科学者達がリチウムおよびナトリウム・イオン電池用の
高性能ポリマー・ベースの電極バインダーを設計
Scientists Design High-Performance Polymer-Based Electrode Binder
for Lithium and Sodium-Ion Batteries
By National Research Council of Science and Technology
https://techxplore.com/ より 2024.09.17
電子機器と電動自転車の世界的な需要は、今後数年間、引き続き成長し、多様化していくと見込まれている。この需要の増加により、効率、性能、安全な貯蔵技術が向上した強力な電池が求められている。
リチウム・イオン電池は、この二次イオン電池部門を30年以上支配してきた。しかし、持続不可能な抽出方法、高コスト、地理的分布の不均衡に対する懸念から、リチウムの供給は徐々に減少しえちる。
このため、研究者や業界はリチウム・イオン電池の代替品を探すようになった。有望な候補はナトリウム・イオン電池である。ナトリウムは自然界に豊富に存在し、コスト効率が高く、電気化学的ポテンシャルが高いためである。しかし、商用用途に実装する前に、いくつかの問題に対処する必要がある。
まず、ナトリウム・イオンの半径はリチウム・イオンよりも大きいため、イオン運動が遅くなり、相安定性と層間形成が複雑になる。次に、リチウム・イオン電池だけでなく
リチウム・イオン電池にも適合し、高性能を保証する電極を開発する必要がある。さらに、炭素ベースの材料はリチウム・イオン電池とナトリウム・イオン電池の有望な電極になるが、独自の欠点がないわけではない。
電極の性能と安定性を向上させるために、北陸先端科学技術大学院大学JAIST)の松見紀佳教授と同大学の博士課程学生Amarshi Patraは、ナトリウム・イオン電池の電極製造用のポリマー・バインダーに焦点を移した。
2024年9月12日にAdvanced Energy Materialsに掲載された研究で、研究者達は、高密度に機械化された水溶性ポリイオン液体であるポリ(オキシカルボニルメチレン1-3-メチルイミダゾリウム)(PMAI)を開発し、リチウム・イオン電池およびナトリウム・イオン電池に対する結合能力をテストした。PMAIベースのアノード半セルは、優れた電気化学的特性とサイクル安定性を示した。
「急速充放電を可能にし、ナトリウム・イオン拡散の遅い反応速度の問題を解決する材料の需要が世界中で高まっている。高密度のイオン液体官能基を持つこのポリマー・ベースのバインダーは、ナトリウム・イオン電池の高性能電極システムのコンポーネントとして機能する。」と松見教授は説明した。
新しいPMAI材料の有効性をテストするために、研究者達はそれぞれリチウム・イオン電池とナトリウム・イオン電池のグラファイト陰極バインダーと硬質炭素陰極バインダーとして使用した。
電気化学評価の結果、PMAIベースのアノード半セルは、並外れた電気化学性能、高容量(リチウム・イオン電池では1Cで297 mAh/g、ナトリウム・イオン電池では60 mA/gで250 mAh/g)、ナトリウム・イオン電池では200サイクル後に96%の容量保持、リチウム・イオン電池では750サイクル後に80%の容量保持という優れたサイクル安定性を示すことが明らかになった。
さらに、実験結果では、高密度極性イオン液体グループと、バインダーの減少による機能化固体電解質界面の形成により、イオン拡散係数の改善、抵抗および活性化エネルギーの低下が示された。
PMAIをアノード・バインダーとして使用したフルセル試験から明らかなように、性能と安定性の向上は、二次イオン電池用途のバインダーとしてのこの新素材の可能性の証である。
「この種類の材料は、このバインダーがナトリウム・イオンの拡散を改善するため、商用用途の急速充電エネルギー貯蔵システムに採用されるであろう。この研究は、より高度な材料の開発を促進し、新しいナトリウム・イオン駆動の電子機器や電動自転車へ道を開くであろう。」と松見教授は結論付けている。
「開発された新しいポリイオン液体は、新しい種類の材料である。ポリイオン液体は、エネルギー貯蔵装置、生化学用途、センシング用途、触媒用途など、さまざまな用途で熱心に研究されてきた。我々の新しい高密度イオン液体機能化ポリマーは、上記のさまざまな研究分野で潜在的に有用である。」