機械学習を活用してナトリウム・イオン電池の有望な
構成を見つける
Leveraging Machine Learning to Find Promising Compositions for
Sodium-Ion Batteries
By Tokyo University of Science
https://techxplore.com/ より 2024.11.05
エネルギー貯蔵は、電気自動車や再生可能エネルギー発電など、急速に成長している多くの持続可能な技術にとって不可欠な要素である。現在の市場はリチウム・イオン電池が主流であるが、リチウムは比較的希少で高価な元素であるため、経済的にも供給安定性にも課題がある。そのため世界中の研究者達は、より豊富な材料から作られた新しいタイプの電池の実験を行なっている。
ナトリウム・イオンをエネルギー・キャリアーとして使用するナトリウム・イオン電池は、ナトリウムが豊富に含まれ、安全性が高く、潜在的に低コストであるため、リチウム・イオン電池の有望な代替品である。特に、ナトリウム含有遷移金属層状酸化物(NaMeO2)は、ナトリウム・イオン電池の正極に使用できる強力な材料であり、並外れたエネルギー密度と容量を提供する。
しかし、複数の遷移金属からなる多元素層状酸化物の場合、可能な組み合わせの数が非常に多いため、最適な組成を見つけるのは複雑で時間がかかる。遷移金属の選択と割合を少し変更するだけでも、結晶形態に顕著な変化が生じ、電池の性能に影響する可能性がある。
最近の研究では、駒場慎一教授率いる研究チームが、東京理科大学およびチャルマーズ工科大学の関根紗綾、保阪知宙博士、名古屋工業大学の中山将伸教授とともに機械学習を活用して有望な組成の探索を効率化した。研究結果はJournal of Materials Chemistry Aにオンラインで掲載されている。
研究チームは、さまざまなNaMeO2 O3型材料の元素組成のスクリーニングを自動化しようとあいた。この目的のために、彼等は先ず駒場のグループが11年かけて収集した68種類の組成を持つO3型ナトリウム半電池の100個のサンプルのデータベースを作成した。
「データベースにはNaMeO2サンプルの組成(MeはMn、Ti、Zn、Ni、Zn、Fe、Snなどの遷移金属)のほか、充放電試験の上限電圧と下限電圧、初期放電容量、平均放電電圧、
20サイクル後の容量保持率が含まれていた。」と駒場は説明する。
研究者達はその後、このデータベースを使用して、複数の機械学習アルゴリズムとベイズ最適化を組み込んだモデルをトレーニングし、効率的な検索を実行した。このモデルの目標は、動作電圧、容量保持(寿命)、エネルギー密度などの特性がNaMeO2層状酸化物の組成とどのように関連しているかを学習し、これらの特性間の望ましいバランスを達成するために必要な元素の最適な比率を予測することであった。
結果を分析した結果、研究チームは電極材料において最も重要な特性の1つである最高のエネルギー密度を達成するためにNa[Mn0.36Ni0.44Ti0.15Fe0.05]O2が最適な組成であると予測していることを発見した。モデルの予測の精度を確認するために、研究チームはこの組成のサンプルを合成し、標準的なコインセルを組み立てて充放電テストを実施した。
測定値は、大部分が予測値と一致しており、モデルの精度と新しい電池材料の探索の可能性を浮き彫りにしている。
「我々の研究で確立されたアプローチは、幅広い候補の中から有望な組成を特定するための効率的な方法を提供する。」と駒場は述べる。「さらに、この方法論は、5元遷移金属酸化物などのより複雑な材料システムにも拡張できる。」
機械学習を使用して有望な研究分野を特定することは、材料科学においてますます増加している傾向である。これは、科学者達が新しい材料をスクリーニングするために必要な実験の数と時間を大幅に削減するのに役立つためである。この研究で提示された戦略は、エネルギー貯蔵技術全体に革命を起こす可能性のある次世代電池の開発を加速する可能性がある。
これには、再生可能エネルギー発電や電気自動車やハイブリッド車だけでなく、ノートパソコンやスマートフォンなどの消費者向け電子機器最も含まれる。さらに、電池研究における機械学習の成功は、他の分野の材料開発のテンプレートとして機能し、より広範な材料科学の分野でイノベーションを加速させる可能性がある。
「機械学習を使用すると実験回数を減らすことができ、材料開発のスピードアップとコスト削減に一歩近づく。さらに、ナトリウム・イオン電池用電極材料の性能向上が進むことで、将来的には大容量で長寿命の電池がより安価に提供できるようになると期待される。」と駒場は結論付けている。