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塩を振り掛ける、振りかけない?研究は減塩を疑問視

To Salt or Not to Salt?
Study Questions the Benefits of Reducing Dietary Sodium

By Alice Park

TIME 2011.11.09

 

 何十年もの間、アメリカ人は心臓発作や脳卒中の危険率を下げるために減塩するように専門家達は勧めてきた。しかし、新しい研究によると減塩は血圧を下げる一方で、別の心疾患の危険要因であるコレステロールをわずかに上昇させるかもしれない。

 オランダの研究者達は、減塩は正常血圧者で血圧を1%下げ、高血圧者で3 – 5%低下させるとアメリカ高血圧学会誌で報告している。しかし、他の変化はそれらの利点を相殺するかもしれない:減塩する人々はコレステロール値を2.5%増加し、トリグリセライドを7%押し上げた。高血圧のように、コレステロールとトリグリセライドの上昇した値は心疾患の危険因子である。過多なトリグリセライドは糖尿病にも寄与する。

 その結果は前に発表された167件の研究のメタアナリシスの結果であった。研究の参加者達は低塩食か高塩食のいずれかにランダムに割り当てられた正常血圧者と高血圧者であった。その後、研究は多くの異なった代謝要因を測定し、それには血圧、脂質値、レニン(体内のナトリウム値が非常に低くなったとき、腎臓から放出される)と呼ばれる酵素値、アルドステロン(血圧を上昇させるナトリウムと水を再吸収する腎臓を助けるホルモン)が含まれていた。塩摂取量の低下はこれらのホルモンも増加させた。

 コペンハーゲン大学病院で研究の主導著者ニール・グラジュアルがHealth.comで語ったように:“血圧低下は多分、心血管疾患死の危険率を改善または低下させ、他方、コレステロールの増加は危険率を増加させるだろう…ことを我々は知っている。これら二つの相反する効果はお互いにバランスを取るだろうから、正常血圧者に及ぼす減塩の正味の効果はないだろう。”

 心臓を守るための減塩について現在の研究は一般的なアドバイスに疑問を呈する最初のものではない。我々がここに述べる報告で、減塩は心臓関係の疾患で死亡する人々の危険率に影響を及ぼさないことを研究者達は知った。“私の意見では、減塩勧告をすべきでない。減塩勧告を出すほど十分な科学的根拠がないからだ。”とグラジュアルMSNBC.comで語った。

 新しい研究に限界があるとしても、結果は好き放題に塩を摂取することを許してはいないと専門家達は言う。一例を挙げると、解析に含まれている研究は短期間(通常1ヶ月以下)だけの参加者を観察しており、それでは食事の変化に体が十分に適応するには短すぎる。それに加えて、コレステロール値のわずかな上昇の多くは、動脈壁に蓄積されたり心疾患に寄与する原因となるLDLまたは悪いコレステロールを含んでいなかった。

 平均して研究に含まれた参加者達は8.5 g/d(ほぼ平均的なアメリカ人の摂取量)を、高血圧者は5.5 g/dの塩摂取量であった。アメリカ合衆国保健局は成人に5.8 g/d以下の塩摂取量、高血圧者、50歳以上の老人、アフリカ系アメリカ人を含むいくつかの危険グループについては3.8 g/dと言う限界値を勧めている。

 “我々は多くの(多過ぎる)塩を食べているが、現在のアメリカ人の食事の塩含有量を下げても誰かを害するとは思わない。”とアメリカ心臓協会の代表者でありペンシルヴァニア州立大学の栄養学教授であるペニー・クリス‐イサートンはHealth.comに語った。

 一律の減塩は必要でない、特に塩を食べ過ぎない正常血圧者については必要でないことをいくつかのデータは示唆しているが、減塩はたとえ少しでも血圧に有益な効果を及ぼすことを現在の研究は示している。したがって、アメリカ心臓協会と他の保健グループは人々に減塩し続けるアドバイスを続けているが、体に及ぼす塩の効果の知識はまだブラック・ボックスである。