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たばこ塩産業 塩事業版  2007.12.25

塩・話・解・題 33 

東海大学海洋学部非常勤講師

橋本壽夫

 

世界の塩事情

2007年の塩経済」から

 

 「塩経済」との表題で過去11回にわたって出版しているロスキル・インフォメーション・サービシーズ社は「2007年の塩経済」を12版として出版した。この中からいくつかのデータを紹介する

急速な工業化 中国が世界一  生産量

 世界の地域別塩生産量を表1に示す。中国の急速な工業化の進展に伴って、2006年には2.56億トンを記録し、2000年からの6年間に年率平均2.8%の増加を示してきた。これから先5年間で平均3%の増加が見込まれ、2012年には3億トンに達する見込みである。

表1 世界の地域別塩生産量 (千トン)
地 域 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
アジア 58,370 56,259 61,459 54,964 60,130 72,784 77,963
ヨーロッパ 59,814 61,512 62,252 63,747 68,497 69,060 68,925
北アメリカ 66,614 67,012 60,843 64,965 68,696 68,347 68,838
南アメリカ 13,654 14,264 11,943 15,519 14,178 16,418 16,367
オセアニア 8,977 9,285 10,092 10,634 11,182 12,534 12,490
アフリカ 4,024 4,536 4,766 5,052 5,487 5,409 5,455
中東 3,122 3,217 2,994 2,845 3,118 3,101 3,131
中央アメリカ 2,044 2,089 2,173 2,330 2,380 2,396 2,396
合 計 216,619 218,174 216,522 220,056 233,668 250,049 255,565
塩の経済 2007 ロスキル

 国別の塩生産量では表2に示すように、2005年まではアメリカが第一位であったが、2006年には中国が第一位となった。中国のこの6年間を見ると平均9%という驚くべき成長率であった。しかし、その2倍の18.3%という生産の増加率を示しているのはウクライナで、ここ3年間で輸出量がかなり増加しているが、国内の急速な工業化に伴う国内需要の増加を反映しているのであろうか。

表2 国別の塩生産量 (千トン)
国  名 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
中国 35,183 34,548 36,024 32,377 37,100 44,547 54,032
アメリカ 45,566 44,786 40,305 43,700 46,420 45,100 46,000
ドイツ 15,054 14,343 15,633 16,300 18,696 19,000 19,000
インド 15,641 14,284 17,878 14,882 14,761 19,924 15,500
カナダ 12,164 13,725 12,736 13,718 14,096 13,737 13,338
オーストラリア 8,847 9,254 9,961 10,526 11,088 12,444 12,400
メキシコ 8,884 8,501 7,802 7,547 8,180 9,510 9,500
フランス 6,823 8,807 7,894 7,382 7,612 7,739 7,800
ブラジル 6,047 5,578 6,109 6,564 6,648 7,297 7,300
チリ 5,083 5,989 3,503 6,214 4,939 6,068 6,000
オランダ 5,564 5,717 5,773 5,980 5,896 6,155 5,900
イギリス 5,800 6,000 5,700 5,900 5,800 5,800 5,800
ウクライナ 2,287 2,300 2,300 2,906 4,393 4,811 4,800
塩の経済 2007 ロスキル

表3には主要生産会社の推定塩生産量を示した。中国国家塩産業(China National Salt Industry Corporation :CNSIC)が2千万トン近くの生産量でトップにある。この会社は国内の改革と経済的統制事項に関して政府と産業に資する共同体として1950年に設立されている。自社工場と中国国家塩グループ(China National Salt Group :CNSG)子会社の工場を合わせて今や世界最大の塩生産者になった。全体の生産量が表2に示すように2006年で54百万トンであるから、それとの差36百万トンは他の塩生産会社の生産量となる。それを窺わせるのが表4に示すアジアの主要生産会社の2007年推定生産量で、この中に中国の会社が8社あり、合計で1,640万トンとなるが、他にも多くの生産会社がある。

表3 主要塩生産会社の推定生産量 2007年 (千トン)
会  社  名 国  籍 推定生産量
中国国家塩産業 中国 18,700
K + S ドイツ 16,600
カーギル アメリカ 14,000
コンパス ミネラルズ アメリカ 13,720
モートン ソルト アメリカ 13,100
ソルベー ベルギー 12,500
ダンピア ソルト オーストラリア 9,000
エクスポルタドラ デル サル メキシコ 7,000
アクゾ ノーベル オランダ 5,000
塩の経済 2007 ロスキル

表4 アジアの主要生産会社の推定生産量 2007年 (千トン)
会  社  名 所属国 推定生産量
Sichuan Jiuda Salt 中国 3,000
Tianjin Changlu Haijing Group 中国 2,600
Jiangsu Salt Industry 中国 2,000
Nanpu Saltworks 中国 2,000
Qinghai Province Salt Industry 中国 2,000
Tata Chemicals インド 2,000
Nirma インド 1,800
Shandong Yangkou Saltworks 中国 1,800
Gujarat Heavy Chemicals インド 1,500
Jiantai Salt Chemical 中国 1,500
Shandong Haihua Group 中国 1,500
塩の経済 2007 ロスキル


ソーダ工業で実質用途60%  消費量

 2006年の用途別塩消費量を地域別に表5に示す。合計で見るとクロールアルカリ、ソーダ灰、食用、融氷雪用がそれぞれ全消費量の38.5, 19.7, 17.5, 14.1%を占めている。ソーダ工業用で見れば、前二者の合計であるから全消費量の60%近くを占めることになる。この用途の地域別ではアジアの消費量が最も多く、これは、生産量に表れているように中国の消費量が急速に増加していることによる。
 食用の消費量もアジア地区が圧倒的に多く、全消費量の62%を占めている。これは人口に比例していると考えられので、アジアの人口の多さが窺われる。文明社会では交通網が発達しており、大都市の多い北半球の降雪地帯では交通網の確保に融氷雪用の塩が大量に使われている。

表5 地域別・用途別の推定塩消費量 2006年 (千トン)
地 域 クロールアルカリ ソーダ灰 食用 融氷雪用 その他 合計
ヨーロッパ 28,000 20,000 4,700 10,000 7,300 70,000
北アメリカ 25,000 850 3,300 25,000 12,350 66,500
南アメリカ 4,500 400 4,200 500 400 10,000
アフリカ 1,250 150 4,200 - 400 6,000
中東 1,750 200 400 - 150 2,500
アジア 38,000 28,300 27,750 500 5,450 100,000
オセアニア 150 500 250 - 100 1,000
合 計 98,650 50,400 44,800 36,000 26,150 256,000
塩の経済 2007 ロスキル

中国は輸入も飛躍的に増加  輸出入

塩は嵩張り、価格の安い物資であるので、生産地近辺で消費される傾向がある。輸送費により経済性が左右される。したがって、貿易量は生産量の18%以下である。表6に主要な塩輸出国の輸出量を示す。オーストラリアは日本、中国、他のアジア諸国に輸出している。メキシコは主として日本に輸出している。他の諸国は近隣の諸国に輸出している。

表6 国別塩の輸出量 (千トン)
国  名 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
オーストラリア 8,246 8,797 9,487 10,108 11,172 11,479 10,911
メキシコ 7,564 6,797 5,925 6,802 7,388 7,356 6,238
カナダ 3,495 4,634 3,695 4,217 4,249 4,003 4,132
オランダ 2,833 2,810 3,868 4,037 4,256 4,382 4,097
ドイツ 2,894 3,030 3,434 3,698 3,207 3,733 3,943
チリ 2,560 4,196 2,794 4,741 3,976 4,865 3,640
ウクライナ 1,285 1,476 1,841 2,072 2,340
アメリカ 643 1,095 694 682 1,126 889 1,001
中国 552 915 969 1,144 811 685 834
ブラジル 761 771 694 666 489 804 751
塩の経済 2007 ロスキル

表7には主要な塩輸入国の輸入量を示す。アメリカには自国で消費するに十分な生産量を持っているが、国内で長距離を輸送するよりも近隣諸国から輸入した方が経済的であるので、多くを輸入している。

表7 国別塩の輸入量 (千トン)
国  名 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006
アメリカ 8,957 12,857 8,156 12,857 11,913 12,136 9,493
日本 7,974 7,866 7,428 7,491 8,061 8,298 8,889
台湾 1,733 1,801 1,869 2,074 2,428 2,357 2,901
韓国 2,370 2,601 3,074 2,841 2,688 2,699 2,683
ドイツ 2,203 1,934 1,449 1,443 1,636 1,672 2,591
ベルギー 3,654 3,473 3,407 1,839 1,410 1,323 2,276
中国 3 4 171 376 2,156 4,213 2,011
カナダ 1,141 1,644 1,375 969 2,149 1,295 1,629
ロシア 569 662 747 797 878 1,167 1,160
チェコスロバキア 650 603 622 681 910 839 1,151
塩の経済 2007 ロスキル

輸入量が大きく変動しているのは、その年の冬期の気象状況によるもので、融氷雪用に使用する量が気候によって大きく左右されるからである。日本は工業用の塩を全量輸入している。
  アジア諸国の輸入量も増加しており、特に中国の輸入量は、生産量が増加しているにもかかわらず飛躍的に増加している。
  表8にはアジア地区の塩輸入国にどこから塩が供給されているかを直近3年間について示した。多くはメキシコ、オーストラリアから供給されているが、近隣諸国からも供給されていることがわかる。

表8 アジア地区塩輸入国の供給源 (千トン)
輸入国 供     給     国
オーストラリア 中国 インド 日本 メキシコ ベトナム その他 合計
2004年
中国 1,125 - 812 5 83 - 131 2,156
日本 3,450 326 370 - 3,901 1 13 8,061
韓国 1,206 361 19 59 1,019 14 10 2,688
フィリピン 265 49 1 - - - 30 345
台湾 1,960 13 3 - 432 13 7 2,428
2005年
中国 1,573 - 2,218 5 237 24 156 4,213
日本 3,998 292 410 - 3,584 1 13 8,298
韓国 1,352 335 32 41 911 19 9 2,699
フィリピン 298 18 1 - - - 15 332
台湾 2,018 9 23 - 294 5 8 2,357
2006年
中国 1,330 - 196 14 320 - 151 2,011
日本 3,657 297 512 - 4,401 8 14 8,889
韓国 1,266 436 29 - 926 15 11 2,683
フィリピン 263 100 7 - - - 13 383
台湾 2,343 11 24 - 512 3 8 2,901
塩の経済 2007 ロスキル

企業の合併・買収

21世紀に入り欧州で大再編

 この10年に塩産業では合併により何社かの大手塩生産者で所有者が代わった。2001年以来、特にヨーロッパで大きな再編成があった。2000年以来行われた大きな合併は次の通りである。

×         ×         ×

2000年:ドイツのK+S社はオランダのフリマ社を買収し、フリシア・ザウトを設立したが、   2001年にはヨーロッパ・ソルトのジョイント・ベンチャーに移管。ローム・アンド・ハース 社はフランスの塩部門をユニオン・エテュード・インベスティメントに売却

2001年: ダンピア・ソルトはポート・ヘッドランドのカーギル・オーストラリア塩田を取得

2002年:ドイツのK+S社とベルギーのソルベー社はヨーロッパ・ソルトのジョイント・ベン チャーを設立し、両社の塩販売を開始

2003年:コンパス・ミネラルズ社がIMCグローバル社の塩部門に移管。ズッドザルツはズッ ドウエストドイッチェ・ザルツベルグ社の子会社SWSアルペンザルツ社を前の所有者のデガ ッサから資本金の49%を獲得して単独所有者に。チリのソシエダッド・プンタ・デ・ロボス 社はブラジルの製塩会社サリナ・ディアマンテ・ブランコを買収

2004年:三井はオーストラリアのシャーク・ベイ・リソーシズの子会社を買収。ソルベー 社はヨーロッパ・ソルトのジョイント・ベンチャーの資本金38%をK+S社に売却

2005年:ブリティッシュ・ソルト社はニュー・チェッシャー・ソルト・ワークス社を買収

2006年:ドイツのK+S社はチリのソシエダッド・プンタ・デ・ロボス社を買収。三井はアク ゾ・ノーベル社が所有していたオーストラリアのオンスロー・ソルトの株を87.3%獲得

 上、世界の塩産業の状況を紹介した。
  国際的な競争力を持つためにどの分野でも企業の合併・買収が盛んに行われている。
  海外では塩産業についても早くから行われてきた。近年、日本でも目立つようになったが、買収を行っているのは国内の投資会社である。
 今後、海外の製塩企業、投資会社が参入してくることも考えられ、将来、日本の塩産業がどのようになっていくのか予測できない。