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高性能ナトリウム・イオン・カソードがリチウム・イオン電池の

代替に道を開く

High-Performance Sodium-Ion Cathode Paves the Way for

Lithium-Ion Battery Alternative

By Princeton University

https://techxplore.com/  より   2025.02.19

 

 科学者達は何十年もの間、リチウム・イオン電池への依存に対抗する方法を模索してきた。これらの従来の充電式電池は、ノートパソコンから携帯電話、電気自動車まで、今日最も普及している消費者向け電子機器に電力を供給している。しかし、原料のリチウムは高価で、脆弱な地政学的ネットワークを通じて調達されることも少なくない。

 プリンストン大学のDincăグループは有機の高エネルギー・カソード材料を使用してナトリウム・イオン電池を製造する画期的な代替案を発表し、この技術が安全で安価で持続可能なコンポーネントを使用して商業化される可能性を高めた。この研究は、Journal of the American Chemical Societyに掲載されている。

 科学者達はナトリウム・イオン電池である程度進歩を遂げてきたが、主にエネルギー密度が低いために障害が生じている。サイズに比べて電池の駆動時間が短い。出力に関連する高電力密度も性能に影響する。高エネルギー密度と高電力密度も同時に実現することは、代替電池にとって継続的な課題であった。

 しかし、Dincăグループが提案した正極材料は、ビステトラアミノベンゾキノンと呼ばれる層状有機固体で、エネルギー密度と電力密度の両方で従来のリチウム・イオン電池正極を上回り、真にスケ-―ラブルな技術となっている。

 彼等の研究は、電気自動車に加えて、データ・センター、電力網、商業規模の再生可能エネルギー・システムへの可能性を秘めている。

 「電池のような重要なものに限られた資源しかないことに伴う課題は誰もが理解しており、リチウムは確かにさまざまな意味で「限られている」と言える」とAlexander Stewart1886化学教授のMircea Dincăは述べている。

「これらの材料のポートフォリオを多様化しておくことは非常に望ましいことである。ナトリウムは文字通りどこにでもある。我々にとって、有機物や海水などの非常に豊富な資源で作られた電池を追求することは、研究における最大の夢の1つである。

 「エネルギー密度は、電池に蓄えられる電力量と同等であるため、多くの人が気にするものである。エネルギー密度が高いほど、充電しないで車を走らせる距離が長くなる。我々が開発した新しい材料は、1 kg当たりのエネルギー密度が最も高く、体積ベースでも最高の素材に匹敵すると我々は断言している。

 「真に持続可能でコスト効率の高いナトリウム・イオン・カソードや電池の開発の最前線に立つことは本当に刺激的である。

 

理論上の最大容量に近づく

 研究室は、1年前にACS Central Scienceで初めてビステトラアミノベンゾキノンのリチウム・イオン電池製造への有用性について報告し、その利点を強調した。研究者達は、ビステトラアミノベンゾキノンが完全に不溶性で伝導性が高いと言う有機カソード材料の2つの重要な技術的利点を発見して以来、その可能性をひたすら調査し続けた。カソードは、すべての分極デバイスの必須コンポーネントである。

 そこで、彼等は同じ材料であるビステトラアミノベンゾキノンを使用して有機ナトリウム・イオン電池を作ろうとした。研究者達はリチウム・イオン技術から移植できないいくつかの設計原理を適応させなければならなかったため、このプロセスには約1年かかった。

 最終的に、結果は期待を上回るものとなった。カソードの性能は、理論上の最大容量として知られるベンチマークに近いものとなった。

 「我々が選んだバインダーであるカーボン・ナノチューブは、ビステトラアミノベンゾキノン微結晶とカーボン・ブラック粒子の混合を促進し、均質な電極を実現する。」とDincăグループの博士号を持ち、この論文の筆頭者であるTianyang Chenは語った。「カーボン・ナノチューブはビステトラアミノベンゾキノン微結晶をしっかりと包み込み、それらを相互接続する。これらの両方の要素が電極バルク内での電子輸送を促進し、ほぼ100%の活性物質利用を可能にし、ほぼ理論上の最大容量につながる。

 「カーボン・ナノチューブを使用により、電池のレート性能が大幅に向上する。つまり、電池は、はるかに短い充電時間で同じ量のエネルギーを蓄えることができるか、同じ充電時間ではるかに多くのエネルギーを蓄えることができるということである。」

 Chenはビステトラアミノベンゾキノンのカソード材料としての利点は、空気や湿気に対する安定性、長寿命、高温への耐性、環境の持続可能性も含まれると述べた。