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次世代ナトリウム・イオン電池とより安全なリチウム・イオン電池

Next-generation Na-Ion Batteries & Safer Li-Ion Batteries

By Shinichi Komaba

https://www.tus.ac.jp より   2020

 

 駒場慎一教授は研究することの少ない道を歩んでキャリアを築いてきた。彼の道は、より環境的に持続可能な将来とより入手可能なエネルギー構造に世界を導くのに役立つ。「私の実験室で、我々はエネルギー、安全性、そして価格で進歩した性能を持つ新しい充電式電池を開発するために研究している。」と駒場は説明する。駒場は強い夢を持っている:彼と彼のチームは商業的に利用できる充電式ナトリウム・イオン電池を世界にもたらすのに役立てようと努めている。そうすることで、彼は充電式電池の常識的な知識を書き換えるようとする一匹狼として過去10年間の大部分を過ごしてきた。そして彼はその途中にいる。

 

不可能を可能にする

 リチウム・イオン電池は1991年に市販されて以来、実用的な充電式電池用の標準となってきた。それらは軽く、どの電池よりも最高のエネルギー性能を持っており、携帯電話、コンピューター そしてカメラのような機器用に最適となっている。「15年ほど前に本格的に私が最初に電池研究を始めたとき、携帯電話が流行始めたばかりであった。ますます軽い電池を作るための競争があった。」と駒場は言う。全ての目はリチウム・イオン電池に置いていた。会議で、ほぼ全ての論文が本質的にリチウム・イオン電池性能を向上させることについてであった。まるで基本的な電池研究が終わったと言うコンセンサスのようであった、と駒場は言う。「皆がリチウム・イオン電池を研究していた。とても狭い焦点であった。私には向いていなかった。私は何か違ったことをしたいと思った。」と彼は説明する。

 そこで異なった考えを持つ駒場は結局異なった方向の道を歩み始めた。リチウム・イオン電池には多くの勧める事があるが、欠点もある:リチウムは限られた資源であり、リチウム・イオン電池はコバルトのような高価な化学物質を必要とし、安全性の記録は爆発事故に対して完全に満足できるものではない。特に、タブレット・コンピューターや電気自動車のような新しい用途のためにリチウム・イオン電池の需要が上昇していることは希少性の問題を浮き彫りにした。対照的に、ナトリウムはほとんど至る所にあり、非常に安く、ナトリウム・イオン電池は既存の電池製造プラントを使えると考えられる。

 

たどる道が短い

 この背景に対して、駒場はナトリウム・イオン電池に焦点を当てることに決めた。誰もがそれは不可能と言った。科学者達と他の専門家達は、ナトリウム・イオン電池は夢のようなものと長い間言ってきた。今日、それは問題ではない。駒場はこれらの反対者達が間違っていることを証明した。商業的なナトリウム・イオン充電式電池に対する障害は残っているが、多くは克服されてきた。

 最初の障害は2004年に来た。日本南部にある九州大学教授による研究は、ナトリウムは鉄と上手く機能し、リチウムはコバルトと電池の充放電サイクルでうまく機能することを示した。「当時、私はこの分野を研究していた非常に数少ない人々の一人で、結果は本当に私を驚かせた。」と駒場は説明する。

 より大きな学術的機会を感知し、科学研究の温床にあると言う考えを味わいながら、駒場は2005年に東京理科大学に奉職した。大学は完全に適合していることが証明されている。化学や物理の他の分野で研究している約30件の実験室や専門家達によって囲まれていることは彼自身の研究に寄与するヒントや情報をしばしば得られると駒場は言う。「どこでも電池科学を研究できるが、日本は電池研究の最先端に長くいた。そしてこのレベルの最先端の研究を非常に市場近くで行え、この技術を実際に市場に出せる非常に多くの会社と研究できる場所は世界の何処にもないと私は考えなかった。」と駒場は言う。

 東京理科大学で一度、駒場は多くの人々が不可能だと言ったことを達成する事に焦点を置いた:高エネルギー密度と満足できる充放電寿命を持つナトリウム・イオン電池を作り出すことであった。2009年に多くの作業後、実行可能な電解質を作り出し、彼と彼のチームは世界で最初の作動するナトリウム・イオン電池を作った。彼の研究は、ナトリウム・イオン電池への関心と研究の急増に火を付けた。「5年後、我々の他に同じ研究を行っているのはわずか3,4ヶ所であった。」と彼は説明する。

 残りの障害は、これらの電池の貯蔵エネルギーを増加させ、より良い電極材料を開発し、駒場と増加している研究者グループが積極的に追跡している分野である。「エネルギー容量と電池性能のチームで、今正に我々は世界の頂上にいると私は言えるが、最近の研究で、競争は強化されてきた。」と駒場は言う。

 

国際的で協調的な性癖

 謙虚な駒場は、電気化学蓄電分野でのこれまでの成功の多くを同僚や前任者達の幸運と研究に帰しているが、明らかに何年にもわたるたゆまぬ継続性が重要である。33名の彼の実験室チームには27人の学生とモロッコからのフランスで教育を受けたポスドクの研究者と中国からのポスドクの研究者がいます。自分の快適ゾーンの外に出ることが重要になる可能性がある、と駒場は考えている。彼自身フランスのボルドー凝縮物質化学研究所で2003年から2004年までポスドク研究者であった。

 フランスで街を歩いていると、人々はしばしば私を中国人と思っていた。私は何時も学生に、人生で少なくとも一度は「アウトサイダー」と呼ばれる経験をすべきであると言っている。」と駒場は言う。ボルドーワインとは別に、フランスでは駒場は、日本の標準である性能の向上をやみくもに追うよりも、むしろ理解を深める目的を持って全ての可能性を引き出すために研究のために科学的研究を行う研究者達の傾向に惹かれた。同様に駒場の研究室には国際的な傾向があり、化学会社や電子器機会社から自動車製造者まで国内と国際企業の両方で約10社と一緒に研究している。

 

長い歴史の中で最新のもの

 日本は1世紀以上にわたって電池発明の最先端にいた。駒場は電池の研究開発で東京理科大学の先駆者の長い列の中で最新者である。事実、東京理科大学卒業者で技術者の屋井先蔵は1887年に乾電池を発明した。そして屋井のように駒場の業績が認められ始めている。20145月に彼はエネルギー科学と持続可能性の分野で新生の革新者と認められるカリフォルニア工科大学の最初の共鳴賞の5人の受賞者の一人であった。受賞理由は駒場の研究を「電気自動車とグリッド用の安全で効率の良い蓄電材料の開発」と述べた。

 ナトリウム・イオン電池はまだ初期である。それはまだ数年しか使用されていない。ナトリウムは常にリチウム兄弟よりも重いが、駒場は潜在的なニッチな道を見ている-ゼロエミッション自動車と固定使用を含む-そこではナトリウム・イオン電池は安価で環境に優しく持続可能なエネルギー解決法であることを証明できる。「リチウム・イオン電池は約30年前からある。ナトリウム・イオン電池は僅かに5年である。20年後にどの様な進歩が見られ、何処にいるのかを言うことは不可能である。」と楽天的な駒場は言う。最終的にナトリウム・イオン電池の性能は同様かリチウム・イオン電池よりも幾つかの点で優れていることを潜在的に照明される、と彼は思っている。

 全てが上手く行けば、駒場慎一の名前は電池歴史の記録でしっかりと定着する可能性がある。