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無毒の塩水電池プロトタイプが充電式電池に革命を起こす可能性がある

Nontoxic, Salt Water Battery Prototype Could Revolutionize Recyclable Batteries

By Scott Snowden

Forbes 2019.03.29

  インペリアル・カレッジ・ロンドンの物理化学部の研究チームは塩水と数秒間で充電できる無毒物質を使った電池のプロトタイプを開発した。充電しながら色が変わっていく新しいプロトタイプの背景にある設計原理はエネルギー貯蔵、生物学的センシング、および変色材料のために新しい装置を作るために既存の電池技術にも応用できる。

 現在、最も広く使われている電池はリチウム・イオンをベースにしており、したがって、それらは比較的高容量で、そのことは大量に充電出来ることを意味しているが、放電できずあるいは急速にエネルギーを再充電できない。それらは有機性の電解質と有毒で可燃性である他の材料も含んでおり、注意深い取り扱いと廃棄が必要であることを意味している。

 新しいプロトタイプ電池は代わりに特別に設計された薄いプラスチック・フィルムと簡単な塩水を使う。通常のリチウム・イオン電池よりも充電量は少ないが、プラスチックの長い分子鎖のポリマーで作られたプロトタイプはほんの数秒で充放電できる。これらの材料の有益性に加えて、充電するにつれて色も変わるので、電池の充電状態を使用者は容易に認識できる。プロトタイプは充電率を改善し、既存電池の毒性を減らすための道を開ける、または全く新しい種類の電池製造の道を開く。

 「我々がプロトタイプ電池を作るために使った材料は潜在的に低コストで作られ、無毒で不燃性の水をベースにした電解質の使用と組み合わせた。このアプローチは充電式電池を開発するために実行可能な道である。」と共同主執筆者のアレクサンダー・ジョバンニッティ博士は言った。

 比較的容量が小さいがより早い充電時間の電池は、素早くエネルギー変換をする必要性のある使用範囲を持っているが、電池は小さい物である必要はない。ポリマー材料は柔軟性を与える添加物として、あるいは陽極と陰極を分離する電解質として前の電池では上手く使われてきたが、水中で稼働する電池電極で活性のある材料としてそれらの有効な使用は過去においては困難であることが証明された。

 劣化することなく素早く可逆的に塩水から陽イオンまたは陰イオンを取り込み放出できるポリマー材料の設計でブレークスルーが計られた。水ベースの電池は毒性元素を含まないので望ましいが、水中のイオンを電極と可逆的に交換することは難しかった。ロンドンのチームは、導電性ポリマーの「バックボーン」に取り付ける側鎖を設計することでこれを避けた。側鎖用にポリマー材料を使うことによって、材料は水と高い親和性を持った電極を作成できた。

 この原理で、材料は水から材料の反対のイオンを取り入れられる陽極と陰極を作られる-そして材料は電池用の成分を持った。ポリマーのバックボーンは既に柔軟性であるので-電池の充放電で膨張収縮する-添加物は必要なかった。一見して、上のビデオ(省略)は何も起こらないようである。しかし、それは充放電したプロトタイプ電池を実際に示している。充電されると、陽極(左側)は濃い青色から透明に変わり、一方、陰極(右側)は緑色から褐色を通して鉄鋼の灰色に変わる。

 「塩水を使うと、毒性と可燃性の懸念がなくなるが、他の有機性電解質と比較して装置に出入りできるエネルギー量を制限する可能性があるため、使いやすさは簡単ではない。」と共同主執筆者のデビッド・モイア博士は言った。「我々はここでこの制限をどこまで押し上げられるかをテストしたいと思う。我々はよい安全な材料の組み合わせにより性能低下を補ったが、性能を改善することは、安全で持続性でもある全く新しいタイプの実行可能なエネルギー貯蔵装置への道を開く可能性がある。」

 インペリアル・カレッジ・ロンドンの物理学科のこの研究は王立化学協会のEnergy and Environmental Scienceに発表された。