塩を食品保存剤として使用する
Using Salt as a Food Preservative
By Ingrid Koo
https://www.verywellhealth.com/ 2024.08.02
塩は昔から食品の安全対策として使われてきた。塩は水分を減らして微生物細胞を破壊することで食品の保存に役立つが、細菌の増殖を防ぐには非常に高い塩濃度(約10%以上)が必要である。これは、我々が食べるほとんどの食品に含まれる濃度よりもはるかに高い濃度である。
ビーフジャーキー、ピクルス、スモークサーモンは、塩を使って保存される食品のほんの一例である。塩を使うと食品をより長く新鮮に保つことができるが、食中毒を引き起こす可能性を完全に排除できるわけではない。
この記事では、塩を使って食品を新鮮に保つ方法、そしてこの方法で保存される一般的な食品の種類について説明する。
塩が食品を保存する仕組み
1) 塩は食品を乾燥させる
塩は食物から水分を引き出し、脱水する。すべての生物は水分を必要とし、水なしでは成長できない。食中毒を引き起こす可能性のある細菌の例外ではない。例えば、バターでは、塩が水分を引き出し、脂肪を残すため、バターが腐るのを防ぐ。
2) 塩は微生物を殺す
塩濃度ガ高いと、水圧の影響でほとんどの微生物(すべてではない)に有毒である。環境中の細胞間を水が行き来し、細胞の両側の塩濃度(およびその他の溶質)を同じにする。塩分濃度が非常に高い溶液では、生物の外側と内側の圧力差により、多くの微生物が破裂する。
塩濃度が高いと、DNAや酵素など、微生物内部の働きにも悪影響を与える可能性がある。砂糖を多く含む溶液も微生物に同様の影響を与えるため、ジャムやゼリーなどの食品保存剤として使用されている。
保存剤としての塩に関する誤解
塩辛い食べ物は塩中毒のリスクがないと思っているなら、もう一度考え直す。食中毒を引き起こす可能性のある細菌の多くは塩の多い環境ではうまく成長しないのは事実であるが、成長するために塩を必要とする細菌もいる。
好塩菌と呼ばれるこれらの細菌は、塩が大好物というわけではないが、塩濃度の高い状態を検知して水分の喪失を防ぐ警告システムを備えているため、高塩分中でも生き延びることができる(耐塩性) 。
また、病気を引き起こすのは細菌だけではないことも知っておく必要がある。カビも塩中毒の原因となる可能性があり、細菌よりも高い塩濃度でも生き延びることができる。
塩辛いとはどの程度の塩分か?
約1カップの塩を7.5カップの水に溶かすと、塩濃度が約10%の溶液になる。その味を想像するには、誤って海水を飲み込んだときのことを考えてみる。10%の塩水は、それよりも約3倍塩濃度が高いことになる。
食品の塩濃度:安全となるほど高いか?
塩辛い物と言えばすぐに思い浮かぶ食品はどれも、細菌の増殖を防ぐための塩濃度の10%という基準にさえ達していない。伝統的な塩漬け食品と考えられている食品でさえその基準に達していない。
塩濃度は、食品の総重量を塩の重量で割って計算する。以下の栄養情報は、メイン大学の一般食品のナトリウム含有量に関する出版物から引用したものである。
塩漬け食品
● ディルピクルス1個:833 mg/65 g = 塩分12.8%
● ビーフジャーキー1個:438 mg/20 g = 塩分2.2%
● ハム1枚:405 mg/28 g = 塩分14.4%
これらの食品には、脱水(ビーフジャーキー)、酸(ピクルス)、防腐剤(ハム)などの追加機能があり、腐敗を防ぐのに役立つ。また、塩漬け食品の多くは、開封後に微生物の増殖を遅らせるために冷蔵する必要がある。
その他の塩辛い食品
● ナチョチーズ・コーンチップス1オンス:201 mg/28 g = 7%の塩分
● 缶詰チキンヌードル・スープ(濃縮)1カップ:850 mg/240g=3.5%の塩分
● ファーストフードのフライドポテト(ミディアム)1個:168 mg/85 g = 1.9%の塩分
塩水と調味料
塩水や調味料は塩分が多いことが知られているが、細菌の増殖を抑制するほどではない。例えば:
● ケチャップ大さじ1杯:178 mg/15 g = 11.8%の塩分
● マスタード大さじ1杯:56 mg/5 g = 11.2%の塩分
● 醤油大さじ1杯:914 mg/16 g = 57%の塩分
塩濃度が高い方が、塩濃度が低い場合よりも腐敗を防ぐ効果があるか?
ほとんどの食用食品では、塩濃度を上げすぎると保存食品の風味、食感、構造に影響を及ぼす。さらに、食品を新鮮に保つために大量の塩を加えると、高血圧などの健康への悪影響を引き起こす可能性がある。
細菌は、塩濃度に応じて成長が異なる。実験のために細菌を日常的に培養する科学研究室では、ルリアブロスまたは溶原性ブロスと呼ばれる溶液を使用する。
溶液には、生物の成長に必要なものに応じて、さまざまな配合と塩濃度がある。塩濃度が約10%の溶原性ブロスもあれば、0.5%~5%の溶原性ブロスもある。多くの溶原性ブロスには、細菌の成長を助ける砂糖や酵母などの成分も含まれている。
食品を安全に保つ方法
アメリカ疾病管理予防センターは、毎年4,88oo万人(6人に1人)が塩中毒に感染し、128,000人が塩中毒で入院し、3,000人が死亡していると推定している。
塩辛い食品は微生物に耐性がないという証拠はたくさんある。塩は解決策ではないかもしれないが、食物を安全に保つために実行できる手順はたくさんある。
● キッチンの安全を守る。例えば、生肉と野菜、果物などのまな板を同じまな板で調理しない。
● 食品は賞味期限よりかなり前に購入する。食品が賞味期限きれでなくても、匂い、見た目、食感が可笑しい場合は捨てる。
● 塩中毒の発生やリコールについて最新情報を入手する。リステリア菌などの牛乳媒介感染症のリスクを減らすために、低温殺菌されていない牛乳は避ける。
● 食べた後はすぐに冷蔵し、安全な食品保存方法を使用する。
● 食品を再加熱するときは十分に加熱する。しかし、再加熱でも塩中毒を引き起こす場合があることに注意することが重要である。ブドウ球菌などの一部の細菌は、熱に耐性で、食品を再加熱しても死滅しない毒素を生成する。
● 塩中毒の兆候と症状を知る。塩中毒の可能性があると思われる場合は、医療提供者に相談する。
要約
塩は食品を保存するのに効果的な方法であるが、食品のナトリウム含有量も増加させる。食品を新鮮に保つために塩を使いすぎると、細菌が繁殖するのに適した条件が整い、逆効果になることもある。
塩がなくても、適切な食品安全対策を実践するなど、食品を安全に保つために実行できる手順はたくさんある。