塩が欲しくなる?それは生活習慣のせいか、
それとも健康上の問題か
Craving Salt? It May Be Your Lifestyle or a Health Issue
By Cristina Mutchler
https://www.verywellhealth.com/ 2025.02.17
塩が欲しくなる場合、その原因は退屈やストレスと言った単純なものかもしれない。しかし、薬の副作用、ナトリウム欠乏、アジソン病のような慢性疾患といった医学的な原因もある。塩への渇望が長引く場合は、何らかの健康上の問題が潜んでいる可能性がある。
人体は生きるために塩(ナトリウム)を必要とする。しかし、ほとんどの人は毎日の食事で十分な塩を摂取している。塩への渇望の原因に医学的な問題がない場合は、生活習慣を改善し、このミネラルの過剰摂取を防ぐことを検討する。
1.退屈
退屈なときに、塩辛い食物を強く欲しがるのは珍しいことではない。研究によると、退屈なときに特定の食物に手を伸ばすと、脳の報酬系が刺激され、ドーパミンのレベルが上昇することが示されている。
退屈を紛らわすための食べ方は、感情的な食行動やパターンである可能性があり、多くの人が好んで食べるスナックは塩辛いもの、甘い物、あるいはその両方である。
2.脱水
体が正常に機能するためには、電解質としてナトリウムが必要である。脱水は、電解質レベルが不均衡になった時に起こる。この不均衡を補うために、塩を欲がることがある。
脳の空腹感をコントロールする脳の同じ部分が、喉の渇きもコントロールしている。ある研究では、実際には水分が必要なのに、体が塩辛いスナックを欲している可能性が示唆されている。
3.食習慣
塩辛い食物を日常的に摂取していると、無意識のうちにナトリウムの必要量を増やしている可能性がある。ナトリウムを多く摂取するほど、塩辛い食物への欲求が高まる。
2020年に発表された過剰な塩摂取に関する報告書の著者らは、塩辛い食品の摂取が成人の塩摂取を促進すると結論付けた。さらに、幼少期の塩摂取量に関するいくつかの理論についても議論した。
ある研究では、幼少期に塩を過剰に摂取すると、生涯にわたって塩辛い食物を渇望するようになることが予測され、また他の研究では、幼少期に十分な塩を摂取しないと、同じ結果になる可能性があることが示唆されている。
4.慢性的なストレス
ストレスを経験すると、副腎からコルチゾールなどの食欲を刺激するホルモンが分泌され、塩辛いもの、脂っこいもの、甘いものへの欲求が刺激される。
ストレスの多い状況では、感情的な過食に陥り、自分を落ち着かせようとすることもある。そのため、慢性的なストレスを感じているときには、塩辛いものを好むという習慣が定着してしまうこともある。
5.睡眠不足
睡眠不足はついつい食べ過ぎてしまうような食物に手を伸ばしてしまう可能性を高める。研究によると、睡眠不足は、塩辛い物、甘いもの、風味のあるものなど、高カロリーの食物への欲求を高めることが分っている。
睡眠不足になると、ホルモン信号が脳の「報酬」部分に伝わり、塩辛いスナックを欲しがるようになる。
6.過度の発汗
運動や暑さなどで大量に汗をかく人は、塩辛い食物を欲しがることがある。これは、全身の機能に不可欠な電解質であるナトリウム濃度のバランスを回復させるための体の反応である。これが塩を欲がる理由である場合、喉の渇きや疲労感といった他の症状も経験する可能性がある。
7.PMS
月経前症候群(PMS)とは、月経の1~2週間前に現われる身体的および精神的な症状を指す。この時期には、喉の渇きや食欲の変化、特に塩辛い食物への渇望がよく見られる。PMS期間中に起こる軽度の脱水症状も、この症状の一因となる可能性がある。
8.片頭痛
片頭痛を経験すると、発作が始まる前にいくつかの症状が現われることがある。研究によると、前駆症状の1つとして、塩辛い食物への渇望が挙げられる。これは、塩辛い食物への渇望を摂取することで離脱性片頭痛の緩和に役立つ可能性があるためと考えられている。
9.ナトリウム欠乏
ナトリウムが不足している人は、塩への渇望が生じる可能性がある。この一般的な電解質欠乏症(低ナトリウム血症)は、脳に塩への食欲を促すシグナルを発するきっかけとなることがある。下痢、嘔吐、心不全、利尿薬の服用、特定の腎臓病など、さまざまな原因によって引き起こされる可能性がある。
10.貧血
一部の研究によると、鉄欠乏性貧血(赤血球を作るのに必要な鉄が体内に十分に生成されない状態)では、激しい塩への渇望が現われる可能性があることが示唆されている。
鉄欠乏性貧血の原因はさまざまで、失血、腎臓病、特定の健康状態、遺伝などが含まれる。鉄欠乏性貧血が原因で塩への渇望が生じている場合は、疲労感、ふらつき、手足の冷えなどの症状も現われることがある。
11.アジソン病
アジソン病は、副腎が十分なコルチゾールを産生しないことで起こる希な遺伝性疾患である。このホルモンが不足すると、体は急速にナトリウムを失しなう。アジソン病の症状には、塩への渇望、疲労、色素沈着などがある。
12.バーター症候群
バーター症候群とも呼ばれるまれな遺伝性疾患は、腎臓の塩分やその他の電解質の再吸収能力に影響を与え、これらの栄養素が尿中に失われる。この過剰な塩喪失は、塩辛い食物への強い欲求や、脱水、疲労、痙攣、脱力、骨粗鬆症などの症状を引き起こす。
13.嚢胞性繊維症
嚢胞性繊維症とも呼ばれる遺伝性疾患は、体の臓器に粘液が蓄積する病気である。これにより、栄養素が体内に巡りにくくなり、成長やその他の問題が起こる。
嚢胞性繊維症の人はナトリウムを失しないやすいため、塩辛い食物を欲しがることがある。この疾患は通常、出生直後に診断される。
14.薬
副腎(代謝や免疫系などに関わるホルモンを産生する臓器)に影響を及ぼす特定の薬は、塩辛いスナックへの欲求を引き起こす可能性がある。具体的な薬には以下のものがある:
● トラマドール28
● 抗真菌薬
● グルココルチコイド
● 免疫療法チェック・ポイント阻害薬
● プロテイン・キナーゼ阻害薬
塩への渇望につながる可能性がある薬を中止する前に、必ず医療提供者に相談する。
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時々、体好きな塩辛い食物が無性に食べたくなるのは珍しいことではない。しかし、長期間にわたって塩辛いスナックへの欲求と絶えず戦い続ける場合は、医療機関を受診した方が良いかもしれない。健康状態や摂食障害の兆候となる可能性のある、他の異常な症状がある場合は、医師に相談する。
塩への欲求を抑える方法
過剰なナトリウム摂取は、さまざまな健康問題を引き起こす可能性がある。塩の摂り過ぎは血圧を上昇させ、心臓病や脳卒中のリスクを高める。
食事ガイドラインでは、1日に2,300 mg未満のナトリウム摂取量が推奨されている。アメリカ心臓協会は、特に高血圧の成人は1日に1,500 mg未満のナトリウム摂取量を推奨している。しかし、平均的なアメリカ人は1日に約3,400 mgを摂取している。1日に1,000 mgでも減らすと、健康上のメリットが得られる可能性がある。
健康を改善するための目標達成には、さまざまな方法がある。以下の減塩のヒントを1つ以上試して見て下さい:
● 塩入れに手を伸ばす前に、食物を少し食べてみる。我々は、味をもっと強くしたいという欲求からではなく、習慣的に食物に塩を使っていることが多い。
● 塩の代わりに、ニンニク、ハーブ、黒コショウ、酢、レモンなどの他の調味料を使ってみる。
● 店で超加工食品を買うのではなく、家でおやつを作ろう。自宅で作れば、塩の摂取量をコンクリートできる。健康的な手作りのおやつとして、ひよこ豆をオリーブオイルでローストし、お好みの無塩調味料をほんの少し振り掛けるのがお勧めです。
● 添加塩分を含む缶詰食品は避ける。豆や野菜などの缶詰は、水で洗うことで添加塩分をある程度除去できる。
● 既製品や包装済みのスナック菓子を食べる際は、栄養成分表示を確認する。専門家は、1食あたり140 mg未満のナトリウムを含む製品は安全な選択肢であると推奨している。原材料リストの上位に塩分が記載されている食品は避けた方が良い。
● 塩分は、思いもよらない多くの食品に隠れていることを覚えて下さい。例えば、多くの焼き菓子には過剰な塩が含まれている。缶詰スープ、サラダ・ドレッシング、チーズ、調味料、ソースにもナトリウムが多く含まれている。隠れた塩分を見つけるには、栄養成分表示を確認するのが最善である。
少しずつ塩摂取量を減らすことで、塩への欲求も減って行くであろう。
まとめ
退屈、ストレス、脱水症状などにより、時折、塩が欲しくなるのは自然なことである。しかし、塩辛い食物を定期的に欲しがる場合は、薬の副作用や他の健康状態など、別の根本的な問題が潜んでいる可能性がある。塩への欲求を満たすために他の食品に切り替えても効果がない場合は、他の原因を除外するために医療専門家に相談する。