルバスター


 


 身近な塩の用途として日常生活のちょっとしたトラブルを解消できる方法を紹介しよう。インターネットで「塩の便利な使い方」をキーワードとして検索すれば現在のところ一件だけ良く整理されたサイトがある。日本のサイトに記載されている以外の利用法を海外のサイトから検索して紹介する。


 塩の物性、化学性を利用して用途が広がり、またトラブル解消の用途にも使われる。塩の性質別に用途を整理して、かっこ内で効果が現れる理由を考え、気付いたことをコメントした。


 


塩の硬度と溶解性を利用して


 塩のモース硬度は22.5で、2.5と言えば人の爪の硬さ。爪で傷つけられる物質は爪より軟らかく硬度は低い。しかし、実際には爪で塩を傷つけることは出来ないので硬度は2.5よりも大きいと思われる。一番硬度が高いのはダイヤモンドで10


塩の硬度よりも軟らかい物質を塩で擦ることで除く。こすり落とした物と残った塩は水で溶かして洗い流す。


  造花の汚れ落し


 紙袋に造花(絹製品、ナイロン製品)とコップ1/4の塩を入れ、袋を数回振り動かせば購入時と同じように造花はきれいになる。


  クーラーボックスの掃除


 硬水でクーラーボックスに付着した汚れを取るには、塩でボックスの内側をこすり、使用する前によくゆすぐ。(日本では軟水が多いので湯垢[カルシウムやマグネシウムの化合物]が付くことは比較的少ない)


  浴槽の汚れを除く


 塩とテレピン油の等量混合液を作り、浴槽に付いた汚れが取れるまでゴム手袋でこすって、完全にゆすぐ(汚れは前記の場合と同じであると思われる。油と混ぜてペーストにすると塩の粒が飛散することはないので、擦り落しには効果的であろう)。


  木製の食卓にできた水のしみを取り除く


 木製のテーブルに着いた水のしみは、1さじの塩に水を3滴落としてペーストを作り、しみの周りに塗って柔らかい布かスポンジでゆっくりと擦り落とす。その後、家具艶出しで磨く。


  ガラス食器の口紅汚れを取る


 口紅の汚れが付いた足付きガラス製品、ロックガラス、タンブラーを洗う前に塩で縁をこすって汚れをとる。


  焦げた牛乳の汚れを擦り取る


 焦げた牛乳の汚れを塩で取り除く。


牛乳で焦がした鍋を濡らし、塩を振り掛ける。10分間待ってから鍋をこすって洗い落とす。塩は焦げた牛乳の臭いも吸収する。(10分間待つ理由が分からないが、臭いを吸収するためかもしれない。塩には臭いが付きやすい。)


  シャンプー前のふけ治療


 塩振出し器を持って乾いた頭皮に塩を振り掛ける。それから髪にも振り掛け頭皮をマッサージする。5分間放置し、シャンプーしてゆすぐ(5分間放置する理由が分からないが、皮膚表面の水分で溶けた濃い塩水による高い浸透圧でふけや痒みの原因となる雑菌を殺し、汗腺中の汗を引き出す効果があるのかも知れない)。


  浴用石けんを作る


 オリーブ油またはラベンダーのようなキャリアオイルに塩を加えて浴用石けんを作る。それで体をこすってからシャワーで流す。塩は死んだ皮膚細胞を除き、皮膚を若返らせる。


  絨毯をきれいにする


 絨毯に塩を撒き、一晩そのままにしておく。翌日、電気掃除機で絨毯を掃除すると絨毯はきれいになり、塩で小さな虫は寄り付かない。塩水でペットの寝床を洗うと虫が寄り付かない(一晩放置する理由が分からないが、多分、前述した雑菌の繁殖を抑えるためであろう)。


 


塩水の浸透圧を利用する


 塩水の高い浸透圧で、刺された虫の毒液を抽出し、痛みや痒みを和らげる。雑菌の繁殖を抑制する。


  漆によるかぶれを軽減する


うるしや銀杏にかぶれたとき、温かい塩水で濡らして痒みを和らげる。かぶれがひどい場合には、塩水がいっぱい入っている桶に浸す。(筆者の経験ではかぶれではなかったが、アレルギー性皮膚炎で毎冬両太ももの内側に手のひら大の薄赤くザラザラした部分ができ、痒くて悩まされた。入浴時に温まってからその部分を塩でこすり、しみて痛いのをしばらく我慢した後、洗い流してお湯に入った。3年間も続けたら皮膚炎は起こらなくなった。)


  庭のカタツムリやなめくじを駆除する


庭に塩の入った容器を置き、これらの困り者を駆除する(個体の塩に集まって来るかどうかは分からないが、塩水を入れたなめくじ退治トラップで効果をあげている例がある)。


  ごみ箱の臭いを消す


嫌な臭いが漂ってくるゴミ箱を塩で臭わなくする。1/2カップの塩を振り掛け、冷たい水を流して処理する。塩は付着している汚物を引き剥がし、臭いを消す(これまで述べてきたことからすると、なにがしかの放置時間が必要に思えるが、その記述はない)。


○ 口内炎症を和らげる


口の中の潰瘍、膿傷、その他口の中のただれについては、一日に数回薄い温かい塩水で口をゆすぐ。


 


塩水の氷点降下を利用する


 塩水の塩濃度に従って水が凍る温度は下がっていき、飽和濃度では約マイナス21℃にならないと凍らない。逆に言えば、塩水にすることによりマイナス以下の冷水を作れる。


  窓や窓枠の凍結防止


 塩水に浸したスポンジで窓や窓枠を拭いて乾かす。冬には車の中に塩を入れた小さな布袋を置いておく。フロントガラスや他の窓が濡れてきたら袋でそこを拭く。窓には雪や氷が付かない。


  シャンペンやワインを早く冷やす


 アイス・バケットに塩と氷を入れてシャンペンやワインを素早く冷やす。


  歩道の氷を解かす


 氷の張った歩道に塩を撒いて氷を解かす(自宅前の歩道で滑って転び歩行者が怪我をすると訴えられる、とブラッセルに住む友人に聞いたことがある)。


 


毛細管現象―吸い取る


 細かい塩の結晶が集まると、結晶と結晶との間の空間が毛細管の働きをし、液体を吸い上げる。


  オーブンにこぼれた汚れを固まらせない


 鍋が煮え立ち、泡がこぼれたら、焦がさないように冷やす。泡がまだ液体の時、こぼれた所に塩を振り掛ける。鍋が冷えたら、布で汚れを拭き取れる。同じ作業をストーブの上の汚れに応用できる。塩は臭いも除き、心地よい匂いを付けたければ、塩にわずかなシナモンを混ぜておく。


  素早く前処理する


 レストランでサラダドレッシングをズボンにこぼした時、その部分に塩を振り掛け油を吸収させる。家に帰ってからいつものように洗う。


 


溶解性と結晶化を利用して


  造花を固定する


 造花を見栄えよく配置するには塩が役立つ。花瓶か他の容器を塩で満たし、冷たい水を少し加えて造花を配置する。塩は固まり、花は固定される(水分を含んだ塩は流動性がなくなり、土壌の役割を果たす。やがて乾燥して水分がなくなると結晶同志がくっついて塊となって造花をしっかりと固定する)。


 


味覚の抑制作用を利用する


  煮詰まったコーヒーもこうすれば美味しく飲める


 煮詰まって苦くなったコーヒーを捨てる前に、カップに一つまみの塩を入れて飲む(これは、味覚の抑制作用を利用しており、塩で酢の刺激を和らげる寿司酢も同じ作用を利用している)。


 


塩の「性質」以外では――


  油の跳ね返りを防ぐ


 食べ物のフライをする前に鍋に少量の塩を加える。飛び散る油で火傷することなく調理でき、レンジに飛び散った油を掃除する必要がない(油が飛び散るのは突然の沸騰によるものと考えると、細かな泡立ちで絶えず沸騰するようにすれば良いわけで、そのために塩を入れるのではなかろうか。水の突沸を防ぐ沸騰石の役割をしているものと考えられる)。


  コーヒー・パーコレーターをきれいにする


 パーコレーターに水を満たし、塩を4さじ入れる。それからいつものように沸かす。パーコレーターと部品をよくゆすぐ。


  新しいタオルの色があせないようにする


 新しい色物のタオルを洗うとき、最初の23回は1カップの塩を加えて洗う。塩は色を固定するので、タオルの色は長い間変わらない。


  ジーンズを柔らかくする


 新しいブルー・ジーンズを洗うときにコップ1杯の塩を加えて柔らかくし、色あせを止める。


  うろこを取り易くする


魚を5分間塩水に浸けると、魚のうろこが取れ易くなる。


 


 以上、塩の性質で整理できなかった用途では効果が現れる理由がよく分からないことが多いが、ものは試しと言うこともある。