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より環境に優しく長持ちする電池の秘訣は青である

The Secret to a Greener, Longer-Lasting Battery Is Blue

By David Stringer

Bloomberg Businessweek   2020.09.22

 

     ナトリウムをベースにした技術は幾つかの用途で効果的であることが証明されている。

 

 有名な日本の版画「神奈川沖の大波」の泡立ちに鮮やかな青を与え、ピカソとモネの作品に同じ色を染み込ませた素材が、今日では全く異なるが同じように創造的な仕事に使われている。すなわち、エネルギーを大量に消費する米国のデータ・センターの稼働を維持している。

 18世紀初頭にベルリンの絵具製造者によって開発された色素は、電気自動車以外の産業を対象としたリチウムよりもむしろナトリウムで作られた電池の重要成分である。「それは顔料として、染料として使われ、何世紀にもわたって消費者の製品であった。」とカリフォルニア州サンタクララにあり技術の背後にある電池製造者のナトロン・エネルギー社の最高経営責任者であるコリン・ウェッセルズは言う。「それはまたナトリウム・イオンの貯蔵にも優れていることが分る。」と彼は言い、その結果、高出力で長いサイクル寿命の電池が得られる。

 リチウム・イオン電池はスマートフォンや電気自動車で使われ、乾燥工程30年間に何処にでもあるようになった。BYDのバスはもちろんテスラやフォルクスワーゲンのような自動車から太陽光や風力発電からの再生エネルギーの貯蔵まで使われている。それでも全ての潜在的な用途に最適なオプションではない。車を遠くまで走らせられるエネルギー密度、長い寿命、安定性を優先事項とするからである。そのため世界で高まる電池需要の一部に対応するための代替技術の余地が残されている。

 「リチウム・イオンは万能の解決策ではない。」とボストンのウッド・マッケンジーの上級エネルギー貯蔵アナリストであるミタリー・グプタは言う。「様々な技術が登場し始めており、市場シェアーを獲得し始めている。」亜鉛、ヴァナジウム、あるいはナトリウムなどの材料を使うリチウム・イオン代替品が多くの課題に適していることを証明している。特に再生可能エネルギーを獲得して数時間後に消費者に電力を供給したり、通信塔や鉱山などの遠隔地の工業用地に電力を供給したりするために公益事業者が使用する固定蓄電池である。ブルームバーグLPのエネルギー移行に関する主要な調査サービスであるブルームバーグNEFのデータによると、このセクターは急成長の準備が出来ており、年間設備は昨年の6ギガワット時から2030年には約155ギガワット時に増加すると予想されている。

 2012年にスタンフォード大学からスピン・アウトしたナトロンは石油とガスの巨人であるシェブロン社を含む投資家から約7,000万ドルを調達し、今月はエネルギー省の資金で1,900万ドルを獲得した。これはデータ・センターを停止時にオンラインに保つバックアップ電源システムの電池販売を対象としており、この四半期に電気通信およびインターネット・サービス・プロバイダーの顧客への出荷を開始する、と顧客を指名することを断ったウェッセルズは言う。スタートアップはまたカリフォルニア大学サンディエゴ校の公開サイトで電気自動車の充電における技術の展開をテストしている。

 鉄塩とヘキサシアノ鉄酸塩を組み合わせて製造されたプルシアン・ブルー粉末は、1720年代に溯る初期のレシピでは乾燥した牛の血液と化学物質の混合物に点火して沸騰させることを含んでいたが、電池生産者に重要な利点を提供する。それは安く、幅広く利用でき、その性質は十分に理解されている。最も重要なその化学構造は、エネルギーを蓄え放出する部品である電池の電極用に理想的である。全ての電極は、充電と放電でイオンを吸収し、その後それらを放出するスポンジのように働くとウェッセルズは言う。しかし、プルシアン・ブルーは他の材料よりもイオンを簡単に行き来させる。その品質により、電極は、時間経過と共に分解するリチウム・イオン電池の炭素および金属ベースの電極よりもはるかに長持ちする。

 低コストおナトリウム・イオン電池はしばしば数分以内で急速に充電でき、短時間のエネルギー爆発を素早く提供できる。リチウム・イオン電池とは異なる強みであり、大量のエネルギーを少量で詰め込む能力が高く評価されている。「我々の技術は電気自動車、電気飛行機、家電製品には適していない。」とウェッセルズは言う。

 より豊富で安価な原材料を使用することによるコスト上の利点もある。既存の鉛蓄電池パックとリチウム・イオン製品の両方とも同様の価格で、ナトロンはデータ・センターの顧客に蓄電池システムを販売しているが、電池寿命のために、その技術は長期的には3倍安くなると言われている。

 「ナトリウム地球上で6番目に多い元素で、実質的に無限で、持続可能である。それを収穫し-あまり採掘しない。」とファラディオン社のCEOであるジェームス・キンは言う。会社はイギリスのシェフィールドにあるナトリウム・イオン電池の開発者で、最近、オーストラリアの住宅用エネルギー貯蔵市場に供給し、インドで商用車用の電池を製造することに合意した。

 リチウム・イオン製品で、ブルームバーグNEFによると、原材料となるニッケルやコバルトといった高価な金属の組み合わせは蓄電池の全コストの約60%を占めている。コバルトの不透明なサプライチェーンも一部のエンドユーザーを不安にさせ続けている。それでも製造量は増加し、技術が進歩してきたので、リチウム・イオン・パックの価格は2010年以来ほぼ90%下がってきた。競合他社が一部の市場からそれらを排除したとしても、依然として主要な電池技術である。

 しかし、電池が一連の製品に追加されるにつれて-場合によっては衣類の内部の冷却装置に電力を供給する場合でも-需要が増加すると、一連の原材料を使用してより幅広い種類の電池の必要性が高まる、とカーネギー・メロン大学の機械工学准教授であるベンカット・ビスワナサンは言う。「最終的には基本的に操作する全ての装置内部に電池が搭載される可能性がある。そして、一度その規模に達すると、多種多様な電池が必要になる。」と彼は言う。