マイクロ波を使用してナトリウム・イオン電池のアノード材料を
迅速かつ簡単に製造する方法
A Quick and Easy Way to Produce Anode Materials for Sodium-Ion Batteries Using Microwaves
By National Research Council of Science and Technology
https://techxplore.com/ より 2024.10.11
研究チームは、マイクロ波誘導加熱を使用して、ナトリウム・イオン電池用の硬質炭素アノードを超高速の30秒で作成できるプロセス技術を開発した。
次世代の二次電池の1つであるナトリウム・イオン電池は、現在の主力であるリチウムの代わりにナトリウムを使用する。塩の主成分であるナトリウムは、リチウムの1000倍以上豊富で、抽出と精製が容易である。さらに、リチウムと比較して反応性が低いため、電池に使用した場合の電気化学的安定性が高く、急速充電と放電に適しており、低温でも性能を維持できる。
これらの利点にもかかわらず、ナトリウム・イオン電池は、製造プロセスの複雑さにより、リチウム・イオン電池に比べてエネルギー密度が低く、寿命が短いなど、大きな課題に直面している。リチウムに比べてナトリウム・イオンが大きいため、現在、アノード材料の主流であるグラファイトよりも層間間隔が大きい硬質炭素を使用する必要がある。
硬質炭素は自然界には存在しないため、合成する必要がある。準備プロセスは非常に複雑で、植物やポリマーの主成分である炭化水素材料を酸素のない環境で,1,000℃を超える温度で長時間加熱する必要がある。この「炭化」プロセスは経済的にも環境的にも負担が大きく、ナトリウム・イオン電池の商業化の大きな障害となってきた。
この課題に取り組もうとする多くのチームの中で、Kim博士とPark博士が率いるチームは、キッチンの電子レンジで簡単に見つけられるマイクロ波技術を使用した急速加熱法を提案した。彼等は先ず、ポリマーと少量の高導電性カーボン・ナノチューブを混ぜてフィルムを作った。次に、フィルムにマイクロ波磁場を適用してカーボン・ナノチューブに電流を誘導し、わずか30秒でフィルムを1,400℃以上に選択的に加熱した。
韓国電気研究院(KERI)は長年の研究を通じて、マイクロ波磁場を使用して金属などの導電性薄膜を均一に熱処理する技術を開発した。この技術は、ディスプレイや半導体などの産業プロセスで大きな注目を集めている。KERIのナノハイブリッド技術研究センターは、炭素ナノ材料技術の国内有数のセンターとして認められている。Kim博士とPark博士は、センターの能力を活用してナトリウム・イオン電池のアノード材料に取り組み、有望な結果を達成した。
彼等の成功の鍵は、チーム独自の「マルチフィジックス・シュミレーション」技術にある。この技術により、マイクロ波帯域の電磁場がナノ材料に適用されたときに発生する複雑なプロセスを深く理解することができ、ナトリウム・イオン電池のアノード材料を調製するための新しいプロセスが生まれた。
この研究は、Chemical Engineering Journalに掲載されている。この論文は、KERIの学術研究共同研究プログラムに参加した学生研究者のGeongbeom RyooとJiwon Shinが共同で執筆したものである。
「最近の電動自転車の火災により、より安全で、より低温の条件でも良好に機能するナトリウム・イオン電池への関心が高まっている。しかし、アノードの炭化プロセスは、エネルギー効率とコストの点で大きな欠点となっている。」と、Jong Hwan Park博士は述べている。Daeho Kim博士は「当社のマイクロ波誘導加熱技術により、硬質炭素を迅速かつ容易に製造することができ、ナトリウム・イオン電池の商業化に貢献できると考えている。」と付け加えた。
今後、研究チームはアノード材料の性能向上と大面積の硬質炭素膜の連続大量生産技術の開発に取り組み続ける予定である。また、高温焼結を必要とする全固体電池など他の分野にも応用できるマイクロ波誘導加熱技術の可能性も見出しており、さらなる研究が必要である。
KERIは、既に国内特許出願を完了しており、この技術がエネルギー貯蔵材料に携わる企業から大きな関心を集めると予想しており、潜在的な業界パートナーとの技術移転契約を期待している。
研究チームは、KERIナノハイブリッド技術研究センターのDaeho Kim博士とJong Hwan Park博士が率いている。