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塩を摂り過ぎていることを示す9つの警告サインとその対処法

9 Warning Signs You’re Eating Too Much Salt, and How to Fix It

By James Myhre & Dennis Sifris

https://www.verywellhealth.com/       2024.12.16

 

 アメリカ人の90%は、体内の主なナトリウム源である塩を摂り過ぎている。多くの人は顕著な症状を経験しないが、塩の摂り過ぎは高血圧という形で長期的な害を引き起こす可能性がある。アメリカでは成人10人中5人が高血圧にかかっている。

 持続的な喉の渇き、疲労、頭痛、動悸、むくみなど、高ナトリウムの兆候には注意が必要である。加工食品など、ナトリウムを多く含む食品の摂取を控えることで、血圧を管理しやすくなり、心臓病やその他の健康上の合併症のリスクを軽減できる可能性がある。

 

1. 喉の渇きと脱水

 ナトリウムは、細胞内外の水分バランスを維持するのに役立つ必須栄養素であり、細胞の恒常性維持として知られている。これを達成するには、食物から適切な量のナトリウムを摂取する必要がある。

 水分摂取量を増やさずに塩を摂り過ぎると、体はそれを補うために細胞から水分を引き出すため、脱水症状に陥る。喉の渇きが強くなることは、脱水症状の主な症状の1つである。他には、口の渇き、肌の乾燥、組織の水分枯渇による目のくぼみなどがある。

 

2.頭痛

 頭痛は、慢性的にナトリウム濃度が高い場合に起こり得るもう1つの症状である。痛みの原因は必ずしも完全に明らかではないが、脱水が一因であると考えられている。頭痛自体は、一般的に鈍く「締め付けられるような」痛みと表現される。めまい、イライラ、脳のもや(精神的に疲れて集中できない感じ)などの神経症状が現われることもある。

 高血圧自体は、高血圧性危機と呼ばれる医学的緊急事態に関連しない限り、通常は頭痛を引き起こさない。そのような場合、血圧が180/120を超えると、嘔吐、胸痛、発作を伴う激しい頭痛が発生することがある。

 そうは言っても、高血圧で慢性的な頭痛に悩む人には塩摂取量を減らす氷を溶かすが有効であるかもしれないという研究結果もある。2016年にAmerican Journal of Public Healthに掲載された研究によると、低塩食は高血圧がうまくコントロールされていない高齢者のグループで頭痛のリスクを41%軽減するのに役立った。

 

3.疲労

 疲労と衰弱は、高ナトリウム血症として知られる異常に高い血中ナトリウム濃度の一般的な兆候である。これにより、脳の内外の体液バランスが変化する可能性がある。

 ナトリウム濃度が過度に高い場合、脳内の体液レベルが急激に上昇し、脳浮腫と呼ばれる状態を引き起こす可能性がある。脳の腫れは、高ナトリウム血症の初期症状、典型的には頭痛、疲労、筋力低下の一因となる可能性がある。

 脱水は高ナトリウム血症の主な原因の1つである。しかし、ナトリウムの大量摂取だけでは高ナトリウム血症を引き起こす可能性は低い。

 

4.動悸

 ナトリウムは電解質であり、消化、筋肉の収縮、心拍などの重要な身体機能に寄与する電荷を帯びたミネラルである。血液中のナトリウムが多すぎると、心拍を促進する2つの電解質(ナトリウムとカルシウム)のバランスが崩れることがある。

 これにより、動悸と呼ばれる心拍の乱れが生じることがある。ほとんどの動悸は比較的無害であるが、頻繁または重度の動悸は、めまい、ふらつき、胸痛、冷や汗、失神などの症状を引き起こすことがある。

 

5.膨満感と腫れ

 塩を過剰に摂取した場合の主な症状の1つは、膨満感とむくみである。これは、排尿によって排出される量よりも多くの水分が組織に保持される体液貯留が原因である。

 体液貯留は、特に目の周りで顔のむくみを引き起こす可能性がある。重度の心臓、肝臓、腎疾患のある人では、下肢、足首、足に体液が過剰に溜まることがある。これは末梢浮腫と呼ばれる。

 理由は完全には明らかではないが、高ナトリウム食は胃腸の膨満感やガスの原因にもなる。2019年にAmerican Journal of Gastroenterologyに掲載された研究によると、高ナトリウム食はナトリウム制限食と比較して、胃腸の膨満感やリスクを1.2倍以上高める。男性よりも女性の方が影響を受けやすい。

 

6.体重増加

 水分貯留は、高ナトリウム食を摂っている人の一時的な体重増加の重要な要因である。しかし、水分貯留は問題の一部にしか影響を及ぼさないようである。

 2015年にHypertension誌に掲載された研究では、成人と小児約1,240人のグループで、1日当たり1 gのナトリウム摂取量の増加により、肥満リスクがそれぞれ26%と28%に増加した。この研究が注目に値するのは、増加の原因が体液貯留ではなく、むしろ体脂肪量全体の増加であるということである。この脂肪増加の原因は解明されていない。さらなる研究が必要である。

 

7.高血圧

 食事中のナトリウムは体に水分を貯留させ、血液中の水分量を増加させ、血圧を上昇させる。これが高血圧発症の一因となる可能性がある。

 世界保健機関は、1日当たり5 gを超えるナトリウム摂取量は、高血圧と密接に関連しているだけでなく、心血管疾患や死亡のリスクも高まると報告している。ナトリウムを少し減らすだけでも、わずか4週間で血圧が大幅に下がり、これらの合併症のリスクも軽減される。

 ほとんどの人にとって、高血圧は症状を引き起こさない。このため、40歳以上であれば、健康状態が良好であっても、毎年医療提供者による血圧の検査を受ける必要がある。

 

8.消化器系の問題

 体重増加や膨満感に加えて、ナトリウムの過剰摂取は吐き気、胃の不調、下痢などの症状を引き起こす可能性がある。これは、胃腸管内の体液過多によって引き起こされる。

 ナトリウムの過剰摂取は、胃腸内の細菌と酵母の正常なバランス(腸内細菌叢)を変化させる可能性がある。この不均衡は、腸内での正常な体液吸収を妨げ、水様性下痢を引き起こす可能性がある。栄養素の吸収障害(吸収不良)は、腸内に残留した食物の発酵を引き起こし、膨満感、痙攣、ガスの原因にもなる。

 

9.睡眠障害

 高ナトリウム食による体液貯留と高血圧は、さまざまな形で睡眠を妨げる可能性がある。体液貯留は、横になると脚から上気道に体液が移動するため、閉塞性睡眠時無呼吸(気道要因による睡眠中の呼吸停止)のリスクを高める可能性がある。高血圧は、睡眠を妨げる胸痛や頭痛などの症状を促進する可能性がある。

 また、高ナトリウム摂取は、概日リズム(睡眠覚醒サイクル)の調整に役立つホルモンであるノルエピネフリンの生成を妨げるという証拠もある。一度の過剰な塩摂取でも、人によっては睡眠パターンが断片化することがある。

 

長期的な合併症

 塩を摂り過ぎで主に心配なのは、血圧と心臓への影響である。高血圧になると、心臓は体の他の部分に血液を送り出すために、より一生懸命働かなければならなくなる。

 時間が経つと、左心室と呼ばれる心臓の左下の部屋が厚く硬くなり、左心室肥大と呼ばれる状態になる。また、心臓自体が肥大し、心肥大と呼ばれる状態になる。

 高血圧は血管壁に小さな裂傷も引き起こし、体はそれを内皮細胞で補おうとする。これにより動脈が厚く硬くなり、動脈壁に脂肪沈着物が蓄積してアテローム性動脈硬化症と呼ばれる状態になる。

 左心室肥大、心肥大、アテローム性動脈硬化症は、以下のリスク増加にも関連している:

  冠状動脈疾患

  心臓発作

  脳卒中

  鬱血性心不全

  不整脈(異常な心拍リズム)

高ナトリウムの影響を受ける臓器は心臓だけではない。その他の長期的合併症として、次のようなものがある:

  骨粗鬆症(高ナトリウムにより尿中にカルシウムが過剰に排泄されることで起こる)

  腎臓結石(腎臓にカルシウムが蓄積することで起こる)

  慢性腎臓疾患(腎臓に瘢痕を残す可能性のある血圧上昇が原因)

  肝硬変(肝臓の瘢痕化につながる過剰な体液蓄積が原因)

 

どのくらい過剰か?

 1日の摂取量は食品医薬品局が推奨する1日の摂取量を示すために制定した基準である。1日の摂取量は栄養成分表示ラベルで使用され、食品1食分に含まれる1日の推奨摂取量の割合を示す。

 アメリカ保健福祉省が発行したアメリカ人向け食事ガイドラインでは、成人はあらゆる摂取源からのナトリウム摂取量を1日当たり2,300 mg未満、つまり1日当たり塩小さじ1杯未満に制限するよう推奨している。

 それでも、アメリカではこれよりはるかに多くの量を摂取しており、平均して1日当たり約3,400 mgを摂取している。これはアメリカにおける高血圧率の高さを考えると問題である。

 高血圧と診断された人は、ナトリウムをさらに減らす必要がある。アメリカの子供にも同じことが当てはまり、子供も塩を過剰に摂取する傾向があり、その習慣は成人になっても続く可能性がある。

 そのためには年齢や高血圧の状態に応じて摂取量を制限しながら、毎日体が正常に機能するために十分なナトリウム摂取量を確保する必要がある。

グループ

1日の十分な摂取量

1日の最高摂取量

0 - 6ヶ月

110 mg

小児科医に相談

7 - 12ヶ月

370 mg

小児科医に相談

1 - 3

800 mg

1,200 mg

4 - 8

1,000 mg

1,500 mg

0 - 13

1,200 mg

1,800 mg

14 歳以上

1,500 mg

2,300 mg

高血圧成人

プロバイダーに相談

1,500 mg

 

体内から塩を排出できるか?

 十分な水を飲むと体内の余分なナトリウムの多くを排出できる。また、汗をかくほど運動することでも、この効果が得られる。

 食品医薬品局によると、これは標準的なアメリカ人の食事のナトリウムの約70%を占めるレストランの食物や加工食品(包装済み)を避けることで達成できる。

 これは次の方法で達成できる:

  ナトリウム含有量の高い食品をターゲットにする:まず、デリミート、ピザ、ハンバーガー、ブリトー、ポテト・チップス、クラッカー、塩漬け肉など、ナトリウム含有量が常に高い食品の消費量を減らすことから始める。

  比較ショッピング:栄養成分表示ラベルを読み、「無塩」や「減塩」などの用語の意味を理解して、ナトリウム含有量の少ない食品を選ぶ。

  新鮮な食品を食べる:加工食品は、ほとんど例外なく塩が多く含まれている。これには大量の隠れたナトリウムを含むパッケージ入りのソース、マリネ、サラダ・ドレッシング、調味料が含まれる。

  缶詰食品をすすぐ:缶詰の豆、野菜またはイワシをすすぐと、余分な塩をいくらか取り除くことができる。これらの食品には減塩バージョンもある。

  塩の代替品を使う:食卓塩の代わりに無塩の調味料やレモン、新鮮なハーブなどの多数の風味料を使う。

  ナトリウム摂取量の追跡:ます、年齢と高血圧の状態に基づいて推奨される1日摂取量を決定する。次に、日記を付けるか、オンライン・アプリを使用して摂取量を監視する。

 

ラベル表示

表示の意味

ナトリウムふりーまたは無塩

1食分当りナトリウム5 mg未満

非常な低ナトリウム

1食分当りナトリウム35 mg以下

低ナトリウム

1食分当りナトリウム140 mg以下

減塩

通常製品よりナトリウム含有量が25%以上少ない

ナトリウム含有量が少ないまたは軽く塩味がきいている

通常製品よりナトリウム含有量が50%以上少ない

無塩または塩添加なし

加工中に塩が加えられていないが、厳密に無塩または無ナトリウムではない場合がある

 

 減塩食に味覚が適応するには時間がかかるかもしれないが、毎週少しずつ減らしていくと、ほとんどの人は余分な塩をほとんど必要としなくなることに驚く。

 

私は塩感受性か?

 塩感受性とは、高ナトリウム食を摂取した後に血圧が10%以上上昇することを指す。一部の研究では、健康な人の最大30%が塩感受性であり、毎日同じ量の塩を摂取している人よりも高血圧になりやすいことが示唆されている。

 減塩しても血圧をコントロールできない場合は、塩感受性の診断に役立つ尿レニン検査について医療提供者に尋ねて下さい。これにより、高血圧をコントロールまたは予防するために、より積極的な減塩が必要かどうかを判断するのに役立つ。

 

医療治療の選択肢

 食生活の変更や減量、日常的な運動などの介入だけでは、血圧をコントロールするのに十分出ない場合がある。そのような場合、血圧を下げるために降圧剤と呼ばれる薬が処方されることがある。これらの薬はそれぞれ異なる方法で作用する。

 これらには以下が含まれる:

  利尿薬:排尿を促進し、血流から余分な水分を除去することで効果を発揮する。選択肢には、タリトン(クロルタリドン)やマイクロザイド(ヒドロクロロチアジド)などがある。

  アンジオテンシン変換酵素阻害剤:これらの薬は、血管収縮(血管の狭窄)を引き起こす化学物質をブロックすることで血管を弛緩させる。選択肢には、プリニビル(リシノプリル)、ロテンシン(ベナゼプリル)、カポテン(カプトプリル)などがある。

  アンジオテンシン2受容体遮断薬:血管壁の受容体に作用して血管を弛緩させる。選択肢には、アタカンド(カンデサルタン)やコザール(ロサルタン)などがある。

  カルシウム・チャンネル遮断薬:これも血管を弛緩させるのに役立ち、高齢者ではアンジオテンシン変換酵素阻害剤と併用されることが多い。選択肢には、ノルバスク(

ロジピン)やカルディゼム(ジルチアゼム)などがある。

これらの薬で血圧をコントロールできない場合は、次の薬が追加されることがある。

  ミニプレス(プラゾシン)などのアルファ遮断薬

  コレッグ(カルベジロール)などのアルファ-ベータ遮断薬

  カタプレス(クロニジン)などの中枢アルファ作動薬

  ロプレッサー(メトプロロール)などのベータ遮断薬

  テクトゥルナ(アリスキレン)などのレニン阻害薬

 

要約

 塩としてナトリウムを過剰に摂取すると、体液貯留や血圧上昇を引き起こす可能性があるこれにより、極度の渇き、疲労、膨満感、下痢、むくみ、体重増加、動悸、頭痛、睡眠障害などの症状が生じる可能性がある。

 1日当たりのナトリウム摂取量を2,300 mg以下(高血圧の場合は1,500 mg以下)に制限することで、これらの症状を緩和し、心臓発作、脳卒中、慢性腎臓病、肝臓病などの長期的な合併症を防ぐことができる。