解き放たれた溶融塩の秘密
Secrets of Molten Salts Unlocked
https://www.technologynetworks.com/ 2022.07.25
Original Story from the University of Cincinnati
シンシナティ大学の化学者は多くの原子力および太陽エネルギー用途で使用される溶融塩の熱力学的特性を研究するための新しい方法を考え出した。シンシナティ大学芸術科学部の研究員で計算化学者のYu Shiと彼の共同研究者達は、ディープラーニング人工知能を使用して自由エネルギーを計算するための新しいシミュレーション方法を開発した。
溶融塩は高温に加熱されて液体になる塩である。シンシナティ大学の研究者達は、一般に食卓塩として知られている塩化ナトリウムを研究した。Shiは、溶融塩は原子力発電所の冷却システムの貴重な媒体となる特性を持っていると述べた。ソーラータワーでは、熱を伝達したり、エネルギーを蓄えたりするために使用できる。
逆説的であるが、塩は絶縁体であるが、溶融塩は電気を通す。
「溶融塩は高温で安定しており、液体状態で多くのエネルギーを保持できる。」とShiは述べている。「それらは優れた熱力学的特性を持っている。それはそれらを集光型太陽光発電施設のための良いエネルギー貯蔵材料にする。そして、それらは原子炉の冷却剤として使用することができる。」
王立化学会のジャーナルに掲載されたこの研究は、次世代の原子炉に見られるような金属容器でこれらの塩が引き起こす可能性のある腐食を、研究者が調べるのに役立つ可能性がある。
この研究は溶融塩中の溶存ガスから蒸気への変換を研究するための信頼できるアプローチを提供し、エンジニアが腐食に対する様々な不純物と溶質(溶液に溶解した物質)の影響を理解するのに役立つ。Shiは、研究者達が潜在的に有毒なガスの大気中への放出を研究するのにも役立ち、第四世代の溶融塩原子炉に非常に役立つと述べた。
「我々は量子シミュレーションによって生成されたデータを使用して、溶融塩の溶媒和熱力学を化学的精度でモデル化した。」とShiは述べている。研究の共著者であるThomas Beckは、カリフォルニア大学化学科の元学部長であり、現在はテネシー州のオークリッジ国立研究所の科学エンゲージメントのセクション・ヘッドとして働いている。Beckによると、溶融塩は高温で極圧を発生させる可能性のある水とは異なり、加熱しても膨張しない。
「原子炉内の圧力は大幅に上昇する。それが原子炉設計の難しさであり、より多くのリスクとより高いコストにつながる。」と彼は言った。研究者達はシミュレーションを実行するためにシンシナティ大学の高度な研究コンピューティング・センターとオハイオ・スーパーコンピューター・センターに目を向けた。
「オークリッジには世界最速のスーパーコンピューターがあるので、実験にかかる時間は短くなる。」とBeckは述べている。「しかし、一般的なスーパーコンピューターでは、これらの量子シミュレーションを実行するのに数週間から数ヶ月かかる場合がある。」研究チームには、マサチューセッツ大学ローウェル校のStephen Lamも含まれていた。
「これらの塩の正確なモデルを持つことが重要である。我々は液体中の高温での塩化ナトリウムの自由エネルギーを計算し、それを以前の実験と比較した最初のグループであった。」とBeckは言った。「それで、我々はそれが有用な技術であることを証明した。」
2020年、ShiとBeckはPNAS誌に掲載された研究で、準化学理論と水中のナトリウム・イオンの量子力学的シミュレーションを使用して、単一イオン水和の自由エネルギー・スケールを確立した。これは、量子力学を使用した荷電溶質の溶媒和自由エネルギー計算の最初のものであった、とShiは言った。
Beckは、溶融塩は新しいエネルギー源、おそらくいつ日か核融合エネルギーを開発するために重要になるであろうと述べた。「彼等は、高温原子炉のコーティング冷却剤として溶融塩を使用することを提案している。」と彼は言った。「しかし、融合はさらに先の道のりである。」