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より環境に優しい淡水化:新しい膜がかん水廃棄物の削減

に役立つ可能性

Making Desalination More Eco-Friendly: New membranes Could Help Eliminate Brine Waste

By Kate McAlpine, University of Michigan

https://techxplore.com/  より   2025.04.15

 

 乾燥地域における主要な淡水源であり、その供給源は拡大を続ける淡水化プラントであるが、このプラントは電気とミシガン大学で開発された新しい膜を用いることで、より有害性の低い廃棄物を生成できる可能性がある。

 この膜は海水を飲料水に変換する際に副産物として発生するかん水廃棄物を最小限に抑え、あるいは完全に除去するのに役立つ可能性がある。現在、液体のかん水廃棄物は、水が蒸発するまでに池に貯蔵され、固体の塩、あるいはさらに処理可能な濃縮塩水が残る。しかし、塩水は蒸発に時間がかるため、地下水を汚染する機会が十分にある。

 スペースも問題である。一般的な淡水化プラントでは、飲料水1リットルを製造するごとに1.5リットルのかん水が生成される。国連の調査によると、世界では毎日370億ガロン以上のかん水廃棄物が発生している。蒸発池のスペースが不足している場合、淡水化プラントはかん水を地下に注入するか、海に投棄する。淡水化プラント付近の塩分濃度の上昇は、海洋生態系に悪影響を及ぼす可能性がある。

 「淡水化業界では、より良い回避策を求める動きが活発に行なわれている。」と、ミシガン大学化学工学科助教授で、Nature Chemical Engineering誌に掲載された論文の責任著者であるJovan Kamcevは述べている。「我々の技術は、廃棄物を削減しながらエネルギー消費を抑えることで、淡水化プラントの持続可能性を高めることができるであろう。」

 淡水化エンジニア達は、かん水廃棄物の無駄をなくするために、100エーカー以上もの広大な池ではなく、工業用タンクで容易に結晶化できるほど塩を濃縮したいと考えている。分離された水は飲料水や農業に利用でき、固体の塩は有用な製品に利用することができる。海水には、塩化ナトリウムだけでなく、電池用のリチウム、軽量合金用のマグネシウム、肥料用のカリウムなどの貴重な金属が含まれている。

 淡水化プラントでは、水を加熱・蒸発させることでかん水を濃縮できるが、これは非常に多くのエネルギーを消費する。逆浸透法は比較的低い塩分濃度でしか機能しない。電気透析は、高塩分濃度でも機能し、比較的少ないエネルギーしか必要としないため、有望な代替手段である。このプロセスでは、電気を用いて塩分を濃縮する。塩分は水中でイオンと呼ばれる荷電原子や分子として存在する。

 このプロセスの仕組みは次の通りである。水は膜で区切られた多数のチャネルに流れ込み、各膜は隣接する膜とは反対の電荷を帯びている。水流全体は一対の電極で挟まれている。

 正のナトリウム・イオンは負に帯電した電極に向かって移動し、正に帯電した膜によって沮止される。負イオンは正に帯電した電極に向かって移動し、負に帯電した膜によって沮止される。これにより、正イオンと負イオンの両方が流出するチャネルと、イオンが流入するチャネルの2種類のチャネルが形成され、結果として精製水と濃縮された塩水の流れが生まれる。

 しかし、電気透析には独自の塩分濃度制限がある。塩分濃度が上昇すると、イオンが電気透析膜から漏れ始める。市場には漏れにくい膜もあるが、イオン輸送速度が遅すぎる傾向があり、平均的な海水の6倍以上の塩分濃度を持つかん水では、必要な電力が現実的ではない。

 研究者達は、膜に記録的な数の荷電分子を詰め込むことでこの限界を克服し、イオン反発力と導電性を高めた。つまり、より少ない電力でより多くの塩を移動させることができるのである。この化学的手法を用いることで、現在市販されている比較的液漏れの少ない膜の10倍もの導電性を持つ膜を作製することが可能になった。

 通常、高密度の電荷は多くの水分子を引き寄せるため、従来の電気透析膜に収容できる電荷量は限られてしまう。しかし、この新しい膜では、炭素製のコネクターが荷電分子同士を繋ぎ止めることで膨張を防いでいる。

 膜の漏れやすさと導電性を制御するために、膜の制限レベルを調整することができる。ある程度の漏れを許容することで、現在市販されている膜の導電性をはるかに超える性能を実現できる。研究者達は、この膜のカスタマイズ性が、この膜の普及を促進することを期待している。

 「それぞれの膜があらゆる目的に適しているわけではないが、我々の研究は幅広い選択肢があることを示している。」と、化学工学の博士研究員で本研究の筆頭著者であるDavid Kittoは述べた。「水は非常に重要な資源である。したがって、淡水化を世界的な水危機に対する持続可能な解決策に役立てることができれば素晴しいことである。」