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              フェイクな塩問題  

The Fake Salt Problem

By Jonathan Fahey

Forbes 2009.09.23

 

 我々の味蕾は味覚器官である。味蕾は幾つかの化合物に応答する-他の化合物には応答しない-ように進化し、我々に毒物である物を避けさせ、我々が健康を維持し続けられる食べ物だけを食べられることに役立っている。

 我々はポテト・チップスをどのようにしてそんなに安く出来るかを見出すまで、味覚系を上手く作用させられなかった。

 好きな食べ物を抑えられないほどに味付けする砂糖、脂肪、塩を減らしながら、好きな食べ物の味を再現しようと現在、研究者達は苦心している。ほとんどの食べ物を目立たせる塩味、甘味またはうま味は特に再現することは難しい。人類がどのようにしてその味を認識しているかを科学者達はまだ十分に理解していないからだ。

 “そこは最後の領域である。基本的な発見をしなければならないことがまだある。”とオハイオ州立大学歯学部の口腔生物学部長のスコット・ハーネスは言っている。

 それは重要な問題である。3月に疾患管理予防センターが発表した研究が示唆していることは、ほとんどのアメリカ人は心疾患や脳卒中の危険率を増加させることになる塩摂取量を摂取すべき量の2倍以上摂取している。2歳以上のアメリカ人の平均塩摂取量は2005年と2006年で8.7 g/dであると報告した。40歳以上の人々、高血圧者や黒人(アメリカ人口の70)3.8 g/dの摂取量にすべきで、その他の人々は5.8 g/d以下の摂取量にすべきである。

 “公衆保健関係のため、それは我々の分野で最も重要な活動である。また最も苛立たしい問題でもある。”とフィラデルフィアのモネル・ケミカル・センシーズ・センター長のガリー・ビーシャンは言っている。

 ヒトの味蕾は5つ-わずかに5つの基本的な味:塩辛い、甘い、苦い、酸っぱい、旨い味に応答する。風味ははるかにもっと複雑で、味、匂い、テクスチャー、温度についての与えられた情報を脳が混ぜ合わせて判断するものである。

 正しい化合物が異なったタイプの味蕾細胞の外側にある特別な受容器と結合した時、甘味、苦味、旨味は認識されることを我々は知っている。それらの受容器が何であるかを我々は知っており、研究者達は、それらの受容器に結合して味覚を引き出す完全な形になった分子を調べられる。

 何が酸味を感じさせるか、すなわち、酸細胞の細胞膜のチャンネルをプロトンが通過した時であることを研究者達は知っている。プロトンまたは水素原子は物質を酸性にする。酸っぱいと感じた時、我々は基本的に酸を味わっている。

 ネズミで研究していた時、研究者達は塩受容器の候補物を捕まえたと思った。彼等はナトリウム摂取を制御する多くのタイプの細胞を使って、上皮ナトリウム・チャンネルまたはENaCsと呼ばれる非常に一般的なナトリウム・チャンネルに焦点を置いた。研究者達がネズミのENaCsを阻止した時、ネズミは塩味を感じなかった。

 しかし、ヒトのENaCsが特にENaCsを阻止する鬱血性心不全薬であるアミロライドで阻止された時、塩味認識に何の影響も及ぼさなかった。それでもまだ研究者達は我々に塩味を感じさせるある種のイオン・チャネルを考えている。

 現在、塩代替物は主に塩と塩化カリウムの混合物である。塩化カリウムは苦い塩味を感じさせるが、それが多くなると金属的な苦みを感じ、塩味は遠のく。驚くほどナトリウムのような塩味を感じさせる唯一の他の化学物質はリチウムである。リチウムは代替物としての候補物にはならない。それは毒物である。

 香料会社と食品製造者は非常に欲求不満であったので、彼等は塩受容器の生物学を理解しようと組合を作り、代替物に近付けるようにした。

 多分、ナトリウムは我々の生理に対して非常に重要であるから、庶民の人工甘味料アスパルテームやサッコロースに類似している塩代替物は見つからないだろうと研究者達は思っている。その代わり、研究者達は神秘的なイオン・チャネルを多分開き、我々が少ない塩の量で満足できるようにより塩に対する感受性を高めるナトリウム強化剤を開発する研究をしている。

 スイスの巨大な香料会社ジボーダンは塩強化剤用のビルディング・ブロックとして発酵法の製品を使う新しい技術を持っている。会社の調香師はあまり塩を使わないで総合的に食品に程よく美味しい塩味を作り出すために発酵産物と他の化合物を組み合わせている。

 強化剤は味を損なわないように食品用に特別に調整されなければならないのが問題である。“ハンバーグとヌードルに応用しようとすると、別々の解決策が必要である。塩味を強化できる風味プロフィールにこの塩代替物を混ぜて、塩代替物で塩味を作り出す。”とジボーダンの国際科学技術部長のロバート・エイラーマンは説明している。

 ジボーダンの味覚研究プログラムの目標は食品中の塩を50%減らすことが出来ることである。幾つかの食品では30%まで減塩出来るようになった。なおより簡単な解決法が望まれる。

 カリフォルニア州サンディエゴにある香料会社セノミックスは、最初のヒトの塩味受容器であるSNMX-29と呼ばれるタンパク質を明らかにした、と主張している。他の研究者達はイオン・チャネルを仮定しているが、セノミックスはそう言わない。会社はその評判の発見についての科学的詳細を公表していない。したがって、研究者達は疑問を持ったままである。

 それでも会社は、塩と塩化カリウム受容を強化すると言われている250種の化合物を明らかにしたと言い、それらを通して新しい塩代替物を開発する希望の方に移っている。

 しかし、我々の味蕾は容易には騙されないことが証明されてきた。結局、誰もチキン・スープを塩代替物で騙すことを望んでいない。ジボーダンのエイラーマンは業界の過去の欲求不満について次のように言っている:“我々は25年間このことを扱ってきた。減塩できるが、スープの味は水臭くなる。”