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塩を水に加えると沸点が上がる理由

Why Adding Salt to Water Increases the Boiling Point

By Anne Marie Helmenstine

thoughtco.com より  2020.01.03

 

 水に塩を加えれば、水の沸点は上昇する。沸騰するために必要な温度は水1 kg当たり58 gの塩が溶けるたびに約0.5℃上昇する。これは沸点上昇の1例で、水に限られている訳ではない。塩のような不揮発性溶質を水のような溶媒に加えれば沸点上昇は何時でも起こる。

 水分子が液相から気相に移動させるために周囲空気の蒸気圧力を超えた時に水は沸騰する。水が転移するに必要なエネルギー量()を増加させる溶質を加えた時、2,3の工程が生ずる。

 

塩はどのように作用するか?

 塩を水に加えた時、塩化ナトリウムはナトリウム・イオンと塩化物イオンに解離する。これらの電荷を持った粒子は水分子間の分子間力を変える。水分子間の水素結合に影響を及ぼすことに加えて、考慮すべきイオン双極子相互作用がある:全ての水分子は双極子であり、そのことは片側(酸素側)がよりネガティブで、他方(水素側)がよりポジティブである。正に荷電したナトリウム・イオンは水分子の酸素側に並び、一方、負に荷電した塩化物イオンは水素側に並ぶ。イオンの双極子相互作用は水分子間の水素結合よりも強いので、水をイオンから気相に移動させるためにはもっとエネルギーが必要である。

 荷電した溶質がなくても、水に粒子を加えると沸点は上昇する。溶液が大気に作用する圧力の一部は溶媒分子()ではなく溶質粒子から影響を受けるからである。水分子は液体の境界から逃れるためには十分な圧力を生み出す一層のエネルギーを必要とする。多くの塩(あるいは何らかの溶質)を水に加えるほど、それだけ沸点は上昇する。その現象は溶液中で形成される粒子数に依存する。

 氷点降下は同様に作用するもう一つの束一的な性質である:水に塩を加えると、沸点上昇と同様に氷点を降下させられる。

 

NaClの沸点

 水に塩を加えると、ナトリウム・イオンと塩化物イオンに分かれる。全ての水を蒸発させると、イオンは再結合して固体の塩を形成する。しかし、NaClを沸騰させる危険性はない:塩化ナトリウムの沸点は1413℃である。他のイオン結合固体のように塩は極端に高い沸点を持っている。