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糸のような電池のプロトタイプは海水を使って装置に

電力を供給する

Yarn-Like Battery Prototype Uses Seawater to Power Devices

By American Chemical Society

https://techxplore.com/  より   2025.01.21

 

 ほとんどの電池は硬く、水と相性が良くない。しかし、人々は海や河口で働いたり遊んだりしているので、柔軟で海水でも安全な電源があれば恩恵を受けることができる。

 現在、研究者達はACS Applied materials and Interfaces誌に、海水に浸すと、機能する糸状の電池のプロトタイプについて報告している。彼等は充電可能な糸を結び、LEDを点灯させる漁網を作り、タイマーを動かす布を織った。

 柔軟性のある糸状の電池は、さまざまな形に編んだり織ったりすることができる。これらの糸状のエネルギー源は軽量で、防水設計になっていることが多い。しかし、科学者達は電池を水にさらすことを完全に避けるのではなく、塩水を重要な電池コンポーネント、つまり電解質(イオンを介して電気を伝導する液体)として使用することを提案している。

 Yan QiaoZhisong Lu、および同僚達は、以前に炭素繊維と綿糸で作られた水に優しい電池を開発していた。この先行研究では、運動モニターの電解質として体から出る汗が使われていた。汗と同様に、ナトリウム、塩化物、硫酸イオンを含む海水も電解質として機能できる。そこで、QiaoLuと新しいチームは、漁網のライト、救命胴衣、ブイの係留索に電力を供給するために使用できる。充電可能な糸状の電池の海洋バージョンを開発したいと考えた。

 海水電池の電極を作成するために、研究チームは炭素繊維の束を導電性コーティングで処理した。正極(カソード)にはニッケルヘキサシアノン鉄酸塩、負極(アノード)にはポリアミドを使用した。次に、2つの束を合わせて、糸のようなカソードとアノードの紐を作った。

 電池を準備するために、研究チームはカソード糸をグラスファイバーの層で包み、それをアノードに沿って置き、両方のストランドを不織布の透過性布で包んだ。この布は電極を保護すると同時に、海水が電極に接触できるようにする。海水を使用したテストでは、電池は4,000回曲げた後も電荷を蓄え続けた。その後、海水中で評価したところ、200回の充放電サイクルを経ても、初期の充電効率と蓄電容量のほとんどを維持した。

 最後に、研究チームは概念実証として、電池の糸を結び合わせて漁網を作り、長方形の布を編んだ。網を海水に浸して電解質を吸収させ、充電した。網の電池は10個のLEDパネルを点灯させた。同様に、硫酸ナトリウム溶液に浸した布は1時間以上タイマーを作動させた。

 研究者達は、この糸のような電池は海水用途のエネルギー源としての可能性を秘めていると語っている。