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MASA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌) - 塩を加えるだけ

MRSA Just Add Salt

https://www.technologynetworks.com/      2016.08.19

 

 インペリアル・カレッジ・ロンドンのチームは、細菌がその塩濃度をどの様に調節しているかを明らかにした。細菌は食中毒の一般的な原因であり、食品の準備と保管に使用される熱と高塩濃度に耐性がある。チームはこの知識を利用して食品中の全ての細菌を殺すことにより、食中毒を防ぐ治療法を開発したいと考えている。

 彼等はまた、これらの発見が従来の抗生物質と一緒に働く患者の治療法の開発に役立つかどうかを調査している。黄色ブドウ球菌は4人に1人の皮膚または鼻に自然に生息している。しかし、虫が体内に侵入すると、深刻な感染症、敗血症、さらには死に至る可能性がある。MRSAと呼ばれる細菌の「スーパーバグ」型の抗生物質メシチリンに対する耐性を発達させた。黄色ブドウ球菌はまた、一般的にハムなどの汚染された肉製品、サンドイッチ、サラダ、肉製品を介して食中毒を引き起こす可能性がある。

 新しい研究で、帝国チームは、黄色ブドウ球菌がその塩摂取量をどのように調節するかを発見した。このメカニズムを破壊すると言うことは、細菌が環境から塩を吸収しすぎるか。水分を失いすぎて脱水して死ぬことを意味している。

 インペリアル大学医学部の研究の筆頭著者であるアンゲリカ・グリュンドリング教授は次のように述べている。「黄色ブドウ球菌は重要な病原体であり、患者に多くの重篤な感染症を引き起こす。この研究により、細菌が塩ストレスにどのように対処するかについての理解が深まった。この研究は初期段階であるが、この知識がいつか食中毒ブドウ球菌感染症の予防に役立つだけでなく、抗生物質と併用できる治療法の新しい可能性を開くことを願っている。」

 雑誌Science Signalingに掲載された新しい研究では、チームは研究室でMRSA細胞を調べ、サイクリック・ジAMPと呼ばれる信号伝達分子が、細胞が塩濃度を調節するプロセスに重要であることを発見した。黄色ブドウ球菌は高塩濃度に耐性があることで有名であるが、これまで科学者達はその理由を明らかにしていなかった。現在の研究では、信号伝達分子が、細菌が高塩濃度環境にあることを検出すると、分子がいくつかの「トランスポーター」タンパク質にまわり着き細胞に応答して保護するように信号を送ることを明らかにした。

 塩濃度が高いと、細胞から水分が排出される。そのため塩辛い食物を食べた後、喉が渇く。したがって、水分の損失を防ぐために、トランスポーター・タンパク質は、ミニチュア・スポンジのように機能する分子の一種を細胞に引き込む。それは水を吸収し、それを細胞に閉じ込め、それが逃げるのを防ぐ。水の損失を防ぐことにより、ミニチュア・スポンジは塩が細胞に移動するのを防ぐ。

 研究者達はこの塩のメカニズムを破壊することができ、トランスポーター・タンパク質への信号を増加させることにより、これらのミニチュア・スポンジの数が大幅に減少することを発見した。これらの塩保護メカニズムを阻害すると、MRSA細胞は塩に対して敏感になり、最終的には細菌細胞の破壊につながる可能性がある。

 他のチームの実験では、同様のメカニズムがリステリア菌に存在することが明らかになった。リステリア菌は食中毒の一般的な原因でもある。

 インペリアル大学医学部の研究の共著者であるクリストファー・シュスター博士は次のように付け加えている。「多くの食品保存方法では、塩を使用して食品を新鮮に保ち、細菌の繁殖を防ぐ。しかし、黄色ブドウ球菌など、これらの高塩濃度に耐性があり、生き残る細菌が常に存在する。しかし、これらの信号伝達分子を遮断する何らかの治療法を開発できれば、塩が全ての細菌を確実に殺すことができる。」

 チームは現在、信号伝達分子がトランスポーター・タンパク質を調節する正確な方法を見つけることを期待して、このメカニズムをさらに調査している。彼等はまた、古代のプロセスに関与している他の種類の分子スポンジを調査している。